PEUGEOT 508・508 SW

PEUGEOT 508・508 SWTEST DRIVE MOVIE IMPRESSION

日本人の心に刺さり続けるプジョー

2019年は1万台以上を販売し、純輸入車で8位につけるなど、ドイツ勢が強い日本車市場でも独自の存在感を発揮しているプジョー。フランス車ではトップの販売台数を続けているのは、プジョーが日本人の心に刺さる何かを持っているからにほかならない。 それは独特の雰囲気にあると思う。個性の強さを競うブランドも多々ある中、プジョーはあくまで普遍的な中で、控えめながらわかりやすく個性を発揮しているあたりが日本人にも好まれているような気がする。

全ての概念を変える新型508

PEUGEOT 508・508 SW

2019年に日本に導入されたプジョーのフラッグシップ「508」の最新版は、「サルーンの概念のすべてを変える」がテーマとプジョー自身も述べているとおり、ありきたりなセダンでは物足りないと考えてか、セダンと称しながらも4ドアクーペのような低く流麗なルーフラインを描く、しかもハッチゲートを持つファストバックスタイルになった。一方ステーションワゴンモデルの508 SWは、シューティングブレークのような雰囲気を持ち、スタイリッシュさが際立つ。セダンもSWも、均整のとれた伸びやかなプロポーションは、まず目で愛でたくなる。

インテリアもまた印象深い。楕円の小径ステアリングホイールの上にメーターパネルを配した独自の「i-Cockpit」は運転中の視線移動が少なく、見た目にも独特の雰囲気。右側のタコメーターは反時計回りするのも面白い。使用頻度の高い機能についてはセンターパネルに配された鍵盤のようなトグルスイッチで直接アクセスすることができるほか、ユニークな形状のATセレクターも誤操作しにくそうでよい。

ブラックで統一されたインテリアやカーボン調のトリムなど、スポーティに仕立てられている。フラッグシップらしく、さりげなく高級感も演出されている。車内は小物入れも充実しており、センターコンソール裏に配されたワイヤレス充電エリアやUSBポートなど使い勝手にも気が配られている。

PEUGEOT 508・508 SW

セダンは後席のヘッドクリアランスは成人男性が乗るにはやや狭さも感じるが、テールゲートを持つラゲッジスペースは大きな荷物の積み下ろしもしやすく、ハッチバック的な使い方もできる。流行りのリアバンパーの下で足を動かせばテールゲートが自動的に電動開閉する機構も設定されている。それでも後席に人を乗せる機会が多く、より高い積載性を求めるなら、伸びやかなルーフラインを持つSWを選んだほうが賢明。

「進化した猫足」が
ロングドライブでもサポート

PEUGEOT 508・508 SW

走りも最新のプジョー車らしく洗練されている。軽量かつ高剛性を誇る新世代プラットフォーム「EMP2」に支えられて、足まわりも理想的に仕事をこなしている印象で、乗り心地は「猫足」と呼ばれてきたプジョーらしく、本当に快適そのもの。路面からの入力を巧みにいなし、フラットな姿勢を保ってくれる。これにはプジョー初の電子制御アクティブサスペンションも効いていることに違いない。ストローク感たっぷりの足まわりは、ソフトな中にも適度にしまった感覚もあり、現代的に洗練されている。筆者はこれを、進化した猫足だと思っている。長時間のドライブでも疲れにくそうだ。

最高出力180ps/5500rpm、最大トルク250Nm/1650rpmの1.6リッターガソリンターボと同177ps/3750rpm、400Nm/2000rpmの2.0リッターディーゼルでは加速感だけでなく走りの質も異なり、それぞれのよさがある。

PEUGEOT 508・508 SW

エンジンスペックのとおり、出力は近いがトルク値がだいぶ違うとおりで、力強さではディーゼルが圧倒的。最新の8速ATも手伝って、レスポンスもよく、このように走らせたいと思ったとおりに駆動力を発揮してくれる。音や振動も最新のディーゼルらしく抑えられていて、低回転から400Nmのトルクにより、ゆとりをもって走れて、高速クルージングも大得意だ。もちろんディーゼルらしく経済性にも優れる。

一方のガソリンは、ディーゼルに比べて前軸荷重が100kgほど小さく、ハンドリングは軽快そのもの。ディーゼルにはトルク感ではおよばないものの、踏み込んだときの爽快な吹け上がりはガソリンならでは。ワインディングで走りを積極的に楽しみたいときには、ディーゼルも十分だがガソリンのほうがよりその度合いが上といえそうだ。

PEUGEOT 508・508 SW

ただし、快適な乗り心地に加えて、ハンドリングの味付けもロングドライブに適していて、いつまでも運転していたくなる点では共通している。運転の操作に対して寛容で、あまり意識しなくても、イメージしたとおりにラインを正確にトレースしていける。そこをあまりひけらかすことなく、穏やかにこなしてくれるあたりはプジョーのよき伝統でもある。グランドツアラーとしての資質も申し分ない。

フラッグシップにふさわしい
充実のユーティリティ

肉厚のシートはクッション感に富み座り心地もよい上、8つのランバーサポートが空気圧により膨張・収縮して肩や腰をサポートする「マルチポイントランバーサポート」も、より快適性を高めてくれる。

さらには、1基2500万円もの超高価なスピーカーをも手がけるフランスのハイエンドオーディオブランド、「FOCAL(フォーカル)」による10スピーカーを備えたプレミアムHiFiシステムが聴かせる上質なサウンドも素晴らしい。

PEUGEOT 508・508 SW

先進運転支援システムも充実している。夜間での検知性能を高めた衝突被害軽減ブレーキ「アクティブセーフティブレーキ」や、渋滞時の停車・再発進にも対応した「アクティブクルーズコントロール」、斜め後方の死角に存在する後続車量をセンサーで検知して、ドアミラー内の警告灯で知らせる「アクティブブラインドスポットモニターシステム」に加えて、左右の車線をカメラが検知し、車線内でのポジションを一定に保つようステアリングを補正する「レーンポジショニングアシスト」や、暗い中でも赤外線カメラが捉えた歩行者や野生動物の映像をインパネに投影し、状況に応じて警報を発する「ナイトビジョン」(オプション設定)など、プジョー初の装備も採用されている。こうしてクルマに安全の確認をサポートしてもらい、人間のみよりもはるかに確実にそれをこなしてくれるというのは、知らない場所まで出かけるにも非常に頼もしい。

プジョー508・508 SWで箱根へ

PEUGEOT 508・508 SW

今回やってきた「界 箱根」は、かの星野リゾートが全国15カ所に展開する温泉旅館ブランド「界」のひとつ。その奥ゆかしい佇まいと件の508がおりなす景色もまた絵になるというものだ。

TEXT:KOICHIRO OKAMOTO
PHOTO:HAYATO TSUCHIYA
MOVIE:JUNJI IWAMOTO
LOCATION:Hoshino Resorts KAI Hakone & Hakone Turnpike