異なる世界、MotoGPとEWC…LCRとTSRのチームマネージャーが語る

チェッキネロ(向かって左)と藤井
  • チェッキネロ(向かって左)と藤井
  • LCRホンダチーム(2019年)
  • チェッキネロ(向かって左)と中上
  • F.C.C TSR Honda France(2019年)
  • ボルドール24時間耐久(2019年)。ピットクルー中央、銀のヘルメットが藤井。
  • クラッチロー(Honda Racing Thanks Day 2019)
  • F.C.C. TSR Honda France、EWC 2019-20シーズン第2戦マレーシアで13位。

ルーチョ・チェッキネロと藤井正和は、それぞれMotoGP(モトGP)とEWC(世界耐久選手権)という、モーターサイクルレーシングの世界最高峰シリーズで活躍しているチームマネージャーだ。お互いのチャンピオンシップについて思っていることを語り合った。

2人は25年間以上にわたり友人として交流を続けているが、それぞれのカテゴリーで大きな成功も収めている。

チェッキネロは2003年に現役を退くと、2004年からは自身のチームLCRをマネジメントする立場となった。2006年からLCRホンダチームでMotoGPに参戦、カル・クラッチローが通算3勝している。現在はクラッチローと中上貴晶のチームマネージャーを務めている。

一方の藤井は、TSR(TECHNICAL SPORTS RACING)を運営し、鈴鹿8耐で3回優勝などの成績を残し、2016年からはEWCシリーズに年間参戦。最近ではF.C.C TSR Honda Franceとして2017-2018年シーズンのタイトルを獲得している。

彼らはHonda Racing Thanks Day 2019(2019年11月、ツインリンクもてぎ)に招聘され、モーターサイクルレースに注ぐ愛情と、お互いが日々行っている非常に異なる仕事について語り合った。

ボルドール24時間耐久(2019年)。ピットクルー中央、銀のヘルメットが藤井。ボルドール24時間耐久(2019年)。ピットクルー中央、銀のヘルメットが藤井。藤井は言う。「耐久レースは、人の生活、人生そのものに似ている。『よーいドン!』で始まって、長い時間戦い(走り)、そしてフィニッシュする。同じチームで2人または3人のライダーと一緒にいて、メカニックがいて、サポートスタッフがいて、最大24時間もの間、常に助け合っている家族のような感覚になるんだ」。

チェッキネロは自身が元レーシングライダーとして、ライダーがコース上で何をしているかを熟知している。 「ライダーがMotoGPで競っているのを見ると、まるで自分がバイクに乗っているかのように、心臓が鼓動するのを感じることができるほど、本当に緊張しているんだ!」と語り、「各グランプリでこのストレスに45分の間、自分で向き合わねばならない。でもマサ(藤井)はこのストレスに8時間や24時間などという途方も無い時間、対処しなければならないんだ!」。

さらに、「MotoGPは年間20レースあって、レースで何らかの問題が発生した場合、2週間後には何かを再度トライすることができる。しかし、鈴鹿8耐やボルドール24時間などの耐久レースでは、何か問題が発生した場合、次のレースまで丸々1年かかってもう一度試すことになる。だから、チームマネージャーがすべてのことを完全に達成するためのストレスは、とても、とても高いものにならざるを得ないと思うよ」と違いを述べた。

LCRホンダチーム(2019年)LCRホンダチーム(2019年)チェッキネロのLCRホンダは、チーム全体のスタッフ数が47人で、27人がガレージまたはトラック(ライダー、エンジニア、メカニック)で、残りはチームホスピタリティや、モナコの本部の管理スタッフやグラフィックデザイナーだ。片や藤井のチームF.C.C. TSR Honda Franceのスタッフ数は、24時間のレースではLCRとほぼ同数ということだが、短い8時間のイベントでは若干少なくなるという。

藤井は、「レースで1台の同じマシンに乗る3人のライダーをうまくコントロールし、マネジメントして様々な事態に対応しなきゃいけない。特にピット作業における1秒の差は、ラップタイムでの1秒の差と同じくらい重要だから、ピットストップでの作業がとても重要な要素となる」と語った。

「耐久レースでは、ライダーのパフォーマンスがおそらく40%、チームとその作業がもう40%を占める。だから、チームがどうやって様々な連携をするかが非常に重要。そして私にとって最も重要な点はライダーの管理。ライダーを選ぶときは、体重と身長がほぼ同じで、腕と脚も長さが同じであることが必要だね。ライダーの背格好やサイズが大きく異なると、耐久レースは難しいね」

チェッキネロはこれまで耐久レースをしたことはないものの、色々な面からそれに魅了されていることを認めている。

「MotoGPでは、バイクの純粋な速さ、最高のパフォーマンスを見出し、ライダーからのインフォメーションによってバイクを調整する。いっぽう耐久レースでは、2人または3人の異なるライダーに対処する必要があるため、ライダーたちのすべての情報を組み合わせて、どのセットアップがライダーたちにとって最適かを判断する必要がある。とても興味深いし、面白そうだね」

F.C.C. TSR Honda France、EWC 2019-20シーズン第2戦マレーシアで13位。F.C.C. TSR Honda France、EWC 2019-20シーズン第2戦マレーシアで13位。LCRホンダとF.C.C. TSR Honda Franceはいずれも、前シーズンと同じライダーで2020年シーズンを迎える。クラッチローと中上は、再びチェッキネロのチームメンバーとしてRC213Vを駆りMotoGPを走る。ジョシュ・フック、マイク・ディ・メリオ、フレディ・フォレイは、ホンダが満を持して送り込んだ新型CBR1000RR-Rに乗り、藤井と共にEWCを戦う。

<Interview: Mat Oxley, Honda Racing Thanks Day story>

《高木啓》

【注目の記事】[PR]

編集部おすすめのニュース

特集