プリウスPHEVは抽選販売! 当選に至るまでの顛末…実体験レポート

正式発売前に抽選販売となった新型プリウスPHEV
  • 正式発売前に抽選販売となった新型プリウスPHEV
  • PHEVのテールランプはスモークレンズで展開される
  • ソーラー式サンルーフと同様、パノラマルーフもルーフがブラックでツートーン仕様になる
  • HEVのインテリア。ソフトパッドが助手席前だけというのはさみしい
  • PHEVのバッテリーはリアシート下となったものお、HEVよりもラゲージスペースは狭くなった
  • ラゲージスペースのスペック表
  • ヘッドランプの仕様。PHEVだけがアダプティブ式となっていることがわかる

すでに発表だけされていた5代目トヨタ『プリウス』のPHEVが3月15日、正式に発売された。PHEVは発売前に抽選を実施し、これで第1回分の受注が終了することになった。そんな中で筆者は幸運にも抽選に当選。しかも6月という早い時期に納車されることが決まった。その顛末をレポートする。

◆正式発売日に注文したのでは遅過ぎるという実態

5代目プリウスがワールドプレミアされたのは2022年11月16日。そのスタイリッシュなデザインに多くの人が目を奪われたのは記憶に新しい。ただ、この時点ではHEVとPHEVがラインナップされることや、グローバルでの仕様が発表されただけで、具体的な日本仕様は伏せられたままだった。

日本仕様が明らかになったのは年が明けた1月10日。この時を前後して3月発売予定とされていたPHEVの正式な発売日も3月15日と設定された。これを機にいよいよプリウスの本格的な商戦が始まる……、と誰もが思っていたはずだ。

しかし、フタを開けたら実際は大きく違っていた。というのも、HEVは12月中に事前契約を受け付け、正式発売日には主力グレードとなる2.0Lモデルは2023年の生産分すべてが受注を終えていたのだ。ディーラーによっては、現在でも受注を受け付けているようだが、納車の具体的なスケジュールは不明のまま順番待ちをしている状況だという。

そんな状況下でPHEVはどうだったのか。実はPHEVはHEVよりはるかに生産台数が少ない。もちろん価格帯が高い分、HEVと同等の受注が集まるはずもないが、それでも生産台数を上回る希望者が集まるのは容易に想像できる。そこでディーラーのほとんどは事前に抽選を行い、そこで納車スケジュールも提示できるものとしたのだ。

◆抽選となったPHEV。抽選に参加するにも 正式契約が前提

ただ、この抽選に参加するのにも条件があった。すべてのディーラーが同じではないようだが、筆者の場合は地元の千葉トヨペットで「抽選に参加するには正式な契約をすることが条件」とされたのだ。これは抽選に当たればそのまま契約が実行されることを意味し、仕様の変更やキャンセルは一切できないというものだった。千葉トヨペットが設定した抽選日は正式発売前の3月3日。その前日の3月2日まで契約を受け付け、3月4日にはその結果がわかるということだった。

しかし、契約の時点ではPHEVの正式発売前と言うこともあり、この時点で実車は見られないどころか、カタログもない。オプションについても詳細はわからないまま。営業マンからは「PHEVはZグレードとなるので、装備は基本的にHEVと同じはず。オプションもHEVを参考に選んで欲しい」ということだけだった。契約に際してはかなり勇気のいる決断が迫られたのだ。

そこでHEVの展示車をチェックしたり、営業マンのセールスマニュアルを見ながら確認していった。そんな中で5代目プリウスで個人的に良かった点、残念な点が見つかった。

良かった点としてはスタイルが想像以上に良く、ラゲッジスペースがPHEVもHEVで変わらないであろう(あくまでこの時点での見解)ということ。この時点では大きなポイントと思った。今までは不自然にフロアが盛り上がった状態で、かさばるものが積載できない状態だったからだ。Aピラーがかなり寝ているので、乗り降りにも多少影響があるかなと思ったが、これもなかった。

◆車両本体の値引きはゼロ! ディーラーごとにその対策も

シートにはヒーターだけでなく、ベンチレーションが付いていることもプラスポイントだった。タイヤはヨコハマタイヤの「ブルーアース-GT AE51」で、サイズは195/50R19。サイズの割にトレッドが狭い特殊なタイヤだが、ヨコハマによれば「走行性能、快適性能、環境性能のすべてに優れる、高いグランドツーリング性能を持ったタイヤ」としている。

一方で残念だったのはHEVはヘッドランプが“アダプティブ”ではなかったこと。これがPHEVも同じだったら先代よりも機能面でマイナスとなる。半導体不足の影響がここまで及んでいるのか。それにも関わらず車両価格はうなぎ登り。この先どうなるのか不安になってしまう。

