smart BRABUS forfour Xclusive この絶妙なバランスが、非日常をもたらすアーバンスポーツカーたる由縁だ:石井昌道 | レスポンス(Response.jp)

smart BRABUS forfour Xclusive
この絶妙なバランスが、
非日常をもたらすアーバンスポーツカーたる由縁だ

smartの個性を究極までブラッシュアップした「BRABUS

smartは都市部への交通の集中による諸問題への、シンプルにして賢い回答の一つとして生まれてきた。とくに路上駐車が合法的で当たり前の欧州では、クルマの全長が短いことは利便性に直結するため、現代では珍しいRR方式(リアエンジン、リア駆動)を採用。短い全長でも室内空間を広くとれるのがメリットであるとともに、前輪に駆動機能がないゆえハンドルの切れ角が大きくとれて最小回転半径が小さく、笑ってしまうほどに小回りが効く。

この英断は、交通問題への回答という崇高な理念からは想像しがたいほどにドライビングが楽しいという好ましい影響をもたらすことにもなった。さらにsmartはデザインでも人を惹きつける。小さいけれど全身で立派な存在感を誇示しつつもどこか愛らしいという、絶妙なヤンチャ感がある。

そして、smartをsmartたらしめるデザインのアクセントとしてだけでなく、コンパクトカーであるがゆえに妥協のない安全性を追求して生まれたのが「トリディオンセーフティセル」だ。強固な高強度スチール製の骨格が、あらゆる方向からの衝突時に乗員をしっかり保護してくれる。頑丈さ、安心感を視覚的にも表現しているのは、何ともsmartらしい。コンパクトな車体に5つのエアバッグを装備するほか、レーダーセンサーによって衝突の危険を表示と音で警告してくれる衝突警告音機能や、突然の横風にも安定した直進をサポートするクロスウインドアシストなど、最新の予防安全装備が採用されているのも嬉しい。

RRによる取り回しの良さ、ドライビングの楽しさ、ヤンチャ感のあるデザイン、そして高い安全性能。そんなsmartの個性を究極までブラッシュアップしたのが「smart BRABUS forfour Xclusive」だ。ドイツ屈指のチューナーとして知られるBRABUSは、おもにメルセデス・ベンツをベースとしたハイパフォーマンスカーを手掛けている。チューニングのみならず、コンプリートカーを製作するれっきとしたチューニングカーメーカーでもある。smartは初代からハイパフォーマンモデルを製作してきていたが、愛らしいsmartの“ワイルド仕立て”にシビれるファンも多い。

史上最強のターボエンジンを搭載

最新の「smart BRABUS forfour Xclusive」もワイド&ローが強調されたエクステリアで、タダ者ではない雰囲気をプンプンと振りまいている。足もとを固める17インチの大径ホイールは、8ツインスポークのデザインもあいまって相当にヤンチャ感を引き上げる。

インテリアは、丸型のメーターやエアアウトレットなど曲線を多用した愛らしい雰囲気を、ブラック基調&グレーステッチでクールに装っていて気分を盛り上げる。BRABUSのエンブレムやロゴが入れられたシフトノブやパーキングブレーキハンドルなどは、マニア心をくすぐるアイテムだ。

エンジンはsmart史上最強で最高出力109PS。スタンダードなNAエンジンに対して38PS増、ターボエンジンに対して19PS増となる。一般的にはハイチューンになればなるほど扱いづらくなるものでターボだとそれが顕著だったりもするが、「smart BRABUS forfour Xclusive」ではまったくそんな心配はいらない。

街中を普通に走らせていると、エンジン回転数はほとんどが2000rpm以下。0km/hから発進して交通の流れに合わせた加速をすると、1速だけは2500rpmまで引っ張るが、その上はほぼ2000rpmでポンポンとシフトアップしていく。それでもまったく物足りなさはなく、むしろこういった日常的なシーンでも軽快かつ活発な印象さえあるのだ。

