「プロクセス・スポーツ2」「プロクセス・コンフォートlls」MOVIE IMPRESSION

プレミアムタイヤの世界観を変えた!
 トーヨータイヤのフラッグシップ
『プロクセス』シリーズに驚嘆する 

トーヨータイヤからデビューした新作タイヤの性能に驚かされることになった。プレミアムブランドであるプロクセスシリーズからスポーツタイヤの「プロクセス・スポーツ2」と、コンフォートタイヤの「プロクセス・コンフォートIIs」がリリースされたのである。

そもそもプロクセスとは、トーヨータイヤの最上級のポジションにあるブランド。乾いた路面での圧倒的なドライ性能と、それでいて濡れた滑りやすい路面での高いウエット性能を高次元でバランスさせているのが特徴だ。

研ぎ澄まされた軽快なハンドリング
プレミアムスポーツタイヤ「プロクセス・スポーツ2」

トーヨータイヤ × レスポンス

プロクセス・スポーツが新たに「プロクセス・スポーツ2」に進化し、全体的に性能が高まった。非対称トレッドパターン、非対称トレッドコンパウンド、新プロファイルなど、「プロクセス・スポーツ2」にはドイツのニュルブルクリンクの耐久レースで培った技術がフィードバックされているのだという。プレミアムを謳うだけに、乗り心地や静粛性も評価が高い。燃費性能にも長けている。環境に対する意識も忘れていない、かなり欲張りなタイヤなのだ。

まずは非対称トレッドパターンが高い制動力を発揮している。今回はハードな急制動には挑まなかったが、ブレーキペタルに足を添えた瞬間に、しっとりと路面を包み込むようなグリップ感が発生したのには驚かされた。止まることに安心感があるのだ。

トーヨータイヤ × レスポンス トーヨータイヤ × レスポンス

加えて、アウト側のリブは高剛性である。これによって、コーナリング中の更に強い荷重を支えることが可能になった。ステアリングを切り込み、外輪にボディ重量をすべて乗せるような不自然な姿勢になっても、ハンドリングは乱れをみせないのだ。実は僕が感心したのは、軽快なステア特性である。直進時から軽くステアした瞬間に、ノーズが反応する。タイヤが旋回を開始するそのプロセス、つまりタイヤが転舵されスリップアングルが発生、タイヤと路面に間に滑りが生じ、そしてグリップが発生しヨーが導き出される・・・といった一連の動きをドライバーが意識することなく瞬時にこなしてしまい、ハンドルを切り込んだ瞬間にもう先回りをして、ノーズがコーナーを向いてくれるのだ。

プレミアムスポーツタイヤの枠を超え
静粛性や乗り心地までも追求された桁外れの進化

トーヨータイヤ × レスポンス

プロクセスがプレミアムブランドであることに疑いはなく、乗り心地や静粛性に長けている。だがその一方でプロクセスR1Rといった超絶スポーティータイヤや、プロフェッショナル競技で活躍するプロクセスR888Rをリリースしている。ハイプレミアムでありながらも、DNAのどこかに宿るスポーツ魂が顔を出す。プレミアムタイヤにもかかわらず活発で素直なハンドリングを披露したのは、そんな細胞レベルでのプロクセスイズムが息づいている証拠だろう。

形状や構造が変化したことも効果を発揮しているに違いない。タイヤ内部の膨らみ方が、より自然なRを描くようになったことで、旋回中におけるタイヤの変形の仕方が適度な動きとなりドライバーの予想通りの反応をしてくれる。高速レーンチェンジのような、少々乱暴なスパっスパっとコーナーを切り裂くようなアクションをしても、クルマの姿勢は落ち着いている。

トーヨータイヤ × レスポンス トーヨータイヤ × レスポンス

ハンドリングは軽快で切れ味がいいのに、スタビリティが失われていない。左右非対称なのはパターンデザインだけではなく、トレッドコンパウンドにも及んでいる。ともすれば相反することがある2つの特性を、見事にバランスしてくれていた。

トーヨータイヤのテストデータによると、サーキットのラップタイムが1.7 %も短縮したという。仮に1周2分のコースだったとしたら、約2秒の差である。これはもう、全くの別次元だといっていい。

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さらに驚かされるのは、ウエットコースではさらに5.9%もタイムを縮めたという。1周タイムに換算すると約7秒のアドバンテージである。もはや勝負にならない。その進化の幅は桁外れなのだ。

外観を眺める限り、これ見よがしの派手なデザインではないことから、実際にステアリングを握るまで腰を抜かすほどの高性能タイヤには思えなかった。だが、その中身にはニュルブルクリンクの耐久レースで培った技術がフィードバックされていると言う通り、軽快なハンドリングと安定感を生み出し、ドライもウエットも同様に驚くほど高いグリップ性能が発揮される。プロクセス・スポーツ2がこれから話題の主人公になりそうな気配がする。

高次元のコンフォート性を追求
低燃費タイヤとしての実力も示す「プロクセス・コンフォートIIs」

トーヨータイヤ × レスポンス

一方、新たにフルモデルチェンジした「プロクセス・コンフォートIIs」も同様に、軽快なハンドリングが印象的だった。プロクセス・スポーツ2からプロクセスR888Rの走りの魂を感じたように、プロクセス・コンフォートⅡsは低燃費タイヤであるのにもかからず、フットワークが軽快なのである。これは期待を大幅に超えていた。

国内グレーディングによる転がり抵抗はAAランクだというから環境にいい。今回は燃費の差を計測することはできなかったが、おそらくはっきりと燃料消費率に反映されるに違いない。新しく採用された低燃費トレッドコンパウンドには転がり抵抗低減とウェットグリップの向上を両立するために再生可能なサステナブル素材を採用した新シリカ分散剤が配合されている。しかもナノバランステクノロジーによって耐摩耗性能にも貢献するというからユーザーにとって有難い、まさに時代に適したタイヤだ。

トーヨータイヤ × レスポンス トーヨータイヤ × レスポンス

左右非対称のプロックピッチ配列によって、静粛性も優れているように感じた。そもそもタイヤが発生する音源を抑えているだけでなく、ノイズの周波数帯を分散させてランダムに変化させている。結果的に人間の耳には、静かに感じるわけである。

このところ世界的に騒音規制が厳しくなっていている。特に、エンジンというノイズの音源を持たないEVの普及によって、特に意識されているのがタイヤのノイズ。ここが開発時の課題になっている。だがプロクセス・コンフォートIIsは、その要件をなんなく達成してしまった。

トーヨータイヤ × レスポンス

プロクセス・スポーツ2が、軽快なハンドリングと安定性という背を向けあう特性を両立してしまったように、プロクセス・コンフォートIIsも低燃費でありながら静粛性とハンドリングの豊かさを両立してみせている。改めてプロクセスブランドの守備範囲の広さと技術力の高さを知ったような気がした。

TEXT:TAKAYUKI KINOSHITA
MOVIE:JUNJI IWAMOTO
PHOTO:JUNYA YAMAUCHI, TAKEO KOBAYAHSHI

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木下 隆之TAKAYUKI KINOSHITA

レーシングドライバー兼モータージャーナリスト。学生時代からモータースポーツをはじめ、出版社・編集部勤務を経て独立。クルマ好きの感動、思いを読者に伝えようとする。短編小説『ジェイズな奴ら』も上梓。日本・カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。「心躍るモデルに高得点を与えるつもり」。海外レース経験も豊富で、ライフワークとしているニュルブルクリンク24時間レースにおいては、日本人最高位(総合5位)と最多出場記録を更新中。