また、トップマウントメータの採用により、ヘッドアップディスプレイが非搭載となったことも残念だった。インテリアがプラスチッキーで、ソフトパッドが貼ってあるのも助手席側のダッシュボードぐらい。500万円を超えるクルマの割にはチープ感が漂うのは否めない。

そう思いながら契約に臨むと、この時点で値引きは一切なく、納車時期もわからないまま。税制上免税になるかどうかも不明であるため、取得税代わりの自動車税環境性能割はそのまま加算した。欲しいオプションを積み上げていくと、車両本体460万円のプリウスPHEVは530万円を超える金額になっていた。それでも補助金を当てにすれば500万円を下回る。

また、今回の契約では下取り車があることが前提となっていた。これは車両本体の値引きが基本的にゼロであるため、代わりに下取り車を納車時期が不明のまま契約時点のオークション最高額で下取るとしたのだ。これで抽選に外れれば契約はなくなり、振り出しに戻るわけだ。まずはこの状態で抽選に臨むことにした。

◆抽選の競争率は2倍から3倍。納車順も抽選で決まる

では、抽選の競争率はどのぐらいなのか。営業マンに訊ねると、千葉トヨペットに割り当てられた台数は78台。千葉トヨペットは県内に56店舗あり、各店舗で割り振ると平均で2台も当たらないことになる。聞けば2月下旬の契約の時点で約200台ほどの契約があり、筆者と関係がある店舗では自分を入れて4台が契約されたという。競争率は2倍から3倍。思ったより競争率は高くない。やはり購入を前提とした契約が影響したのかもしれない。

そして、抽選の結果は“当選”。クジ運が弱い自分としては珍しく当てることができたようだ。しかも、納車順位は8番目で予定では5月下旬に生産が始まり、6月には納車できる見通しだという。最長では2023年に入ってからの納車となった人もいたそうで、それに比べたら予想以上の好結果だ。

◆当選が決まってから相次いで遭遇した予想外の出来事

が、ここで思わぬ事態が起きた。3月3日にカタログが届き、その内容をチェックしていくとHEVのZグレードとは異なる部分や、仕様が思っていたのと違っていた内容があちこちで発見されたのだ。

まずヘッドランプ。これはPHEVだけ“アダプティブ”となっていた。これは今どきの新型車なら標準装備であって欲しいだけに嬉しい誤算だ。しかし、ラゲッジスペースがHEVの410Lよりも小さい342Lとなっていたのにはがっかり(いずれもリアシート使用時)。車高を低くするためにバッテリーをフロアに収められなかったことが影響しているに違いない。HEVでもスペアタイヤを装着すると、ラゲッジのフロアがハイデッキタイプになるらしいが、どうもこれと同じになるようだ。一方でこの効果でリアシートを畳んだときはフロアがフラットになるという。

そしてサンルーフの仕様も営業マンからのアドバイスとは違っていた点だ。営業マンからは「ソーラー式サンルーフを選ぶとルーフが黒になるが、この生産の見通しが立っておらず、納車もいつになるかわからない。普通のパノラマサンルーフならオーダーはできるが、ルーフはガラスの部分だけがブラックになる」と聞いた。そこでガラスの部分だけが黒くなっているのも美しくないと思い、オプションから外していたのだ。しかし、カタログをよく見るとパノラマサンルーフでもルーフが黒くなるツートーン仕様となっていたのだ。

この一連を営業マンに質すと「我々もそこまでは知らなかった。それでも注文内容は変えられない」との回答。やはり実車も確認できないまま契約する行為は、わかってはいたけれどかなり危険であるのは間違いない。今回の事例がそれを物語っている。とはいえ、受注がはっきりしなければ生産計画が立てられないメーカーの事情も理解できる。今回は生産の不確実性を改めて実感したわけだが、せめて受注は実車が確認できる状態ができてから行うべきではないか。さらに言えば、発売日の設定がほとんど意味がなくなっているのもおかしな話だ。

そんな中で抽選で買う権利が当たった5代目プリウス。下取り車があるのと、用品での値引きが少し得られ、環境性能割もおそらく免税となるので、支払額は320万円ほどに落ち着きそうだ。とはいえ、フリーランスにとってこの金額の出費は結構な重荷となるのは確か。何とかお金をかき集め、念願の電動車に乗れる6月を今から心待ちにしたいと思う。

《会田肇》

【注目の記事】[PR]

編集部おすすめのニュース

特集