2023年4月の自動運転、高度運転支援(ADAS)に関するニュースまとめ一覧

自動運転の世界は、いまどんなフェーズを駆け上がり、どこへ向かっているかーーー

そのヒントは、国内で自動運転の舵取り役を担う戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の動きを俯瞰するとみえてくる。SIPは、内閣府がリーダーシップをとり、府省庁の枠や旧来の分野を超えたマネジメントにより科学技術イノベーションを実現するために2014年に創設された国家プロジェクト。

2019年7月までSIP自動運転推進委員会構成員を務め、現在は国土交通省車両安全対策委員、経済産業省・国土交通省自動走行ビジネス検討会委員でもある、国際自動車ジャーナリストである清水和夫氏にSIP 第1期から第2期へと向かう自動運転分野のいま、サポカーと自動運転、物流・移動サービスとオーナーカー、安全と安心感、快適性といった、自動運転まわりのトレンドを聞く。

聞き手は、SIP自動運転推進委員会構成員でモータージャーナリストの石井昌道氏。


清水和夫氏

清水:いまニュースは、MaaS(Mobility as a Service シームレスにつなぐ新たな移動)とかトラックの自動縦列走行やロボットタクシーに注目が集まって、オーナーカーの自動運転は高額な高級車だけにある機能にみえて一般ユーザがついてこないという感じですよね。

需要や関心度としては、過疎地や物流の課題を救う手段として物流移動サービスのほうが高い。オーナーカーの自動運転フェーズはいま高速道路のなかにあって、歩行者事故の分野にはまだ至ってない。だからまだ「高速道路を行く高級車の車内でハンドルから手を離してスマホや雑誌をながめる」といったイメージしか浮かばないかもしれない。

でもね、最初は高額な高級車の自動運転技術であっても、その実現がないとレベル4へもステップアップできないし、オーナーカーがレベル3で培った技術は、物流移動サービスにも波及するから、やっぱり物流もオーナーカーも両面から進化していかないと。

石井:なるほど。では、安全と快適性について。これはどう違うのか。

清水:すでにACC(Adaptive Cruise Control)などはドライバーは当たり前のように使う機能に普及した。前のクルマにロックオンして追従していけば楽だし、最も左の走行車線を一定の速度で行くという選択もできる。そういう意味ではACCは自動車メーカーでは快適技術として位置づけられていた。で、ACCの延長線上に自動運転の技術が生まれてくるとは思いますけどね。

石井:安全と快適性のなかに、安心が入ってこないと、クルマとドライバーが共存できませんよね。

清水:これはもう永遠のテーマで、たとえばタイヤのグリップ性能とウェット性能のように、安全基準を満たしていても安心感はないという事象っていっぱいありますよね。ユーザがその製品に共感できるか否かは、やっぱり「安心かどうか」なんですよね。さらに安心なくして快適はないから、ユーザ目線でいうと安心が前提にあって、安心だから快適があって、楽しさもある。だから底辺は安心、その上に順に快適、楽しさがのる。

清水和夫氏

石井:開発現場では「開発すればするほど、壁が立ちはだかる」っていいますね。やはりレベル3はそうかんたんじゃないと。

清水:大事なのは社会やユーザが何を求めて、自動運転を手に入れたらどんな幸せがあるのか。カスタマーベネフィットみたいなところまで考えていかないと。いっぽうで、自動運転車両は高い買い物なので、スバルのアイサイトを10万円でつけるか、100万円の自動運転機能付き車両を買うかもいろいろあると想うし、駆ってくれないと技術は進歩しないし、普及しないとコストは下がらないし、と。負のスパイラルに陥っちゃう。

石井:その先はけっこう難しそうですね。

清水:高級車から自動運転レベル3が入ってきて、こんどはいかに大衆車に自動運転技術を入れ込んでいくかがカギですよね。でも日本はこれまで、軽自動車にエアバッグとプリテンショナーベルトを一気に導入させた実績を持つ国だから、「これがいいんだ!」って確信したら、オールジャパンでダーッてかなりの勢いで普及すると思いますね。

