【池原照雄の単眼複眼】マツダ、CX-30 のけん引で生産・販売が堅調に回復…先手の在庫調整も6月末にほぼ完了

マツダ R360クーペ と CX-30 100周年特別記念車
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6月の米国販売は10.9%増と日本メーカーで唯一プラスに

自動車各社がコロナ禍からの事業再建に懸命の取り組みを進めているなか、マツダの販売や生産の回復が比較的堅調に進んでいる。

最大の販売先である米国では、6月の販売が前年同月比10.9%増と日本メーカーでは唯一前年実績を上回った。2番目に依存度の高い中国も6月まで3か月連続でプラスになった。けん引するのは2019年10月に日本から投入が始まった新型SUVの『CX-30』だ。併せて、経済危機時の自動車メーカーには不可避となる在庫の適正化も着実に進んでいる。

マツダの今年の米国販売は、1月に前年同月比17.8%増、2月は19.0%増と、月次販売では「過去最高レベル」(グローバルマーケティングなどを担当する梅下隆一執行役員)でのスタートとなった。年初に投入したCX-30と、マツダでもっとも大きなサイズのSUVである『CX-9』が好調に推移した。しかし、最多時には全米の85%の販売店が休業した3月と4月の販売は40%強の減少に沈んでしまった。

そこから6月はプラスに浮上し、1~6月の上期では前年同期比7.0%減の12万8869台まで戻している。6月の米国での日本メーカーの実績はトヨタ自動車が26.7%減、ホンダが15.5%減などと苦戦が続いているだけに、マツダの健闘ぶりが目立つ。同社によると、前年同期にはなかったCX-30の純増、さらに依然としてCX-9の好調が寄与しているという。また「6月末には、ほぼすべての販売店が営業を再開できた」(国内広報部)ことも復元につながった。マツダCX-9(北米仕様)マツダCX-9(北米仕様)

2月に休止状態だった中国は上期で8.5%減まで回復

中国も新型コロナの影響で2月の販売が79.0%減と大きく落ち込んだものの、4月からは前年実績を上回る回復となっている。5月には中国にもCX-30が投入され、同月の販売(全モデル)は31.6%増、6月は7.3%と推移した。1~6月では前年同期比8.5%減の9万7330台と、ほぼ休止状態だった2月の販売状況を勘案すると、持ち直しは力強い。

また、日本は1~6月の販売実績が13.9%減の8万9348台となり、米国や中国よりマイナス幅は大きかった。ただ、日本の全需の落ち込みは19.8%なので、米国や中国と同様に市場動向を上回るセールスはできている。

一方、需要が激減する危機時は、在庫への迅速な対応が業績への衝撃を緩和させるポイントとなる。マツダは中国から米国へと需要の急落が広がった3月下旬に、まず国内工場で計13日間、海外(メキシコ、タイ)は約10日間の操業休止を打ち出した。その後も市場と在庫の状況をにらみながら、適時追加措置を講じた。業界でも休止期間は長めで、その決定もスピーディだった。マツダ3マツダ3

7月から国内工場は2直復帰で通常稼働に

自動車各社は2008年のリーマン・ショック時に、総じて在庫調整で後手を踏み、多くが赤字転落という苦い経験を踏んだ。マツダも例外でなく、過剰在庫は急激な円高とともに、09年3月期から4期連続で最終赤字に陥る一因ともなったのだ。5月中旬の決算発表の際、古賀亮専務執行役員は、販売領域で早急に取り組む課題として「インセンティブを抑制しながら販売を進め、高まった在庫の絶対量を改善させる」との方針を強調していた。

CX-30の貢献もあって、在庫は「6月末時点でほぼ正常化した」(国内広報部)という。このため、7月1日から宇品第1・第2工場(広島市)と防府第2工場(山口県防府市)の操業を1直から2直に復帰させた。残る防府第1工場(同)も7月27日から2直とし、国内は全面的に通常稼働に復帰する。海外も順次生産を戻しており、7月の国内外の生産は前年同月の8割程度まで回復する見込みだ。

もっとも、米国では足元の新型コロナウイルスへの感染者がなお拡大傾向にあり、世界で「第2波」への備えが必要となっている。マツダは車両在庫を、工場・洋上・港頭・販売店の各段階で「パイプライン」として把握する管理手法を採り入れており、今後も眼を光らせていく。また、新戦力であるCX-30の貢献は大きいものの、2本柱である『CX-5』と『マツダ3』の1~5月のグローバル販売は、いずれも前年から3割強の落ち込みとなっており、そのテコ入れも急務だ。

《池原照雄》

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