「道路運送車両法」改正のポイントを解説

道路運送車両法改正のポイントを解説します
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2019年に改正された道路運送車両法と道路交通法の自動運転に関する規定が、2020年4月1日に施行されました。

前回のコラムでは道路交通法の改正のポイントを解説しましたので、今回のコラムでは道路運送車両法の改正のポイントを解説します。この改正には大きく5つの改正点があり、そのうち4つが自動運転に関係しています。


この4つのポイントについて順番に解説します。

自動運行装置を保安基準の対象としたこと


ひとつ目のポイントは、「自動運行装置」を定義する規定を設け、「自動運行装置」を保安基準の対象としたことです。この点は、今回の改正で一番大きなポイントです。

道路運送車両法は、自動車の様々な装置に関して、その装置が満たしておくべき技術的な基準を定めています。

これを「保安基準」と言います。

道路運送車両法では、この保安基準をクリアしている自動車でなければ運転してはならないと決められています。

ただ、これまでは「自動運行装置」、つまり自動運転システムについてはこれを定義する規定はなく、自動運行装置に関する保安基準の規定もありませんでした。

今回の改正では、新たに「自動運行装置」を定義する規定が設けられて、自動運行装置も保安基準の対象とされることとなりました。

国土交通省は、この道路運送車両法の改正を受けて具体的な保安基準を策定しており、その具体的な保安基準も2020年4月1日に施行されました。

電子的な検査に必要な技術情報の管理


警告灯が点かなければ車検も通るでしょ、などというのはもう昔の話

ふたつ目のポイントは、電子的な検査に必要な技術情報の管理に関する規定を整備したことです。

これまで電子的な検査は、警告灯の確認等の簡易な方法でしか行われていませんでした。しかし、自動運行装置については、電子的な検査を本格的に行っていく必要があります。

そこで、今回の改正では自動車技術総合機構という独立行政法人が、電子的な検査に必要な技術情報の管理を行うことになりました。

この改正を踏まえて、今後、車載式故障診断装置(OBD)を活用した電子的な検査を行うための制度が構築されていくことになります。

「分解整備」から「特定整備」への名称変更・範囲拡大、メーカーから整備事業者への技術情報の提供の義務付け


3つ目のポイントは、「分解整備」から「特定整備」への名称変更・範囲拡大と、メーカーから整備事業者への技術情報の提供を義務付けたことです。

まず、これまで道路運送車両法は自動車の整備のうち、とくに安全性に大きな影響のある整備等を「分解整備」とし、整備事業者が「分解整備」を行うためには認証を受けなければならないこととしていました。

今回の改正では「分解整備」を「特定整備」という名称に変更するとともに、自動運行装置の整備等も「特定整備」の対象とすることとしました。

これによって、整備事業者が自動運行装置の整備等を行うためには認証を受けなければならないこととなりました。

次に、これまではメーカーが整備事業者に技術情報を提供することは義務付けられていませんでした。今回の改正で、メーカーは特定整備を行う整備事業者等に対し、点検整備に必要な技術情報を提供することが義務付けられました。

プログラムの改変による改造等に関する許可制度


4つ目のポイントは、プログラムの改変による改造等に関する許可制度を新設したことです。

これまではプログラムの改変による改造といったことは想定されていなかったため、そのようなことに関する規定は置かれていませんでした。

しかし、今後は自動運行装置等に組み込まれたプログラム等のアップデートやバージョンアップによる改造ということが行われることが想定されます。しかも、有線ではなく無線によって改造することも想定されます。

今回の改正では、このような改造が適切に行われるようにするため、プログラムの改変等を行うためには許可を受けなければならないという許可制度が新設されました。


自動車の安全性の維持のために


運転における「認知・予測・判断・操作」は,レベル2以下ではもっぱら運転者(人間)が行っていましたが、レベル3以上ではシステムがこれを担う場面が出てきます。

そのため、今後は点検・整備や検査といったメンテナンスを適切に行って自動車の安全性を維持していくことが今まで以上に重要になってきます。

今回の改正では,メンテナンスの充実を図るための改正点も盛り込まれています。

このような改正を踏まえて、今後、より一層メンテナンスを充実させ,自動車の安全性を維持していくことが望まれます。


〔特定整備制度概要〕https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001332203.pdf

《SIP cafe》

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