だから軽自動車側からサポカーが進化して、高級車カテゴリから自動運転がすすんでごその技術が大衆車へおりてくる。その出会うポイントがプリウスとかカローラといったCセグメントで、2024年か2025年といわれてますよね。


インタビュー全文はこちら


  • SIP cafe 自動運転ガイド
  • SIP cafe とは

    SIP cafe とは

    『SIP cafe』は直面する次世代モビリティについて考え、自動運転のいま、自動運転がもたらす未来社会について情報を発信していくコミュニティサイトとして2019年10月に開設。一方的な最新情報の発信だけでなく、広く多くの人たちが集まって議論していくための“広場”としての役割を担う。SIP cafeの主宰であり“マスター”の清水和夫氏は、「反対する意見もどんどんぶつけあって、議論していく場所にしたい」と語っている。

    » 詳しくはこちら
    1 2 > 次
CASEカオスマップ2023「自動運転編」…各地域の主力プレイヤーと動向 画像
プレミアム

CASEカオスマップ2023「自動運転編」…各地域の主力プレイヤーと動向

目まぐるしく移り変わる自動車業界。CASEの各領域について、各主要構成要素をリージョン別に区分し、主要プレイヤーを一覧化したカオスマップと共にトレンドや動向を解説する。第二弾となる今回は、「Autonomous(自動運転)」。

AI物体認識ソフト「SVNet」の現在地と今後の展望…ストラドビジョン社CEOが語る 画像
プレミアム

AI物体認識ソフト「SVNet」の現在地と今後の展望…ストラドビジョン社CEOが語る

多くのクルマに搭載されているADAS(先進運転支援システム)を、高度なAI物体認識ソフト『SVNet』を使って展開するのが韓国発のベンチャー「ストラドビジョン」だ。そのCEOを務めるキム・ジュナン氏がこのほど来日し、同社の現在地と今後の展望を語った。

自動運転でGWドライブの渋滞疲れ解消へ、6割以上が期待…チューリング調べ 画像
自動車 テクノロジー

自動運転でGWドライブの渋滞疲れ解消へ、6割以上が期待…チューリング調べ

完全自動運転車両の開発・販売に取り組むチューリングは、「GWのお出かけに関する調査」を実施。6割以上の人が自動運転によるGWドライブの心配ごと解消に期待していることが明らかになった。

【日産 セレナ 発売】プロパイロット2.0が車両価格500万円アンダー…ADASの下位展開も 画像
自動車 ニューモデル

【日産 セレナ 発売】プロパイロット2.0が車両価格500万円アンダー…ADASの下位展開も

日産自動車が4月20日に発売したミッドサイズミニバン、新型『セレナe-POWER』。2万台強の事前受注のうち15%は最上級グレード「ルキシオン」であるという。

ボルボカーズが戦略的投資、ドライバーの異常を検出する技術に…衝突しない未来を目指す 画像
自動車 ビジネス

ボルボカーズが戦略的投資、ドライバーの異常を検出する技術に…衝突しない未来を目指す

ボルボカーズ(Volvo Cars)は4月24日、イスラエルのディープテック脳モニタリングAIスタートアップ「CorrActions」社に戦略的投資を行うと発表した。脳の認知状況の悪化をモニタリングする技術を開発し、ドライバーをより深く理解することを目指す。

スバルASURA Netとは? アイサイトから自動運転へ…NVIDIA GTC 2023 画像
プレミアム

スバルASURA Netとは? アイサイトから自動運転へ…NVIDIA GTC 2023

スバルは3月に、アイサイトの開発にAIがどのように活用されたのかの技術セミナーを、NVIDIA GTCにおいて開いた。スバルが取り組む自動運転研究のアプローチも語られ非常に興味深いものだった。スピーカーはスバルラボの齋藤徹副所長。

