【スズキ ハスラー 新型】タフネスとプロテクト感を表現…インテリアデザイナー[インタビュー]

スズキ・ハスラー新型
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スズキは軽SUVの『ハスラー』をフルモデルチェンジ。1月20日より発売を開始する。そのエクステリアデザインはキープコンセプトだが、インテリアは大きく変更された。その理由についてインテリアデザイナーに話を聞いた。

アウトドア用品の持つタフさを表現

----:ハスラーのデザインを見ると、エクステリアはキープコンセプトで、先代の要素を取り入れ、一目でハスラーとわかります。一方、インテリアはガラッと変わりましたね。

スズキ四輪商品第一部チーフエンジニア課長の竹中秀昭さん(以下敬称略):はい、インテリアはいくつか案がある中でこのデザインが一番チャレンジングで、かつ一番難しくもありました。それでもインテリアはこれで行こうと決めました。

他の案でも色々良いものはありましたが、それらは今後出てくるクルマでも可能だと思えるところがありましたが、このインテリアデザインはハスラーのチャレンジングな性格を考えるとベストマッチだと判断しました。

----:造形的にも大きな変化です。

スズキ四輪技術本部四輪デザイン部インテリア課長の村上俊一さん:変えたくて変えようという意図は特にありませんでした。当然モデルチェンジですから色々なスケッチをデザイナーが提案します。その際にアウトドア用品の持つタフさや力強さ、機能性をうまくデザインのモチーフに使いたいという話はしていました。そこが普通のセダンや軽のハッチバックなどとは一線を画すところですから。

そういったアウトドア用品が持つポイントのひとつがプロテクション性能です。そこでタフさとプロテクト感をスタイリングのモチーフのひとつの柱にしました。インパネにはメーターとナビ、収納と大きく3つの機能があります。それらをゾーニングしてそれぞれをプロテクトしているということをモチーフにしました。そのうえで、バラバラにしてしまうと煩雑になってしまうのでしっかり上下のバーで貫いて挟み込んだのです。

実はそのスケッチを最初に見た時には奇抜な絵にしか見えませんでした。しかしそのアイディアの裏にあるプロテクトの考え方を聞くとなるほど納得したのです。しかもパッと見のインパクトはありますから、このアイディアは面白い、ハスラーというキャラクターに理に適ったテーマではないかと思いました。

先代のカラーパネルを通す案も並行して開発していましたが、見比べた時にこちらの新しいアイディアの持っているポテンシャルが非常に高かったので、これで行くことに決めたのです。

----:それぞれの機能を持たせてプロテクションをしながら3つを分けて見せるというのはアイディアとしてはすごく面白いですが、まとめるのがとても大変そうですね。

村上:すごく大変でした。テーマとしてはシンプルですが、だからこそとてもまとめにくかったですね。よく見てもらうとわかるのですが、みんな同じようで実は大きさや形が少しずつ違っています。

メーターは下側が他とは違っていたり、収納側はリッドとして開くのでよく見ると形が違ってもいます。しかしなるべく同じように見せたいというバランスを取り、さらにこの3つを配置して縦のベンチレーションを四つ綺麗に均等に並べてもいます。

そして上下にパイプを通してつなげて見せたいのですが、そのパイプにはカップホルダーなど邪魔する要素もあるのです。上下のパイプと相関する部分、例えば運転席側のカップホルダーなどの部分でただ単にスパッと切り落してしまうと、本当は貫きたかったのに切り欠きを作ってしまったように見えてしまうでしょう。そう見えないように造形的にまとめ上げるはすごく難度が高かったのです。

また、特に苦労したのは真ん中のナビをまとめるところで、スズキとしては初の9インチ標準ナビゲーションを開発しましたが、このサイズが大きいのです。スクリーンの四隅がハードポイントとなるので必然的に丸の大きさが決まってしまいますが、真円でまとめてしまうと上下方向の関係が厳しくなったりするので、円でもアールもなくカーブでまとめました。それとほかの2つとを反復して見せるバランスが苦労したところです。

----:そうすると最初は9インチナビのところからデザインを始めたのですか。

村上:アイディアスケッチの時はそこまで深くは考えていませんでしたが、1/1でまとめていこうとすると一番ネックとなるのは9インチでしたので、そこをレイアウトした後にそれをメーターに置き換え、収納に置き換えて、それぞれ均等に見えるか、またベンチレーションを入れると軽の幅で収まるのかという検証から始めました。

色の楽しさをアピール出来るのがハスラー

----:ドア周りのカラーコーディネートも凝っているようですね。

村上:ハスラーといえば色で遊べる、色の楽しさみたいなものがアピール出来るクルマですから、内装でもインパネだけでなく、色々なところに色を散りばめています。

インパネのカラーパーツとドアトリムのカラーパーツをよく見るとハスラーの“H”文字をモチーフにしています。それからシートのアクセント材とシフトコンソールのカップホルダーあたりの色は全て統一しており、バーミリオンオレンジの場合は全てオレンジ、デニムブルーの場合はいずれもデニムブルーにコーディネートしています。

----:このクルマに関しては似合っていますね。もしこれをジムニーで行ったら“?”となってしまうでしょう。

村上:確かにその通りで、なんだかんだいってもワクワクしてほしいとか遊び心を感じてほしいというのがハスラーのポイントです。

ユーティリティへのこだわり

----:そのほかインテリアでこだわったところはありますか。

村上:どうしてもこのデザインを見ると奇抜な形や見たことがないインパクトの方に目がいってしまいますが、日常で便利に使ってほしいと、機能性やユーティリティにすごくこだわりました。

例えば左側のアッパーボックスの容量は先代よりもかなりアップさせており、テーブルとしてもしっかりと使えて、隣に引き出し式のカップホルダーを置いて簡単な食事が出来るように追求しています。逆に運転席のカップホルダーは、運転中にスマホを置いておきたいとか、ポケットとしても使いやすいという意見もありましたので、据置式にしました。

そのカップホルダーにはスリットを入れています。例えばここにG-SHOCKなどのベルトを通して時計を取り付けたり、お気に入りのカラビナなどをひっかけたりなど、ちょっとしたユーザーの工夫で自由に使ってもらいたいという想いを込めたスリットなのです。

そのほかにも先代のベンチシートを廃止し、その代わりにセンター部分に紙パックまで対応出来るカップホルダーを運転席、助手席のどちらからも使える位置に配したり、ここにもトレーを置いてオプション用品で色々ものがセット出来るようにしてあったり、実用的な部分を追求して、結構細かいところまでユーティリティにはこだわりました。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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