JR北海道、今冬の大雪対策…新千歳空港アクセスで関係機関と連携強化

2月6日来の大雪で千歳線平和駅(札幌市厚別区)で立ち往生した721系普通列車の前で懸命に作業を行なう除雪作業員。
  • 2月6日来の大雪で千歳線平和駅(札幌市厚別区)で立ち往生した721系普通列車の前で懸命に作業を行なう除雪作業員。
  • 「モロ(排雪モータカ―ロータリー)」と呼ばれる除雪機械と人力による除排雪作業が進められていた函館本線小樽駅構内。小樽駅では1週間近く札幌方面からの列車が発着しない事態に見舞われた。2022年2月22日。
  • 12月上旬まで新たに札幌圏の27か所へ設置が完了される予定の融雪装置。レールヒーターは函館本線と千歳線が分かれる白石駅でポイント不転換が多発していたため、同駅の6か所に追設される。
  • 2022年度は新たに2台が札幌圏に導入される除雪機械。GPSを搭載することで在線状況や作業状況の把握を行ないやすくする。
  • 自動式積雪深計と降雪カメラの概要。右は札幌圏に設置される20駅。
  • 北海道への応援要請の基準。
  • 新千歳空港とJRとの連携も強化される。写真は新千歳空港と千歳線の普通列車。
  • 新千歳空港アクセスにおける競合交通機関との連携。

北海道では降雪の便りが聞こえる時期になってきたが、2021年度の冬季に未曽有の大雪災害に見舞われたJR北海道は11月16日、今冬の大雪対策を明らかにした。

「モロ(排雪モータカ―ロータリー)」と呼ばれる除雪機械と人力による除排雪作業が進められていた函館本線小樽駅構内。小樽駅では1週間近く札幌方面からの列車が発着しない事態に見舞われた。2022年2月22日。「モロ(排雪モータカ―ロータリー)」と呼ばれる除雪機械と人力による除排雪作業が進められていた函館本線小樽駅構内。小樽駅では1週間近く札幌方面からの列車が発着しない事態に見舞われた。2022年2月22日。

JR北海道は大雪禍を受けて、社内に「令和4年2月札幌圏大雪による大規模輸送障害発生を踏まえた対策検討委員会」を設置し、外部有識者や社外機関などを交えた検証や改善策の検討を行ない、3月に中間報告を発表。6月には最終報告を取りまとめた。

それに基づいて今回発表された対策では「事前の除排雪の徹底」「積極的な情報収集と早めの運転手配」「除雪体制の強化」「情報提供の品質向上」「他の交通機関との連携強化」という5つの改善策を挙げている。

「事前の除排雪の徹底」では、降雪カメラや自動式積雪深計を札幌圏の20駅に設置し、構内の降雪・積雪状況を把握。除雪計画の策定に活用するとともに、ポイント不転換対策として12月上旬までに札幌圏にマットヒーターを11か所、レールヒーターを16か所設置するとしている。

自動式積雪深計と降雪カメラの概要。右は札幌圏に設置される20駅。自動式積雪深計と降雪カメラの概要。右は札幌圏に設置される20駅。
12月上旬まで新たに札幌圏の27か所へ設置が完了される予定の融雪装置。レールヒーターは函館本線と千歳線が分かれる白石駅でポイント不転換が多発していたため、同駅の6か所に追設される。12月上旬まで新たに札幌圏の27か所へ設置が完了される予定の融雪装置。レールヒーターは函館本線と千歳線が分かれる白石駅でポイント不転換が多発していたため、同駅の6か所に追設される。

「積極的な情報収集と早めの運転手配」では、気象予報会社からの情報収集を強化。収集する予報範囲をこれまでの24時間先から72時間先まで拡大すること、予報区間の細分化、3時間ごとに情報更新することなどが盛り込まれている。また、駅や本社においては降雪・積雪状況を定量的・即時的に把握。構内状況を一定時間ごとに駅と乗務員が共有。乗務員と列車指令とは運転状況や天候状況を積極的に共有し、きめ細かな運転手配に努めるとしている。

「除雪体制の強化」では、2022年度に除雪機械を千歳線千歳駅(千歳市)に1台増備。札沼線(学園都市線)当別駅(当別町)では老朽化した1台を置き換えるとしている。一方で、日本建設業連合会からの協力を受けて除雪の応援体制を整備するとともに、北海道にも北海道雪害対策連絡部会議を通じて応援を要請することで、早期の運転再開に努めるとしている。

北海道への応援要請の基準。北海道への応援要請の基準。

「情報提供の品質向上」では、除雪機械にGPSを内蔵した専用端末を搭載し、在線位置や除雪作業の進捗状況を把握することでより正確な情報を発信。利用者に対しては曖昧な表現による情報提供を見直し、より具体的な日時を表記。見通しが立たない場合もその旨を発表するとしている。

2022年度は新たに2台が札幌圏に導入される除雪機械。GPSを搭載することで在線状況や作業状況の把握を行ないやすくする。2022年度は新たに2台が札幌圏に導入される除雪機械。GPSを搭載することで在線状況や作業状況の把握を行ないやすくする。

さらにウェブサイトでは運行情報にお知らせ欄を設置するとともに、各駅の発車時刻表には運休列車を分かりやすくするため、時刻の部分を×印(全区間運休)や□印(部分運休)で括る工夫もなされる。Twitterによる情報提供もより細かに行なうとしており、2024年1月からは列車走行位置や詳細情報の提供も開始する予定。

「他の交通機関との連携強化」では、2月23日に新千歳空港駅(北海道千歳市)で7000人の利用者が滞留する事態に陥ったこともあり、新千歳空港アクセスを念頭に、空港を運営する北海道エアポート(HAP)とJR北海道との間にホットラインを設置。空港内にある情報共有システム(CDM)を活用し、JR北海道からも運行情報を提供するとしている。

新千歳空港とJRとの連携も強化される。写真は新千歳空港と千歳線の普通列車。新千歳空港とJRとの連携も強化される。写真は新千歳空港と千歳線の普通列車。新千歳空港アクセスにおける空港管理会社との連携。新千歳空港アクセスにおける空港管理会社との連携。

また、千歳線に重大な輸送障害が発生するおそれがある場合、競合する交通事業者である北海道中央バスや北都交通に対して、見込みの時点で情報提供するとしている。

新千歳空港アクセスにおける競合交通機関との連携。新千歳空港アクセスにおける競合交通機関との連携。

このほか、札幌圏の駅で効果的に夜間の除雪作業を実施するため、2023年1月7・14・21・28日、2月4・11・18・25日の深夜から翌早朝にかけて、函館本線や千歳線、札沼線(学園都市線)で計5本の列車を計画的に運休するとしている。

1・2月の土曜夜から日曜朝にかけて計画運休される列車。1・2月の土曜夜から日曜朝にかけて計画運休される列車。

JR北海道ではこれらの対策を通して「改善策それぞれの効果を発揮させ、冬でもお客様に安心してご利用いただける輸送サービスの提供を目指します」としており、今冬の対策効果を2023年春以降も検証し、次年度以降の対策に活かす方針。

9月頃から札幌駅に掲げられていた除雪作業員募集のポスター。9月頃から札幌駅に掲げられていた除雪作業員募集のポスター。


《佐藤正樹》

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