交通事故の捜査・調査におけるデータの活用…自動運転の実用化へ向けて

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交通事故の捜査・調査におけるデータの活用
  • 交通事故の捜査・調査におけるデータの活用
事故の原因が運転者にあるのか、システムにあるのかを明らかにする。自動運転実現に向けて、課題はいろいろなところにある

交通事故の捜査・調査においてデータがますます重要になる


自動運転車の実用化に伴い,交通事故の捜査・調査における証拠も大きく変わっていくことが予想されます。


今回は、交通事故の捜査・調査における証拠の変化と、データの活用の重要性について考えてみたいと思います。


これまでの証拠


交通事故の原因を明らかにするためには、交通事故のときの車両等の位置や車両の速度等を明らかにしていく必要があります。


そのために、交通事故の捜査・調査においては、事故現場の状況、タイヤの痕や落下物の状況、車両の損傷の状況等といった客観的証拠を収集し、吟味していきます。


それとともに、加害者、被害者、目撃者等から、事故の状況を聴き、客観的証拠と照らし合わせつつ、供述の信用性を十分吟味しながら事故の状況を明らかにしていきます。


これまでの交通事故の捜査・調査においては、客観的証拠に加えて、これら関係者の供述も、重要な証拠でした。


自動運転車の実用化に伴う変化


しかし、自動運転車の実用化に伴い、証拠に関して大きくふたつの問題が生じます。


第1の問題は、関係者の供述が乏しくなるという問題です。


レベル3以上の自動運転車の実用化に伴い、ドライバーが周囲を見ていない状況での事故がこれまで以上に増えていくことが予想されます。そのため、事故状況を加害者等から聴くことができなくなります。


第2の問題は、事故原因がドライバーにあるのかシステムにあるのかの特定が必要になるという問題です。


これまでは、例えば、車両対車両の事故の場合、どちらの車両のドライバーに過失があったかということを明らかにすれば足りました。しかし、レベル3以上の自動運転車が実用化されると、どちらの車両が悪かったのかを明らかにした上で、それに加えて、交通事故時にその車両を操作していたのがドライバーなのかシステムなのかということを明らかにする必要が出てきます。


このようなふたつの問題に対処していくためには、交通事故の捜査・調査において、関係者の供述に代わる証拠として、データを活用していくことが重要になります。


データ装置の種類


事故状況を明らかにするために活用できる装置としては、ドライブレコーダー EDR(イベントデーターレコーダー) OBD(車載式故障診断装置)  DSSAD(データ・ストレージ・システム・フォー・オートメイティッド・ドライビング)があります。


ドライブレコーダーは、既に多くの車両に取り付けられ、交通事故の捜査・調査でも活用されています。ドライブレコーダーは、車両の内外の映像によって、位置関係や車両の動き等を明らかにできます。


また、システムの作動状態、車両の速度、加速度等をより正確に把握するにはEDRというデータ装置の活用が有用です。ただEDRは、衝突の程度によってデータが保存されないという限界があり、万能ではありません。また、EDRのデータ分析をするためには、高度の専門知識を要するため、EDRを広く事故の捜査・調査に活用していくためには、人材育成を進めなければならないという課題があります。


その他の装置としては、OBDという故障診断装置があります。これは電子装置に故障がないかを調べる装置であり、今後、車両の検査等において活用されることになっています。今後は、交通事故の捜査・調査においてもシステム等に故障がなかったかを調べるため、OBDも活用していくことになると思われます。


さらに、現在、DSSADという自動運転車のためのデータ装置に関し、国際的には国連のWP29という会議体において、国内的には国土交通省等において、検討が進められています。


今後の課題


データの活用は、プライバシーの問題や車両コストの問題にも配慮していく必要があり、単純な問題ではありません。


しかし、自動運転車が実用化されるに当たっては、その安全性が確保されていることに加えて、万が一交通事故が起きたときに、事故原因を明らかにでき、法的責任を適切に問えることが必要です。そして、そのためには、客観的な証拠であるデータの活用は不可欠です。


自動運転車の実用化に当たっては、適切なデータ活用ができるような法整備が望まれます。

交通事故の捜査・調査におけるデータの活用

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