【ディーゼルエンジン解説】しくみやメリット&弱点、国内販売モデルの最新ラインナップは?

マツダ3新型 セダン(1.8 SKYACTIV-D)
  • マツダ3新型 セダン(1.8 SKYACTIV-D)
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  • 三菱 エクリプスクロス G Plus Package(ディーゼルモデル)
  • 三菱 エクリプスクロス ディーゼル(ブラックエディション)
  • メルセデスベンツ Aクラス ディーゼル(A200d)
  • メルセデス・ベンツ Aクラス 新型(A200d)
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いま、日本でもそのメリットが見直され、ユーザーを増やしているのがディーゼルエンジンだ。国産車ではマツダが軽自動車とスポーツカーの『ロードスター』を除くすべてのラインナップに搭載して積極展開するほか、三菱自動車が『デリカD:5』や『エクリプスクロス』に、トヨタが『ランドクルーザープラド』や『ハイラックス』などに設定している。

そして、日本車以上にディーゼルエンジンに積極的なのが欧州勢だ。その代表格と言えるのが、メルセデスベンツやBMWといったドイツのプレミアムブランド。ディーゼルエンジンとのマッチングがいいと言われるSUVだけに留まらず、小型車やセダンにも幅広く搭載する。メルセデスベンツは、ブランドを代表する最上級サルーンの『Sクラス』にまでディーゼルエンジン車をラインナップしている。

ディーゼルエンジンのしくみ

三菱 エクリプスクロス ディーゼル(ブラックエディション)三菱 エクリプスクロス ディーゼル(ブラックエディション)

ところで、ディーゼルエンジンとはどんなエンジンだろうか。多くの人はエンジンと言えば「ガソリンエンジン」をイメージすると思うが、シリンダー内での爆発によるエネルギーでピストンを上下させ、それを回転エネルギーに変えるという仕掛け自体はガソリンエンジンもディーゼルエンジンも変わらない。しかし、違う部分もいくつかある。

まず異なるのが、燃料だ。ガソリンエンジンが「ガソリン」を燃やすのに対し、自動車用のディーゼルエンジンで燃やすのは「軽油」。だから燃料そのものの質が違う。

燃焼の着火方法にも違いがある。ガソリンエンジンは一般的にスパークプラグが飛ばした火花で燃焼室内の混合気(空気と気化したガソリンが混ざったガス)に火をつける。ところがディーゼルエンジンはスパークプラグがなく、ピストンにより圧縮した空気へ燃料(軽油)を霧状に噴射することで自然に火が付くのだ。単純に燃料が違うだけでなく、火をつける方法も異なるのである。また、マツダなどごく一部の例外を除き基本的にガソリンエンジンに比べて圧縮比が高いのもディーゼルエンジンの特徴だ。

ディーゼルエンジンのメリットは?

ガソリンスタンド(イメージ2)ガソリンスタンド(イメージ2)

では、そんなディーゼルエンジンのメリットはどこにあるのか。大きなメリットは「燃費」と「高トルク」の2点である。一般的に、おなじ車体に搭載する場合はディーゼルエンジン車のほうがガソリンエンジン車よりも燃料消費が少ない。たとえば先日「デミオ」から改名したマツダのコンパクトカー『マツダ2』の場合、ガソリンとディーゼルでWLTCモード燃費を比べてみると、排気量は同じ1.5Lながら燃費はガソリン車(主要グレードのAT車)が19.0km/Lなのに対し、ディーゼル車(同)は21.6km/Lと優れている。車種によりその差はさらに広がり、たとえば同社の『CX-8』の場合、ガソリン車(2.5L自然吸気エンジン)の燃費12.4km/Lに対し、ディーゼル車(2.2Lターボエンジン)は15.8km/L。実走行ではさらに差が拡大するだろう。燃費がいいだけでなく、燃料の軽油はガソリンよりも単価が安いことも魅力。燃料代に大きく差がつくのだ。さらに欧州からの輸入車では、ガソリン車の場合は指定ガソリンが「ハイオク」となるので軽油との価格差は日本車以上に開く。これも、輸入車でディーゼルが好まれる一因になっている。

