トーヨー最新スタッドレスは
一体何が進化したのか!?6年越しの本気を
北海道で試す
トーヨータイヤが持てる技術をフル投入した
最新鋭スタッドレスが登場!

トーヨータイヤから新スタッドレスタイヤが登場した。それは「変わらない安心感、路面環境に対応した新世代スタッドレス」をコンセプトに掲げた、6年ぶりにモデルチェンジをはたす「オブザーブ」の最新モデル「GIZ2」だ。

トーヨータイヤではこれまで、ご存知のクルミをはじめ、密着力や吸水力を高めるために独自の技術や素材を用いて氷上性能を進化させてきた。新商品の開発にあたり、どのようなタイヤが必要かを考えるべく、ユーザーがスタッドレスタイヤに求めるものを調査したところ、アイス、スノー、シャーベット路での性能という至極当たり前の要件に加えて、近年の傾向として、経年性能維持が高まっていることが判った。
無論、さまざまな使用環境において、スノーやアイスはもちろん、刻々と変化する路面にも対応し、厳しい状況下でも安全、安心を提供できるようにしなければならない。これらを念頭に、6年という通常よりも長いインターバルを経て、トーヨータイヤの持てる技術をフルに投入して開発されたGIZ2は、前身である「オブザーブ ガリットGIZ(以下「GIZ」)」に対する性能の上がり幅もそれ相応に大きかったことを、あらかじめお伝えしておこう。

時間が経過してもゴムの柔らかさが持続!
より高いアイス性能を引き出す!
性能の特徴としては、アイス性能の進化、シャーベットを含むウェットでの性能向上、経年アイス性能の維持の3つが柱となる。これらを実現するため、密着性能の向上を図るとともに、経年アイス性能維持のため、「持続性密着ゲル」を配合した新コンパウンド「吸着クルミゴム」を採用したのが技術面での大きな特徴だ。

新コンパウンド「吸着クルミゴム」は、従来からのクルミ殻によるひっかきと「NEO吸水カーボニックセル」による吸水に加えて、GIZで用いたゲルよりもさらに柔らかい「持続性密着ゲル」がゴムの密着性を高めることで、より高いアイス性能を発揮。時間が経っても柔らかさが持続することが期待できるのだ。さらには、アイスおよびスノー性能はもとより、シリカの増量とグリップポリマーの配合によりウェットグリップ性能も高まるとしている。
トラクションと応答性の両立をこだわり続けた非対称パターン!
パターンの特徴としては、3本主溝を配した非対称パターンとなったことが前身のGIZからの大きな変更点となる。主溝を4本から3本にすることにより幅方向の横溝成分を大幅に増やしてトラクションの向上を図っている。さらに、新たにエッジ効果を高めるべく周方向にブロックを3つ並べた「3連ブロック」や、横溝にジグザグの切り欠きを施した「バイティングエッジ」を採用。また轍路においてもトラクションを得られるようにする「バットレスエッジ」を両側バットレス部に採用するなどしている。
このほか従来からの、前後力がかかってもサイプが閉じることなく接地圧が偏らない「吸着3Dサイプ」やブロック同士が支え合うアウト側センターブロックの「コンビネーションブロック」、接地面の動きを抑制して安定したハンドリングをもたらす「溝底補強ブロック」も継続採用している。様々な独自技術を組み合わせ、ブロックの数を大幅に増やしながらもしっかり感を維持することでトラクションの高さと応答性の良さを両立したという。また、この機能性がふんだんに盛り込まれたパターンデザインは、グッドデザイン賞を受賞している。
パワフルで俊敏なアウディA4の動きでさえ、
しっかりアシストし路面を捉える!
GIZ2を装着したアウディA4を駆り、冬道の厳しい条件のそろった一般道へくりだしてみると、GIZ2の進化のほどをさらに実感することができた。ところどころかなり滑りやすくなった圧雪路でも、接地感が高く安定してグリップが得られる感覚があり、走っていて安心感がある。

アウディA4は18インチで40偏平を履き、もともとステアリングレスポンスが俊敏で、リアにも積極的に駆動力を配分するのが特徴だが、ステアリングを切ってヨーが出るタイミングも応答遅れが小さく、その感覚はまさしく舗装路の延長上にある。リアが流れそうな下り勾配のコーナーでも粘り腰のグリップによりよほどでないと流れ出すことはなく、もし流れても動きが穏やかで、コントロール性にも優れるので怖い思いをすることもない。

凍った路面でも、GIZ比8%短縮を実現したアイス制動距離は頼もしい。フルブレーキングを試みると、減速中もABSが作動しながら路面をしっかり捉えている感覚があるのに加えて、横方向のブレが小さいことを感じ取れる。完全停止してからも容易に再発進できて、そこからアクセルを軽く踏み増したときの車速の伸び方や、ステアリングを切ったときの手応えからもグリップの高さが伝わってくる。滑りやすい路面でも、狙ったラインをあまり修正する必要もなくトレースでき、動きに唐突なところもなく、いたって安定している。

6年分の進化は、やはり小さくなかった!
優れたアイスやスノー性能に加えて、GIZ比で約18%も短縮したというウェット制動性能の高さも心強い。一昔前のスタッドレスタイヤにはウェットグリップが心許ないものも見受けられたが、GIZ2なら大丈夫だ。
GIZ2を履いていれば、冬道のどんな路面に出くわしても安心して走ることができる。しかもこの高いアイス性能がこれまでよりもずっと長く維持されるというからありがたい。たしかにトーヨータイヤの開発陣が「自信作!」と胸を張るだけことはある。あらゆる面で上がり幅の大きい性能向上をはたしている。6年分の進化は、やはり小さくなかった。

TEXT:KOICHIRO OKAMOTO
MOVIE:JUNJI IWAMOTO
PHOTO:TAKEO KOBAYASHI/TOYO TIRE
STAGE:KITAMI CITY HOKKAIDO

NAVIGATOR
岡本幸一郎KOICHIRO OKAMOTO
モータージャーナリスト。1968年、富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報映像の制作や自動車専門誌の編集に携わったのち、フリーランスのモータージャーナリストとして活動。幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもスポーツカーと高級セダンを中心に25台の愛車を乗り継いできた経験を活かし、ユーザー目線に立った視点をモットーに多方面に鋭意執筆中。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。