2016年8月の自動運転、高度運転支援(ADAS)に関するニュースまとめ一覧

自動運転の世界は、いまどんなフェーズを駆け上がり、どこへ向かっているかーーー

そのヒントは、国内で自動運転の舵取り役を担う戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の動きを俯瞰するとみえてくる。SIPは、内閣府がリーダーシップをとり、府省庁の枠や旧来の分野を超えたマネジメントにより科学技術イノベーションを実現するために2014年に創設された国家プロジェクト。

2019年7月までSIP自動運転推進委員会構成員を務め、現在は国土交通省車両安全対策委員、経済産業省・国土交通省自動走行ビジネス検討会委員でもある、国際自動車ジャーナリストである清水和夫氏にSIP 第1期から第2期へと向かう自動運転分野のいま、サポカーと自動運転、物流・移動サービスとオーナーカー、安全と安心感、快適性といった、自動運転まわりのトレンドを聞く。

聞き手は、SIP自動運転推進委員会構成員でモータージャーナリストの石井昌道氏。


清水和夫氏

清水:いまニュースは、MaaS(Mobility as a Service シームレスにつなぐ新たな移動)とかトラックの自動縦列走行やロボットタクシーに注目が集まって、オーナーカーの自動運転は高額な高級車だけにある機能にみえて一般ユーザがついてこないという感じですよね。

需要や関心度としては、過疎地や物流の課題を救う手段として物流移動サービスのほうが高い。オーナーカーの自動運転フェーズはいま高速道路のなかにあって、歩行者事故の分野にはまだ至ってない。だからまだ「高速道路を行く高級車の車内でハンドルから手を離してスマホや雑誌をながめる」といったイメージしか浮かばないかもしれない。

でもね、最初は高額な高級車の自動運転技術であっても、その実現がないとレベル4へもステップアップできないし、オーナーカーがレベル3で培った技術は、物流移動サービスにも波及するから、やっぱり物流もオーナーカーも両面から進化していかないと。

石井:なるほど。では、安全と快適性について。これはどう違うのか。

清水:すでにACC(Adaptive Cruise Control)などはドライバーは当たり前のように使う機能に普及した。前のクルマにロックオンして追従していけば楽だし、最も左の走行車線を一定の速度で行くという選択もできる。そういう意味ではACCは自動車メーカーでは快適技術として位置づけられていた。で、ACCの延長線上に自動運転の技術が生まれてくるとは思いますけどね。

石井:安全と快適性のなかに、安心が入ってこないと、クルマとドライバーが共存できませんよね。

清水:これはもう永遠のテーマで、たとえばタイヤのグリップ性能とウェット性能のように、安全基準を満たしていても安心感はないという事象っていっぱいありますよね。ユーザがその製品に共感できるか否かは、やっぱり「安心かどうか」なんですよね。さらに安心なくして快適はないから、ユーザ目線でいうと安心が前提にあって、安心だから快適があって、楽しさもある。だから底辺は安心、その上に順に快適、楽しさがのる。

清水和夫氏

石井:開発現場では「開発すればするほど、壁が立ちはだかる」っていいますね。やはりレベル3はそうかんたんじゃないと。

清水:大事なのは社会やユーザが何を求めて、自動運転を手に入れたらどんな幸せがあるのか。カスタマーベネフィットみたいなところまで考えていかないと。いっぽうで、自動運転車両は高い買い物なので、スバルのアイサイトを10万円でつけるか、100万円の自動運転機能付き車両を買うかもいろいろあると想うし、駆ってくれないと技術は進歩しないし、普及しないとコストは下がらないし、と。負のスパイラルに陥っちゃう。

石井:その先はけっこう難しそうですね。

清水:高級車から自動運転レベル3が入ってきて、こんどはいかに大衆車に自動運転技術を入れ込んでいくかがカギですよね。でも日本はこれまで、軽自動車にエアバッグとプリテンショナーベルトを一気に導入させた実績を持つ国だから、「これがいいんだ!」って確信したら、オールジャパンでダーッてかなりの勢いで普及すると思いますね。

だから軽自動車側からサポカーが進化して、高級車カテゴリから自動運転がすすんでごその技術が大衆車へおりてくる。その出会うポイントがプリウスとかカローラといったCセグメントで、2024年か2025年といわれてますよね。


インタビュー全文はこちら


  • SIP cafe 自動運転ガイド
  • SIP cafe とは

    SIP cafe とは

    『SIP cafe』は直面する次世代モビリティについて考え、自動運転のいま、自動運転がもたらす未来社会について情報を発信していくコミュニティサイトとして2019年10月に開設。一方的な最新情報の発信だけでなく、広く多くの人たちが集まって議論していくための“広場”としての役割を担う。SIP cafeの主宰であり“マスター”の清水和夫氏は、「反対する意見もどんどんぶつけあって、議論していく場所にしたい」と語っている。

    » 詳しくはこちら
    1 2 3 > 次
“自動運転”は夢物語ではない…ZFの技術が実現する未来の車社会とは 画像
自動車 テクノロジー

“自動運転”は夢物語ではない…ZFの技術が実現する未来の車社会とはPR

今どきの新型車に必須の装備といえば、走行時の安全性や快適性を高めるための機能だ。そして、そのADAS(高度運転支援システム)の先にある“自動運転”。その実現を支えるZFのテクノロジーに迫った。

クラウド連携、自動運転専用ECUのプロトタイプ開発も…オール日立の取り組み 画像
自動車 テクノロジー

クラウド連携、自動運転専用ECUのプロトタイプ開発も…オール日立の取り組み

31日、日立オートモーティブと茨城大学による自動運転分野における包括共同研究に関する記者説明会が開催された。その席で、同社のサプライヤーとしての自動運転技術の戦略についても言及があった。