もうひとつの大きなメリットが「高トルク」。マツダ2の場合はガソリンエンジン車の最大トルクが141Nmに対してディーゼル車は250Nmを発生。CX-8では252Nmに対して450Nmとなっている。ディーゼルにはターボを組みあわせることもあり、1.5倍以上のトルクを発生するのだ。また、その発生回転数が低い(マツダ3ではガソリン車が4000rpmに対し、ディーゼルAT車は1500-2500rpm)。ディーゼルエンジン車が「低回転で力があって運転しやすい」と言われる理由はそこにある。

加えれば、高圧縮比に耐えられるように頑丈に作られているうえに、スパークプラグを持たないなど構造が比較的シンプルだから壊れにくく寿命が長いというのもディーゼルエンジンのメリットだろう。

以上のことからディーゼル車は、燃料代を安くしたいユーザーや力強い発進加速を求めるユーザーに向いていると言える。クルマとしては、車体がかさみがちだから太いトルクを必要とするSUVとのマッチングが特にいい。

ディーゼルエンジンのウィークポイント

いっぽうでディーゼルエンジンならではのネガティブな部分もある。まずあげられるのが、振動や騒音などガソリンエンジンに対して上質感で劣ることだ。これは現在でも解消するまでは至らないが、かつて(2000年以前)に比べるとかなり改善されており、昨今の多くのディーゼルエンジン搭載車なら走り始めてしまえば気にならない水準となっている。また、メルセデスベンツが「S400d」に、BMWが「X5 xDrive35d」や「X3 M40d」に搭載するエンジンのように、まったくと言っていいほど差支えないレベルを実現しているディーゼルエンジンも存在する。どちらも直列6気筒ディーゼルだ。

もうひとつのウィークポイントは、排ガス浄化のための手間がかかることだ。燃費が良く二酸化炭素排出量も少ないディーゼルエンジンながら、ガソリン車に比べると燃焼時にNOx(窒素酸化物)やPM(粒子状物質)が多く発生する。それらは環境や人体に害があるとされているので取り除かなければならず、そのための排出ガス後処理設備(尿素SCRシステムやDPF)を備える必要があり、その装備がディーゼル車の価格を引き上げる原因となっている。

かつて、東京都の石原慎太郎元知事が「ディーゼル車No作戦」としてペットボトルに入れたススをばら撒きながら記者会見でデモンストレーションをしたことがある。あの粉は当時のディーゼル車の排出ガスに含まれるPMを含むディーゼル粒子だった。しかし、その後日本では規制が「世界最高水準」にまで大幅に強化され、「ポスト新長期規制」に対応する昨今のクリーンディーゼル車は当時とは比べようがないほど排出ガスが浄化されている。そこが、環境面におけるかつてのディーゼルと昨今のディーゼルエンジンとの大きな違いだ。

いっぽうドイツなどでは一部地域におけるディーゼル車の締め出しが報道されているが、その背景にあるのはディーゼル車のクリーン化の遅れ。ドイツなど欧州ではつい数年前まで日本よりもかなり緩い水準の排出ガス規制しかおこなわれておらず、その結果として日本より10年以上も遅れてディーゼルの排出ガス問題が表面化したのである。

ただし、現在は欧州においても規制が強化されて新型車のディーゼルエンジンの排出ガスは急激にクリーン化されており、「ユーロ6」と呼ばれる基準をクリアしたエンジンは日本のディーゼルエンジンと同等のクリーン度に進化。そのため、欧州で「ユーロ6」の基準を満たしたものは日本へ輸入できる取り決めとなっている。

そんな背景もあり、ドイツの自治体で行われているディーゼル車乗り入れ規制の多くが古いディーゼルエンジン車のみを対象とし、クリーンディーゼルは対象外。そこまで理解しないと、話は見えてこない。そんなドイツでは数年前まで新車販売の約6割がディーゼル車だったが、昨今は脱ディーゼルエンジンが進んでいるのは事実だ。しかしながら、今でも約4割のユーザーは新車購入時にディーゼルエンジンを選んでいるのもまた事実である。その多くの理由が「経済性」だという。

日本で販売されている最新のディーゼルエンジン車

では、日本で販売されている最新のディーゼルエンジン車の状況はどうだろうか?

