【独占試乗】スバル『WRX STI』ニュル24時間参戦車は「恐ろしいほど乗りやすかった」

スバル WRX STI 2016年ニュルブルクリンク24時間耐久レース参戦車両に独占試乗!
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去る2月26日、スバルテクニカインターナショナル(STI)は2020年のレース参戦車両のシェイクダウンを富士スピードウェイで実施。そこで今回レスポンスは、2016年のニュル24時間耐久を戦った『WRX STI』に独占試乗するという機会を得た。ステアリングを握ったのはレーサー/モータージャーナリストの桂伸一氏だ。

シェイクダウンをおこなう2020年車両たちとともに、レスポンスのためだけに2016年モデルを富士スピードウェイに持ち込んでもらった。もちろんメンテナンスもバッチリ、全開走行が可能な状態でだ。

桂氏はニュル24時間を知る男であると同時に、STI総監督の辰己英治氏とはかつて共にレースを戦った盟友でもある。2016年モデルの試乗から、2020年モデルの実力を計り知ることはできるか。

桂氏による試乗インプレッションをお送りする。

あれから31年!

STI総監督の辰己英治氏(左)と桂伸一氏STI総監督の辰己英治氏(左)と桂伸一氏
1989年初代『レガシィ』は市場デビューとほぼ同時にレース活動も開始した。スバルチューナーとして有名な「プローバ」がレガシィをN1レース仕様(現在のスーパー耐久シリーズ)に造り上げたそれは、当時の4WDとしては驚くほど軽快な動きとアンダーステアが少なく曲がり易いハンドリングに驚いた。

翌90年に『GT-R』がデビューするのだが、レガシィの水平対向4気筒2リットルターボに対して直列6気筒2.6リットルターボで上回るから当然、絶対的なパフォーマンスでは向こうが上。だがレガシィはハンドリングで勝る。当時本気でGT-Rを喰ってやるつもりでレースを戦った。ウエットになればエンジン差はなくなる。ところがそういう時に限って雨は降らず、結局、打倒は叶わなかった。

ドライバーは当時スバルの車輌実験で開発テストをし、自身ではレガシィでダートトライアル競技に出場していた辰己英治さん(現STI総監督)とのコンビ。

あれから30年いや31年!! ふたりともオッサンを通り越したが、スバルのニュルブルクリンク24時間レースに携わる辰己さんと、同じくニュルだけはドライバーとして出場し続けたいと画策する桂も、ニュルでの成功を目指すと言う意味で意識は同じだ。

2016年のニュル24時間クラス優勝車に試乗

スバル WRX STI 2016年ニュルブルクリンク24時間耐久レース参戦車両
スバルの2020年ニュル挑戦モデルNBRチャレンジの公開テストの日。ニュル仕様車と市販車の因果関係はどうなのかを検証すべく、そこにかねてからお願いしてあった2016年のニュル24時間クラス優勝車に試乗する事が許された。

「基本はこの進化版ですよ」

この、とは16年モデルの事。つまり「20年モデルのフィーリングも想像できますよね!?」という意味である。

与えられた周回は5ラップ。スタート直前に路面がまだ濡れていると言う事で、ウォーマーに掛けられていたスリックタイヤから、浅溝のインターミディエイとタイヤに交換される。20年モデルで慣熟走行を行なったインターミディは発熱十分で即全開走行可能の状態。

スバル WRX STI 2016年ニュルブルクリンク24時間耐久レース参戦車両
「ニュル仕様のハイギヤ(ファイナル比が)なのでスタートに注意(難しいので)して下さい」。ま、レースカーのクラッチは往々にしてスパッとダイレクトに繋がり、難しいものだが、STIのSシリーズに乗る感覚でミートする瞬間の感触に注意したが、クラッチ操作に造作なく、半クラからスムーズに発進できる。シフトは6速シーケンシャル。前に倒してシフトダウン、後ろに引いてシフトアップ。ダウンはクラッチを踏むが、アップは引けば良い、と言われたが、癖でクラッチを踏んでしまう。

コースインして左右にウエービングする。身を捩るようにして驚くほど良く曲るこの感覚は速度が上がると変化するのか、しないのかが気になる。それにしてもハンドル操作に忠実に、いやそれ以上に呆気ないほど曲る印象のグリップ感は、規準となる標準車の上を行く。

スバル WRX STI 2016年ニュルブルクリンク24時間耐久レース参戦車両

スピンさせる事すら難しい操縦安定性の持ち主

ま、それはレースで仕様するFALKENタイヤのグリップ性能によるところも大きい。溝付きのインターミディでこのレベルだから、スリックタイヤで、富士SWなら、転舵する舵角はほんとうに少ないだろうなと想像できる。

