過疎地型Rural MaaS定額タクシーとは?…バイタルリード 代表取締役 森山昌幸氏[インタビュー]

2019年度の国土交通省の新モビリティサービス推進事業の先行モデル事業に選定された、島根県大田市で行われた過疎地型Rural MaaS実証実験が、定額(サブスクリプションモデル)タクシーを中心としたサービス内容であったことから注目されている。企画立案と全体統轄を担った株式会社バイタルリード代表取締役の森山昌幸氏に背景や内容を聞いた。

新しい地域交通をテーマに8名が登壇する無料のオンラインセミナーが1月18日に開催されます。詳細はこちら

利益率が低いデマンド乗合交通

---:過疎地域の交通課題について

森山氏:バイタルリードは、島根や広島の自治体に対して中山間地域の公共交通の計画策定事業を行っています。

人口が少ない地域では、2002年頃から定時停路線で赤字不採算路線のバスから、自治体が主体となり需要に応じて柔軟に運行するデマンド乗合交通に置き換わっていきました。バスよりも安く乗りやすいため住民から評価されました。

しかし、デマンド乗合交通は利益率が約5%と低いことが問題となりました。たとえば、自治体から事業者は500万円の運行委託料を受けて20万円の利益が出るような状態でした。

定額を受益者が支払って乗り放題にしたい

森山氏:デマンド乗合交通は利益が出にくく、持続性に欠くモデルであることが問題視されている一方で、自治体は高齢者の足の確保のための”保険”として残したいと考えるところが多いです。

バイタルリードは、デマンド乗合交通を利用する受益者が定額を払って乗り放題にするモデルにして、持続可能なデマンド乗合交通のモデルをつくりたいと考えました。

デマンド乗合交通の定額制の乗り放題モデルを実現させるためには、法律の適応させる必要がありました。可能性として挙がったのが2つ。1つは道路運送法の4条乗合、2つめは旅行業法を適応させる方法です。中国運輸局と相談しながら進めたところ2019年に1つ目の4条乗合で定額制乗り放題が可能となりました。さらにMaaSの補助金制度を適応させて実証実験を行うことにしました。

クルマの保有コストが無くなれば、可処分所得が上がるのではないか

---:過疎地型Rural MaaS定額タクシーの実証実験をはじめた、島根県大田市温泉津町井田地区の暮らしの課題は?

森山氏:井田地区は、世界文化遺産に登録された石見銀山が近くにある人口542人268世帯で高齢化率は54.6%の小さな地区です。クルマがないと生活ができないような地域で。この地域の家計で大きな支出は1人1台のクルマの所有費と子供の教育費です。たまに積雪があったり道路が凍結するためスタッドレスタイヤが欠かせません。高齢者の中にはクルマをあまり運転しないけれども、所有している場合もたくさんあります。

定額制タクシーの目的は高齢者の移動の確保ですが、さらにはクルマ1人1台の所有で家計を圧迫している状況を改善可処分所得を上げたいと考えました。また若者の働く場所の確保につながると考えました。

---:MaaSの実証実験の内容は?

森山氏:道路運送法第4条の許可を得た3,300円の区域内の定額制乗合タクシーです。バイタルリードが開発したシステムを活用しています。また地域活性に理解のあるタクシー会社に運行を依頼しました。スマートフォンアプリのシステムも用意しましたが、電話での依頼が大半です。会員は電話で配車依頼をかけて、タクシー会社のオペレーターが時間調整などを行いました。

また、救援事業も実験的に行いました。あまり知られていませんが、タクシーは運輸局に届け出をすると買い物代行ができます。タクシーメーターを倒しながら利用者が自身でスーパーに購入したい商品を伝えて、スーパーからタクシー会社に電話が入りタクシードライバーが代金を立て替えてスーパーに支払い、タクシードライバーはスーパーの品物を持って利用者宅に持って行って、品物を渡して代金をもらう仕組みです。

月に5~10日外出が増えた人が44%

---;MaaSの実証実験では、高齢者の外出は増えましたか?

森山氏:2019年11月12日のサービス開始時は14人の会員数からスタートしました。マイカーでの移動が主流の地域で苦戦はしました。しかし、月2~3名増えて2020年3月上旬には22名、1年後の11月には24名になりました。利用者の外出回数も増えて、2020年3月上旬時点で月に5~10日外出が増えた人が44%、3~4日増えた人が33%、1~2日増えた人が22%で楽しみの外出が増えたようです。

新しい地域交通をテーマに8名が登壇する無料のオンラインセミナーが1月18日に開催されます。詳細はこちら

《楠田悦子》

編集部おすすめのニュース

特集

おすすめのニュース