国産車でもっとも新しいディーゼルエンジン搭載車と言えば『マツダ3』だ。搭載するエンジンは排気量1.8Lで最高出力116ps、最大トルクは270Nmである。このエンジンの特徴はディーゼルエンジンとしては圧縮比を14.8と低くし、燃焼効率を高めていること。そのためNOx後処理装置を使わなくても厳しいディーゼル排出ガス規制(ポスト新長期規制)をクリアできていることも注目ポイントだ。このエンジンは燃費性能に優れ、WLTCモードによる燃費はFFモデルで19.8km/L。実燃費もかなり良好だ。低回転域で力強い感覚はやや薄いが、郊外路や高速道路を淡々と走るような環境が多いユーザーにとっては魅力的な選択肢である。

マツダ3新型 セダン(1.8 SKYACTIV-D)マツダ3新型 セダン(1.8 SKYACTIV-D)

いっぽうで三菱 エクリプスクロスに積むディーゼルエンジンは力強さが印象的。排気量が2.2Lと大きく380Nmという太いトルクを発生(最高出力は145ps)することもあって、とにかくグイグイと車体を加速させるのが特徴だ。2000回転付近からの伸び感も滑らかで、ドライバビリティ面も満足できる。駆動方式は全車4WDで、WLTCモード燃費は14.2km/L。ライバルに相当するマツダ『CX-3』に比べるとエンジン(CX-3の排気量は1.8Lとエクリプスクロスよりは小さい)の力強さが明らかで、燃費よりも元気のいい走りを求める人向けのキャラクターと言える。このエンジンは大幅改良前のデリカD:5時代から使われているものだが、今年春のデリカD:5の大規模マイナーチェンジに合わせて大掛かりな進化を遂げ、従来タイプとは比較にならないほど音や振動が抑えられ、フィーリングも滑らかになったことを感じる。

三菱 エクリプスクロス G Plus Package(ディーゼルモデル)三菱 エクリプスクロス G Plus Package(ディーゼルモデル)

輸入車の最新ディーゼルエンジン搭載車と言えばメルセデスベンツ『Aクラス』が代表格で、そのエンジンの概要は驚くレベル。後処理装置がとにかく充実していて、他車を大きく引き離しているのだ。大気汚染の原因となるNOxを減らすために尿素SCRシステムを装備するほか、低減する排出されたガスをもう一度燃焼室へ送って再燃焼させるEGR機構は、低圧と高圧とを2系統搭載。さらにPMをキャッチする役割を持つDPFにSCRコーティングを実施し、PMだけでなくNOxも処理できるよう工夫している。加えて、アドブルーを噴き過ぎた際にアンモニアが車外に排出されるのを抑止するASC(アンモニアスリップ触媒)も組み合わせる。結果として、従来と比べてより多くの尿素水を噴射できるようになり、NOxの発生を徹底的に抑えているのだ。いま、もっとも排出ガス浄化のために多くのデバイスを組み合わせたディーゼルエンジンといえるだろう。そして、ドライバビリティが素晴らしい。停車時こそディーゼルエンジンらしいガラガラ音がするものの、走り出してしまえばまったく気にならない。エンジン回転上昇のフィーリングは滑らかで、ディーゼル車であることを忘れてしまうほどだ。排出ガスのクリーン化とエンジンの動的性能はある程度トレードオフの関係にあるが、このディーゼルエンジンは高度な排出ガス浄化機構を備えることで排出ガス浄化に余裕ができ、ドライバビリティを高めたのだと推測できる。排気量は2.0Lで、最高出力は150ps、最大トルクは320Nm。WLTCモード燃費は18.8km/Lだが、首都高速道路を中心に燃費を意識せず50kmほど走ってみたら車載の燃費計数値は20km/Lを超えていて驚いた。

メルセデスベンツ Aクラス ディーゼル(A200d)メルセデスベンツ Aクラス ディーゼル(A200d)

《工藤貴宏》

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