「あおり運転」は増えた?減った? データで見る現状と「あおられない運転」のすすめ

あおり運転(イメージ)
  • あおり運転(イメージ)
  • ドライブレコーダーに映るあおり運転(イメージ)

情報番組やニュースで、連日のように交通トラブルの模様を収めたドライブレコーダーの映像が放映されるが、それらはいわゆる「あおり運転」に関するものがほとんどだ。2020年6月30日に妨害運転罪が施行され、厳罰化されたにもかかわらず、悪質運転は減っていないのか。

そこで、警察庁が発表する統計資料で、後方からの「あおり運転」に相当する車間距離保持義務違反の取り締まり件数の推移を確認してみた。まず、厳罰化の契機である東名高速での事故が発生した2017年には7133件。それが、2018年には1万3025件、その翌年には1万5065件に増加している。

それ以前はというと、2014~16年が9581/8173/7625件という推移だから、急激に増えたような印象だ。しかし、これには「あおり運転」という行為の違法性が周知されたことを受け、警察が取り締まり強化を図った影響が少なくないだろう。検挙件数が倍増したからといって、これが純粋に発生件数に比例しているとは言い難い。

また、2020年には厳罰化により1万3062件へ減少したと警察庁は広報しているが、これもあくまでも検挙数にすぎない。いずれにせよ、年間1万件以上のあおり運転的な危険行為が行われているということだけは、否定できない事実だ。

そもそも、ドラレコの普及で「あおり運転」が表面化したという側面もある。それ以前も、あおられた、進路を塞がれた、“ビックリブレーキ”を踏まれたなどという話はしばしば耳にしたものだ。いずれも危険運転として検挙対象となりうる行為だが、それを証明する映像を個人が記録していなかった頃は、犯人探しをあきらめることがほとんどだった。ドライブレコーダーに映るあおり運転(イメージ)ドライブレコーダーに映るあおり運転(イメージ)

だが、ドラレコ映像を用いて報道されることで、それが犯罪であるという認識が広がるとともに、「あおり運転」への自衛策としてのドラレコ装着が一般化し、通報や立件に及ぶケースが増えたと推測される。それがさらに報道されることで、「あおり運転」が今なお減っていないというイメージが形成されているのもまた否定できない。

なお、妨害運転罪施行から1年で、摘発件数は100件。車間距離保持義務違反の件数に比較すれば少なく感じるかもしれないし、今後の増減は未知数だが、現時点ではまだ「あおり運転」に巻き込まれる可能性があると考えて備えるのが得策だ。

むろん、理不尽な理由で妨害運転に遭うことが多いが、中には自身が交通違反に問われうる走行が原因となることもある。追越車線を走り続けたり、確認不足やウインカーを使わず車線変更をしたりして、あおられるという場合もないわけではない。

こうした事例は、運転中の後方確認を少し増やすだけで回避できることが多い。明らかな後方不注意での割り込みにヒヤッとした経験がないだろうか。それを他車に味わわせない配慮が、「あおり運転」回避はもちろん、自身の安全にもつながるのだ。

それでも、不幸にして悪質運転に遭遇してしまったなら危険のないよう回避し、停車を強いられたらドアをロックして通報し、決して車外に出ずに警察の到着を待とう。

<参考データ>
車間距離保持義務違反
令和2(2020)年 13062件(高速道路:11523件)行政処分件数:32件
妨害運転罪適用処分件数:6件
令和元(2019)年 15065件(高速道路:13787件)行政処分件数:52件
平成30(2018)年 13025件(高速道路:11793件)行政処分件数:42件
平成29(2017)年 7133件(高速道路:6139件)行政処分件数:6件
平成28(2016)年 7625件(高速道路:6690件)
平成27(2015)年 8173件(高速道路:7571件)
平成26(2014)年 9581件(高速道路:9033件)

令和2年6月30日に妨害運転罪施行、厳罰化、
~12月末で58件、~2021年6月末で100件適用

車間距離保持義務違反取締件数「前年同期比約20%減」
(R3.2.25 国家公安委員長記者会見)

《関耕一郎》

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