2020年6月の自動運転、高度運転支援(ADAS)に関するニュースまとめ一覧

自動運転の世界は、いまどんなフェーズを駆け上がり、どこへ向かっているかーーー

そのヒントは、国内で自動運転の舵取り役を担う戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の動きを俯瞰するとみえてくる。SIPは、内閣府がリーダーシップをとり、府省庁の枠や旧来の分野を超えたマネジメントにより科学技術イノベーションを実現するために2014年に創設された国家プロジェクト。

2019年7月までSIP自動運転推進委員会構成員を務め、現在は国土交通省車両安全対策委員、経済産業省・国土交通省自動走行ビジネス検討会委員でもある、国際自動車ジャーナリストである清水和夫氏にSIP 第1期から第2期へと向かう自動運転分野のいま、サポカーと自動運転、物流・移動サービスとオーナーカー、安全と安心感、快適性といった、自動運転まわりのトレンドを聞く。

聞き手は、SIP自動運転推進委員会構成員でモータージャーナリストの石井昌道氏。


清水和夫氏

清水:いまニュースは、MaaS(Mobility as a Service シームレスにつなぐ新たな移動)とかトラックの自動縦列走行やロボットタクシーに注目が集まって、オーナーカーの自動運転は高額な高級車だけにある機能にみえて一般ユーザがついてこないという感じですよね。

需要や関心度としては、過疎地や物流の課題を救う手段として物流移動サービスのほうが高い。オーナーカーの自動運転フェーズはいま高速道路のなかにあって、歩行者事故の分野にはまだ至ってない。だからまだ「高速道路を行く高級車の車内でハンドルから手を離してスマホや雑誌をながめる」といったイメージしか浮かばないかもしれない。

でもね、最初は高額な高級車の自動運転技術であっても、その実現がないとレベル4へもステップアップできないし、オーナーカーがレベル3で培った技術は、物流移動サービスにも波及するから、やっぱり物流もオーナーカーも両面から進化していかないと。

石井:なるほど。では、安全と快適性について。これはどう違うのか。

清水:すでにACC(Adaptive Cruise Control)などはドライバーは当たり前のように使う機能に普及した。前のクルマにロックオンして追従していけば楽だし、最も左の走行車線を一定の速度で行くという選択もできる。そういう意味ではACCは自動車メーカーでは快適技術として位置づけられていた。で、ACCの延長線上に自動運転の技術が生まれてくるとは思いますけどね。

石井:安全と快適性のなかに、安心が入ってこないと、クルマとドライバーが共存できませんよね。

清水:これはもう永遠のテーマで、たとえばタイヤのグリップ性能とウェット性能のように、安全基準を満たしていても安心感はないという事象っていっぱいありますよね。ユーザがその製品に共感できるか否かは、やっぱり「安心かどうか」なんですよね。さらに安心なくして快適はないから、ユーザ目線でいうと安心が前提にあって、安心だから快適があって、楽しさもある。だから底辺は安心、その上に順に快適、楽しさがのる。

清水和夫氏

石井:開発現場では「開発すればするほど、壁が立ちはだかる」っていいますね。やはりレベル3はそうかんたんじゃないと。

清水:大事なのは社会やユーザが何を求めて、自動運転を手に入れたらどんな幸せがあるのか。カスタマーベネフィットみたいなところまで考えていかないと。いっぽうで、自動運転車両は高い買い物なので、スバルのアイサイトを10万円でつけるか、100万円の自動運転機能付き車両を買うかもいろいろあると想うし、駆ってくれないと技術は進歩しないし、普及しないとコストは下がらないし、と。負のスパイラルに陥っちゃう。

石井:その先はけっこう難しそうですね。

清水:高級車から自動運転レベル3が入ってきて、こんどはいかに大衆車に自動運転技術を入れ込んでいくかがカギですよね。でも日本はこれまで、軽自動車にエアバッグとプリテンショナーベルトを一気に導入させた実績を持つ国だから、「これがいいんだ!」って確信したら、オールジャパンでダーッてかなりの勢いで普及すると思いますね。

だから軽自動車側からサポカーが進化して、高級車カテゴリから自動運転がすすんでごその技術が大衆車へおりてくる。その出会うポイントがプリウスとかカローラといったCセグメントで、2024年か2025年といわれてますよね。


インタビュー全文はこちら


  • SIP cafe 自動運転ガイド
  • SIP cafe とは

    SIP cafe とは

    『SIP cafe』は直面する次世代モビリティについて考え、自動運転のいま、自動運転がもたらす未来社会について情報を発信していくコミュニティサイトとして2019年10月に開設。一方的な最新情報の発信だけでなく、広く多くの人たちが集まって議論していくための“広場”としての役割を担う。SIP cafeの主宰であり“マスター”の清水和夫氏は、「反対する意見もどんどんぶつけあって、議論していく場所にしたい」と語っている。

    » 詳しくはこちら
    1 2 3 > 次
アマゾン、自動運転事業を強化…新興企業のズークスを買収へ 画像
自動車 ビジネス

アマゾン、自動運転事業を強化…新興企業のズークスを買収へ

アマゾン(Amazon)は6月26日、米国カリフォルニア州の自動運転技術開発企業、ズークス(Zoox)を買収する契約を締結した、と発表した。

自動運転に対応した道路空間 国交省が検討へ 画像
自動車 社会

自動運転に対応した道路空間 国交省が検討へ

国土交通省は6月24日、「自動運転に対応した道路空間に関する検討会」をウェブ会議で開催し、自動運転が普及していくために必要な道路空間のあり方について議論すると発表した。