結果としてそれは、速度が上がっても変わらなかった。一応、コクピットの各種スイッチの使用方法は伝授された。ABSとトラクションコントロールの強弱。フロント、リアのLSDの効きは標準車よりも低いレベル。センターデフのコントロールも標準車と同様だが、その拘束力もかなり低め。20年モデルはほぼフリーに近い状態だと言う。

それを可能にするのはタイヤのグリップ力による部分が最大。前後の駆動配分は41対59とリア寄り。曲がりやすさのひとつの要因でもある。

コースインすると同時に、スリックだった!! と直感の路面状況はどんどん乾く。4周目には発熱からタイヤ表面のゴムのヨレが感じられたので、わずかに残るウエット部分を走行するが、効果は? それでもこの切れば曲る前輪の特性に後輪もしっかり接地して駆動力を伝え続ける。おそらくスピンさせる事すら難しい操縦安定性の持ち主だ。

ニュルのコースを思い浮かべて、この特性なら、あそこ、あそこのコーナーは楽だろうなあ、と想像できる。

市販モデルとの大きな違いはブレーキの効き味

スバル WRX STI 2016年ニュルブルクリンク24時間耐久レース参戦車両
わずか5周はあっという間に終わった。各種調整機能はあるものの、まずは既に実績のある基本設定のまま走行して、これで気になる部分は何もない。

エンジンはニュルブルクリンクの規定でAWDはより厳しいハンデキャップが与えられて、エンジンの吸入空気量を制限するエアリストリクターは37パイに絞られる。およそ340psほどの特性は引っ張っても6400rpmで頭打ち。その前に回転を示すインジケーターが6100rpmでレッドが点灯。いやでもシフトアップするしかない。ここは標準モデルのほうが回転とともにトルクもパワーも盛り上がり刺激的である。

トルク型エンジン特性とヒューランド製ニュル仕様ドグミッションは、独特のギヤ鳴りが室内に響き渡る。各ギヤは3速160、4速200、5速240km/hで一瞬6速と、メーターに表示されたと記憶する。

スバル WRX STI 2016年ニュルブルクリンク24時間耐久レース参戦車両
曲る特性とともに驚きはブレーキ性能だった。市販車ベースとは言え、本格的なレーシングマシンから遠ざかっている者に、ブレーキの効き味は感覚が違う。言えば、純レーシングマシンのソレとは違い、サーボが効き過ぎたブレーキの様に、踏み始めから締め上げるように急減速してしまう。

富士SWのストレートエンドは第一コーナーまでの距離を示す看板が左手に200、150、100、50とあるが、そこで桂は標準モデルと同じように200m看板からフルブレーキング。と、コーナーの遥か手前で止まり、再度加速しながらコーナーへ。現役ドライバーと比較して目が覚めた。彼らは100m奥、100m看板からブレーキング開始で十分なのだと知る。

20年モデルはさらに「乗りやすく」なっている

スバル WRX STI 2020年ニュルブルクリンク24時間耐久レース参戦車両スバル WRX STI 2020年ニュルブルクリンク24時間耐久レース参戦車両
16年モデルのNBRでこの乗りやすさである。それこそサーキット走行の経験があれば誰でも乗れて、速く曲れる。市販型があってもいいくらいで、「スバル製GT4」なんてどうか、とも思う。スバルが目指しているのはまさにここだろう。走りやすくて速くて壊れない極めてタフな市販車技術と、それをさらに上回るレースカー技術。双方が上手くまとめあげられている事がNBRの試乗で理解できた。 

20年のNBRはさらに乗りやすく、リストリクターも16年当時よりは緩和されたという。

ニュルブルクリンク24時間レースの過酷さを知る者のひとりとして、ドイツメーカーのお膝元で戦う事の厳しさ難しさ、連覇、連覇と外野は軽く口にするが、苦々しく思っているドイツ勢とその他を相手に孤軍で本当に良く戦っている事を判って欲しい。

その上で、可能な限り上位での戦いを期待したいがそこはレースだ。去年こうだから、今年うまくすればその上を!? …思う様に行く時もあれば、たいがいはうまく行かないのが勝負の世界。でも期待しつつ見守ろうではないか。

桂 伸一|モータージャーナリスト/レーシングドライバー
1982年より自動車雑誌編集部にてレポーター活動を開始。幼少期から憧れだったレース活動を編集部時代に開始、「走れて」「書ける」はもちろんのこと、 読者目線で見た誰にでも判りやすいレポートを心掛けている。レーサーとしての活動は自動車開発の聖地、ニュルブルクリンク24時間レースにアストンマー ティン・ワークスから参戦。08年クラス優勝、09年クラス2位。11年クラス5位、13年は世界初の水素/ガソリンハイブリッドでクラス優勝。15年は、限定100台のGT12で出場するも初のリタイア。と、年一レーサー業も続行中。

《桂伸一》

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