ZF、デジタル地図の業界標準団体に加盟…ソフトウェア定義車両実現へ 画像
プレミアム

ZF、デジタル地図の業界標準団体に加盟…ソフトウェア定義車両実現へ

ZFは4月20日、「ナビゲーション・データ・スタンダード(NDS)」アソシエーションに加盟した、と発表した。

低コストで小型トラックのADASに対応、ジェイテクトがC-EPSタイプ操舵アクチュエータを開発 画像
自動車 テクノロジー

低コストで小型トラックのADASに対応、ジェイテクトがC-EPSタイプ操舵アクチュエータを開発

ジェイテクトは小型トラックのADAS(先進運転支援システム)対応に貢献する「C-EPSタイプ操舵アクチュエータ」を開発。いすゞ自動車の新型『エルフ』『エルフEV』に採用されたと発表した。

2択アンケート「マイカーの自動運転、あり?なし?」【クルマら部 車論調査】 画像
モータースポーツ/エンタメ

2択アンケート「マイカーの自動運転、あり?なし?」【クルマら部 車論調査】

自動車ニュースのレスポンスが贈る、クルマ好きのためのLINE公式アカウント『クルマら部』(ベータ版)! 参加型コンテンツ「クルマの車論調査」から、クルマ好きの皆さんへアンケート!

ZF、電動化や自動運転技術を出展…上海モーターショー2023 画像
自動車 ニューモデル

ZF、電動化や自動運転技術を出展…上海モーターショー2023

ZFグループ(ZF Group)は4月18日、中国で開幕した上海モーターショー2023に、電動化や「ソフトウェア・デファインド・ビークル」、自動運転車両向けの最新イノベーションを出展した。

人や車とコミュニケーションしながら自動運転、ヴァレオの電動配送ドロイド…上海モーターショー2023 画像
自動車 ビジネス

人や車とコミュニケーションしながら自動運転、ヴァレオの電動配送ドロイド…上海モーターショー2023

ヴァレオ(Valeo)は4月18日、中国で開幕した上海モーターショー2023において、自動運転の電動配送ドロイド「eDeliver4U」の新型を初公開した。

自動運転レベル4解禁と法的留意点…森・濱田松本法律事務所 パートナー 弁護士 佐藤典仁氏[インタビュー] 画像
プレミアム

自動運転レベル4解禁と法的留意点…森・濱田松本法律事務所 パートナー 弁護士 佐藤典仁氏[インタビュー]

「自動運転L4実装に向けたビジネスと法的対応~森・濱田松本法律事務所/BOLDLY/ティアフォー~」セミナーに登壇する佐藤弁護士氏は、国交省で自動運転に係る道路運送車両法改正を担当した経験を持つ。佐藤氏にセミナーの見どころを聞いた。

関西空港で電動トラクターを遠隔操作、ピーチが実証実験 画像
自動車 テクノロジー

関西空港で電動トラクターを遠隔操作、ピーチが実証実験

LCCのピーチ・アビエーション(以下ピーチ)は4月12日、関西空港において貨物コンテナなど航空地上支援機材(Ground Support Equipment:GSE) を遠隔操作する実証実験の模様を報道関係者に公開した。同様の実証実験が関西エリアで行われるのは初めてとなる。

無人で作業する自動運転フォークリフトを鈴与が試験運用へ 画像
プレミアム

無人で作業する自動運転フォークリフトを鈴与が試験運用へ

鈴与は、ラピュタロボティクスと共同開発した「ラピュタ自動フォークリフト」について現場オペレーションを想定した試験運用を、2023年夏に鈴与の物流センターで開始する。

関西空港で自律運転けん引車が稼働---遠隔管制システムを搭載 画像
プレミアム

関西空港で自律運転けん引車が稼働---遠隔管制システムを搭載

長瀬産業は、イージーマイル製自律運転けん引車「TractEasy」に、パナソニック ホールディングスが開発した遠隔管制システムを搭載し、関西空港で動力供給機材の運搬を想定した実証実験を4月3日から開始した。

    1 2 > 次
Page 1 of 2