ボルボカーズとウェイモ、配車サービス向け自動運転を共同開発…戦略的提携 画像
自動車 ビジネス

ボルボカーズとウェイモ、配車サービス向け自動運転を共同開発…戦略的提携

ボルボカーグループ(Volvo Car Group)は6月25日、グーグル(Google)の自動運転車開発部門のウェイモ(Waymo)と戦略的提携を結ぶと発表した。

自動運行装置とサイバーセキュリティの国際基準が成立 画像
自動車 テクノロジー

自動運行装置とサイバーセキュリティの国際基準が成立

国土交通省は6月25日、国連の自動車基準調和世界フォーラム(WP29)第181回会合で乗用車のレベル3(システムの要請に応じて手動運転)自動運行装置とサイバーセキュリティの国際基準が成立したと発表した。

【日産 キックス 新型】プロパイロットはミリ波レーダーとの組み合わせ…あおり運転対処に役立つ「SOSコール」も 画像
自動車 ニューモデル

【日産 キックス 新型】プロパイロットはミリ波レーダーとの組み合わせ…あおり運転対処に役立つ「SOSコール」も

日本国内に限れば、日産として10年ぶりとなる新車種としてデビューした日産『キックス』。ラインナップはe-POWERを搭載したワングレードのみで、日本仕様はすべてがタイからの輸入となる。その日本市場向けに搭載された安全装備が「プロパイロット」など数々の新機能だ。

メルセデスベンツ、次世代自動運転技術を共同開発…エヌビディアと新たな提携 画像
自動車 ビジネス

メルセデスベンツ、次世代自動運転技術を共同開発…エヌビディアと新たな提携

メルセデスベンツ(Mercedes-Benz)は6月23日、エヌビディア(NVIDIA)と新たな提携を結び、次世代の自動運転技術を共同開発すると発表した。

2040年に向けた道路政策ビジョン MaaSや自動運転トラックの運行の想定を提言 画像
自動車 社会

2040年に向けた道路政策ビジョン MaaSや自動運転トラックの運行の想定を提言

国土交通省は、社会資本整備審議会道路分科会基本政策部会が道路政策ビジョン「2040年 道路の景色が変わる」をとりまとめ、国土交通大臣に提出した(6月18日)。

BMWとダイムラー、自動運転技術の共同開発を一時中断 画像
自動車 ビジネス

BMWとダイムラー、自動運転技術の共同開発を一時中断

BMWグループ(BMW Group)とダイムラー(Daimler)は6月19日、自動運転技術の共同開発を一時中断すると発表した。両者で検討を重ねた結果とのこと。今後はそれぞれ独自に開発を続ける。

フォード マスタング EV、高速道路でハンズフリー走行が可能に…前方を注視しないと自動減速 画像
自動車 テクノロジー

フォード マスタング EV、高速道路でハンズフリー走行が可能に…前方を注視しないと自動減速

フォードモーターは6月18日、2020年後半に米国市場で発売予定のフォード『マスタング』シリーズの新型EV、フォード『マスタング・マッハE』(Ford Mustang Mach-E)に、米国とカナダの高速道路をハンズフリーで部分自動運転できるシステムを採用すると発表した。

地図データ利用で自動的に加減速、燃費を10%以上向上…デルファイとトムトムが共同開発 画像
自動車 テクノロジー

地図データ利用で自動的に加減速、燃費を10%以上向上…デルファイとトムトムが共同開発

デルファイ・テクノロジー(Delphi Technologies)は6月18日、位置情報技術を手がけるトムトム(TomTom)の地図データを利用して、燃費を10%以上向上させる技術を共同開発した、と発表した。

【日産 ルークス 新型】試乗…プロパイロットに安定感、ストレスフリーな走行 画像
自動車 ニューモデル

【日産 ルークス 新型】試乗…プロパイロットに安定感、ストレスフリーな走行

発売後、好調な滑り出しを見せているのが日産『ルークス』新型だ。ダウンサイジングを意識した充実装備がその人気を支えていると思われるが、ここではその中のひとつ、ミリ波レーダーを組み合わせたプロパイロットに注目した。

ZMP、ロボット・自動運転シミュレーター『RoboSim』を公開[動画] 画像
自動車 テクノロジー

ZMP、ロボット・自動運転シミュレーター『RoboSim』を公開[動画]

ZMPは6月19日、ロボット・自動運転シミュレーター「RoboSim(ロボシム)」を動画にて公開した。

停車位置の誤差3ミリ以内、自動運転AIバスが実験---埼玉工業大学、GPSのみでも実証 画像
自動車 テクノロジー

停車位置の誤差3ミリ以内、自動運転AIバスが実験---埼玉工業大学、GPSのみでも実証

「はいバスが正着しましたーっ」「はい計測しまーす。289ミリ!」 羽田空港 第3ターミナルに仮設した、バス乗降用プラットホームに、自動運転バスの研究チームと計測員の声が響く。羽田空港エリア公道上で始まった公共車両優先システムなどの実証実験だ。

テレワーク導入コンサル、『自動運転ラボ』のストロボが開始…MaaS・自動運転業界特化 画像
自動車 ビジネス

テレワーク導入コンサル、『自動運転ラボ』のストロボが開始…MaaS・自動運転業界特化

ストロボは、テレワークやリモートワーク化など多様化する働き方における企業人事部の課題を解決する、「MaaS・自動運転業界特化型 テレワーク導入・人事コンサルティングサービス」を開始する。

アウディ、自動運転の研究開発施設を開設…米シリコンバレー 画像
自動車 ビジネス

アウディ、自動運転の研究開発施設を開設…米シリコンバレー

アウディ(Audi)は6月16日、米国カリフォルニア州シリコンバレーに、自動運転の研究開発施設を開設した、と発表した。

    1 2 3 > 次
Page 1 of 3