しかも、今回は大人4人乗り、「E」と「S」があるシフトプログラムの「E」の方、すなわちエコ寄りのモードで走らせてもそうだった。

走りに“非日常”をもたらす絶妙なバランス

軽快な走りの理由は170Nmもの最大トルクを、2000rpmという低い回転域で発生させるエンジン特性にある。スタンダードなsmart forfour turboの最大トルクは135Nm/2500rpm。単純にブーストを高めるだけでパフォーマンスアップを図ったのではなく、トータルで性能を引き上げたBRABUSの技が光る。低回転域でのトルクの充実は、高速道路での巡航でも頼もしい。

スポーティな「S」に切り替えると3000rpm前後を多用することになる。街中ではもちろんのこと、それなりにペースが上がる郊外路や交通量の少ない首都高速道路でも、はっきりと「速い」と感じられるほど。アクセルオンへのツキがいい、すなわちレスポンスも俊敏で、右足に力を込めれば即座に背中がシートバックに押しつけられるような小気味良さがある。これはダイレクト感に定評のあるDCT(デュアルクラッチトランスミッション)だということも後押ししているだろう。

しかも「smart BRABUS forfour Xclusive」に搭載されているものは専用のチューニングを受けていてシフトアップスピードが早くなっている。アクセルを全開にすると6000rpmまでシャープに吹き上がっていき素早くシフトアップ。その分として、多少のシフトショックがあるものの、それもまったく不快ではなく、むしろ心地良いスポーティ感に繋がっている。

また、こういった際には十分に速さを感じているけれど、今どきのスーパースポーツなどのように速すぎて手に負えなかったり、公道ではアクセルを深く踏みこむのが憚られるということがないのが嬉しい。この絶妙なバランスが都市生活者に非日常をもたらすアーバンスポーツカーたる由縁だ。

腕に覚えがあるドライバーにも奥深さが感じられる

スポーティな専用サスペンションと大径タイヤを装着する「smart BRABUS forfour Xclusive」で街中をゆっくりと走らせていると、乗り心地はやや硬めではある。大きな突起などがあれば正直にゴツッとくる。だが速度をあげていくとそれも薄れてくる。小さなボディではあるが、がっしりとした剛性感があり、ハイスピード域ではスポーティなサスペンションがしなやかに感じられるようになっていくのだ。

首都高速のコーナーが連続する区間などでは水を得た魚のように生き生きとしてきて、RRならではのハンドリングが味わえる。操舵だけを受け持つフロントタイヤからは路面とタイヤの接地状況がナチュラルに伝わってくるとともに、ノーズの軽さで俊敏な回頭性をみせつけ、コーナー立ち上がりでは荷重がドンッと乗ったリアタイヤがパワーを余すことなく路面へ伝えて力強く立ち上がっていく。後ろ足で蹴り出すようなトラクションの強さはRRならではの魅力だが、史上最強のパワーによってその味わいは濃厚になる。

また、コーナリングで限界に達する少し手前でスッと速度を落とすESP(エレクトロニック・スタビリティ・プログラム)の仕事ぶりがいい。本当の限界スレスレまで介入を待つよりも、むしろその後の立ち上がりをスムーズにさせていて、自然とスローイン・ファーストアウトなコーナリングの基本を実践するのでストレスなくスポーティな走りを楽しめるのだ。サスペンションやタイヤの能力が高いので普段はそこまで達しないが、腕に覚えがあるドライバーが走らせても、なかなかに奥深い。

RRという資質と高度なシャシーチューニングを、現代的な安全性と組み合わせたうえで楽しめる。しかも現実的な速度域から退屈させないから、日常域でも弾けるような軽快な走りを堪能させてくれる「smart BRABUS forfour Xclusive」。日常生活に刺激をたっぷりと与えてくれるアーバンスポーツカーなのだ。

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石井昌道

モータージャーナリスト

自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストへ。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイク・レース等への参戦も豊富。ドライビング・テクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。最近ではメディアの仕事のかたわら、エコドライブの研究、および一般ドライバーへ広く普及させるため精力的に活動中。