日立オートモティブと茨城大学、自動運転技術で共同研究…人文学部とも連携 画像
自動車 テクノロジー

日立オートモティブと茨城大学、自動運転技術で共同研究…人文学部とも連携

31日、日立オートモーティブと茨城大学は、自動運転技術の基礎研究を応用技術化する取り組みについて詳細の記者説明会を開催した。両者は8月8日にこのプロジェクトに関する包括契約を締結している。

日立オートモティブと茨城大学、自動運転技術で共同研究…連携事業実施協定を締結 画像
自動車 テクノロジー

日立オートモティブと茨城大学、自動運転技術で共同研究…連携事業実施協定を締結

茨城大学と日立オートモティブシステムズは8月31日、自動運転関連技術の共同研究など、両者による連携事業を包括的に推進する「連携事業実施協定」を締結したと発表した。

ZMP、自動運転用ソフトウェア搭載の超小型EVベースロボットカーを発売 画像
自動車 テクノロジー

ZMP、自動運転用ソフトウェア搭載の超小型EVベースロボットカーを発売

ZMPは、自動運転用ソフトウェア「Autoware」を搭載した超小型EVベース開発車両「RoboCar MV2 Autoware 基本パッケージ」の販売を8月30日より開始した。

デンソーが講演会…開発中の自動運転センシング技術など紹介 10月15日 画像
自動車 テクノロジー

デンソーが講演会…開発中の自動運転センシング技術など紹介 10月15日

デンソーは、10月15日に東京都品川区の大崎ブライトコアホールで「DENSO AI Tech Seminar‐コンピュータビジョンが映し出す、自動運転のセンシング技術の未来‐」と題し、画像認識・機械学習に関する講演会を開催する。

SBドライブと白馬村、自動運転を活用したスマートモビリティで連携 画像
自動車 テクノロジー

SBドライブと白馬村、自動運転を活用したスマートモビリティで連携

ソフトバンクグループのSBドライブと長野県白馬村は8月28日、自動運転技術を活用したスマートモビリティーサービスの事業化に向けた連携協定を締結した。

自動運転タクシーがシンガポールでテスト開始 画像
自動車 テクノロジー

自動運転タクシーがシンガポールでテスト開始

米スタートアップnuTonomy(ヌートノミー)は現地時間25日、シンガポールで自動運転タクシーのテストを開始した。すでにIT各社などが、自動運転車の試験走行を開始しているものの、コンシューマー向けサービスとして展開されるのは今回が世界初となる。

デンソーの人工知能プロジェクト…ADAS研究における立ち位置 画像
自動車 ビジネス

デンソーの人工知能プロジェクト…ADAS研究における立ち位置

ADAS(先進運転支援システム)、その延長にある自動運転または自律走行技術において、カメラ画像や3次元スキャナーのデータを分析・認識するため、人工知能技術が注目されている。デンソーも独自にこの技術を研究しており、自社のADASに積極的に適用している。

デンソーの人工知能プロジェクト…ねらいは車載器とIoT 画像
自動車 ビジネス

デンソーの人工知能プロジェクト…ねらいは車載器とIoT

デンソーは25日、人工知能研究の権威、カーネギーメロン大学 金出武雄教授と技術顧問契約を結んだことを発表した。関連して、同社が取り組む「AI R&Dプロジェクト」について記者向けの技術説明会が開催された。

デンソー、自動運転技術の開発を強化…カーネギーメロン大金出教授が顧問に 画像
自動車 ビジネス

デンソー、自動運転技術の開発を強化…カーネギーメロン大金出教授が顧問に

デンソーは、カーネギーメロン大学ワイタカー記念全学教授の金出武雄氏と技術顧問契約を締結した。

【日産 セレナ 新型】「プロパイロット」の測拒能力は、ミリ波レーダーやステレオカメラを超えたか 画像
自動車 ニューモデル

【日産 セレナ 新型】「プロパイロット」の測拒能力は、ミリ波レーダーやステレオカメラを超えたか

新型セレナに搭載された『プロパイロット』のセンシング能力を担当者に聞いた

【日産 セレナ 新型】自動運転技術に「そういう時代が来たんだな」…パパイヤ鈴木 画像
自動車 ニューモデル

【日産 セレナ 新型】自動運転技術に「そういう時代が来たんだな」…パパイヤ鈴木

24日、日産自動車 グローバル本社では、タレントの山本耕史、振付師のパパイヤ鈴木を呼んだトークイベントが開催された。トークセッション中、パパイヤ鈴木が運転する新型セレナからの中継がはいり、プロパイロットの機能をレポートしていた。

デルファイとモービルアイが提携…完全自動運転システム開発へ 画像
自動車 ビジネス

デルファイとモービルアイが提携…完全自動運転システム開発へ

米国の大手自動車部品メーカー、デルファイ・オートモーティブ(以下、デルファイ)は8月23日、モービルアイと提携し、完全な自動運転システムを共同開発すると発表した。

ベロダインにフォードとバイドゥが投資…高性能LiDARセンサーを開発 画像
自動車 ビジネス

ベロダインにフォードとバイドゥが投資…高性能LiDARセンサーを開発

ベロダイン・ライダーは、フォードモーターと中国の大手検索エンジン会社バイドゥ(百度)の共同投資者が総額1億5000万ドルの投資を完了したと発表した。

    1 2 3 > 次
Page 1 of 3