【ホンダ フィット 新型試乗】余裕の加速力を求めるなら「e:HEV」が良い選択…井元康一郎

加速感はのんびりだが、実は「すごい」

高速巡航時におけるロックアップのかかり

乗り心地のよさはハイブリッドに軍配

ホンダ フィットハイブリッド(NESS)
  • ホンダ フィットハイブリッド(NESS)
  • ハイブリッドNESSの標準装着タイヤサイズは185/55R16。銘柄は最近OEMを頑張っている感のある横浜ゴム「BluEarth-A」。
  • ダッシュボードの加飾はHOMEと異なり、ちょっとオシャレ・・・になっているはずなのだが、ダッシュボードのデザインがきわめて控えめで上面も低いため、あまり目に入らない。
  • ホンダ フィットハイブリッド(NESS)
  • ホンダ フィット 新型(NESS)
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ホンダのBセグメントサブコンパクト『フィット』の第4世代モデルを短時間テストドライブする機会があったので、ファーストインプレッションをお届けする。試乗したのは普及グレード「HOME」のガソリン非ハイブリッド仕様、プチお洒落志向のグレード「NESS」のハイブリッド仕様の2台。本稿ではNESSハイブリッドについて述べる。

加速感はのんびりだが、実は「すごい」

ホンダ フィット ハイブリッド(NESS e:HEV)ホンダ フィット ハイブリッド(NESS e:HEV)
第3世代フィットのプラットフォームを大規模改良する形で作られた第4世代フィット。そのシステムの中で最も大きな変更はハイブリッドパワートレイン。第3世代が出力22kWの電気モーター1個をデュアルクラッチ変速機に内装した「i-DCD」であったのに対し、第4世代は発電機と駆動用モーターが別体の2モーター式「e:HEV」。『アコードハイブリッド』や『インサイト』では「i-MMD」と命名されていたもののリネーム版である。

ハイブリッドは自動車工学の世界ではHEV(ヘヴ。ハイブリッド電気自動車の略称)と呼ばれており、EVのネーミングを嫌うトヨタのエンジニアでさえ専門的な会話においてはそう呼ぶ。なかなか理系チックな名前になったなと思いきや、読み方は「イーエッチイーブイ」なのだという。ホンダがこういう言いにくい呼び名を使うのは今回に限ったことではなく、ほとんどお家芸、企業DNAと言える。

実際に走ってみると、普段はエンジンの作動、非作動に関わらず電気モーターが駆動力のすべてをまかなうため、加速の段付きはほぼゼロ。フルスロットルをくれてやっても加速感はわりとのんびりした印象なのだが、実際の速度上りはリアルスポーツ以外のBセグメントとしては相当にすごい部類に入る。

フィーリング的には速度の乗り感が抜群だった第3世代のi-DCDのほうが断然速いように思ったが、Cセグメントのi-MMDモデル、『インサイト』が体感的にはそれほどでもなかったのに0-100km/h加速タイムを測ったらメチャ速だったことを思うと、第4世代フィットハイブリッドもそのパターンである可能性がある。

高速巡航時におけるロックアップのかかり

その2モーターe:HEVだが、過去に乗った『アコードハイブリッド』、『ステップワゴンハイブリッド』、インサイトに比べて制御的に進化していると思しき部分がいくつも見受けられた。そのひとつは高速巡航時におけるロックアップのかかり。

e:HEVは普段はエンジンで発電機を回し、得られた電力で駆動用モーターを回すシリーズハイブリッド運転を行うが、連続してパワーを出す必要がある高速走行時など一部条件下ではエンジンが直結状態となり、モーターがパワーアシストに回るパラレルハイブリッドモードになる。

これまでの搭載車は少しスロットル開度が大きくなるとロックアップが解除されて普通のシリーズ運転に戻るという感じだったが、第4世代フィットハイブリッドはそのロックアップの範囲がぐっと広がり、少々のスロットル開度の変化では解除されなくなった。速度の高い郊外の自動車専用道路や高速道路でより良い燃費を出しやすくなったのではないかと推察された。

オンボード燃費計値は高速、市街地、郊外路、そしていくばくかのワインディングロードを混ぜた73.6kmを走って27.1km/リットル。車両重量が1.2トンと、インサイトに比べて大人3人分くらい軽いこともあって、このくらいの数字は効率の良い走り方を特段意識しなくても出せるという印象だった。

乗り心地のよさはハイブリッドに軍配

ダッシュボードの加飾はHOMEと異なり、ちょっとオシャレ・・・になっているはずなのだが、ダッシュボードのデザインがきわめて控えめで上面も低いため、あまり目に入らない。ダッシュボードの加飾はHOMEと異なり、ちょっとオシャレ・・・になっているはずなのだが、ダッシュボードのデザインがきわめて控えめで上面も低いため、あまり目に入らない。
パワートレイン以外の部分だが、インテリアはガソリンのHOMEよりNESSのほうがハイグレードということもあって、色使いほかいろいろ頑張ってデコレーションしてあったが、第4世代フィットはダッシュボードの上面が今どきの量産車としては異例なほどに低く作られており、その頑張った意匠性があまり目に入らない。飾りのない最下位グレードのベーシックがかえって潔く見えたりするのもそのためだろう。

視界の良さ、室内への採光性の良さなどは同じだろう。荷室もガソリン車と同様に広く、これ1台あればオフロード以外、ほとんどの遊びをこなすことができそうだった。

ハイブリッドNESSの標準装着タイヤサイズは185/55R16。銘柄は最近OEMを頑張っている感のある横浜ゴム「BluEarth-A」。ハイブリッドNESSの標準装着タイヤサイズは185/55R16。銘柄は最近OEMを頑張っている感のある横浜ゴム「BluEarth-A」。
乗り心地はガソリンモデルより良かった。車両重量がガソリンより大きいためフラット感はもとより有利なのだが、高速道路で大きめの段差を乗り越えるときの突き上げなどハーシュネスカットもハイブリッドのほうが優位だった。

第4世代フィットはクロスオーバーSUVの「CROSSTAR」を除くとグレード間でのサスペンションの差はなく、チューニングはガソリンとハイブリッドの2種類なのだそうだ。走り込んでみないとわからないが、チョイ乗りの印象ではハイブリッドのほうが鷹揚な感じであった。

ガソリンとハイブリッド、どちらを買うべきか

ガソリンとハイブリッド、どちらを買うべきかという視点でみると、燃料コストの削減という意味ではガソリン車もそこそこ良い燃費だっただけに、それだけでプラス35万円に見合うベネフィットは得られないだろう。圧倒的な差があるのは動力性能で、余裕しゃくしゃくの加速力を求める顧客にはe:HEVは良い選択肢になりそうに思えた。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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