【MaaS】ふるさと納税約20億円集めた町がチャレンジするMaaS…上士幌町 企画財政課 主幹 梶達氏[インタビュー]

【MaaS】ふるさと納税約20億円集めた町がチャレンジするMaaS…上士幌町 企画財政課 主幹 梶達氏[インタビュー]
  • 【MaaS】ふるさと納税約20億円集めた町がチャレンジするMaaS…上士幌町 企画財政課 主幹 梶達氏[インタビュー]

ふるさと納税で約20億円を集め人口増に転じた北海道の上士幌町(東京からもフライト可能なとかち帯広空港から約70kmに位置する)。新設のこども園を無料にしたり、地域の足の確保に魅力ある町づくりを進め、都市部などから移住者が増えている。その上士幌町がSBドライブ、MaaS Tech Japan、十勝バスなどとともに自動運転や新たなモビリティサービスを導入しながらMaaSに挑む。

取材に上士幌町を訪ねて驚いたことは、日本ではなかなか見ることのできない欧州のオランダやドイツなどのように広がる雄大な十勝平野の魅力だ。夏といっても空気は乾いていて過ごしやすい。そして北の大地に青々とした自然が残る豊かな地だから魅せられる景色や食文化が数多く点在する。

たとえば「ナイタイテラス」。日本一広い公共牧場ナイタイ高原牧場の山頂にあり、入口からテラスのある山頂まで約7kmある。農家から大人になるまで預けられた子牛たちが気持ちよさそうに群を成してのんびりと暮らしている景色がなんともほのぼのとした気分になる。牧場と一体的にデザインされたモダンな山頂テラスからみる景色は絶景だ。他にも東京でも有名なスイーツなどがあり、2、3日いろいろなことを忘れてゆっくりしたくなった。

そんな北海道の上士幌町の課題について役場の企画財政課主幹の梶達氏に聞いた。

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人口が1/3に激減。施策で人口が大きく伸びた

---;この取材の前に夕張市を視察しました。北海道は全体的に人口減や都市経営に頭を抱えています。上士幌町の人口はどのように推移していますか?

梶氏;上士幌町の人口は昭和30年の1万3000人がピーク。そこから右肩下がりで4年前に4880人まで落ち、2020年には4000人に減少すると予測された程でした。

しかし4年連続で人口は伸び5000人まで戻りました。過疎地域なので亡くなる人の方が生まれる人より多く自然減は止まっていない状況にあります。そのような状況で人口は伸びているのです。都市部からの流入があるのです。都市部から離れていて人口が5000人を割り込んだ地域で、人口が100人以上伸びるのはなかなかないのではないでしょうか。

---;人口が持ち直した理由は?

梶氏;いまの町長の影響が大きかったと考えています。着任した当時は約15年前で平成の大合併の時期。市町村合併がうまくいかなかった場合は地方交付税交付金の締め付けなど歳入を圧迫する可能性がある。もし合併をしないのであれば上士幌町の都市経営を自主自立して都市部をマーケットに据える必要があるというという新たな方針をいまの村長が立てました。

都市部もマーケットに据える方針に梶を切ったため、モノを都市部に売るのみならず、ヒトの交流を促すことにも力を注ぎました。そのヒトの交流を促すためにICTの活用を進めました。いまではどの自治体もICTの活用は進めていますが、約15年前としてはめずらしい取組みでした。

当時はHPも都市部に発信できるようなクオリティのものではなかったですし、道の駅もなく特産品などモノを外に売る場所がありませんでした。そこでネットショップ「上士幌市場」を町がはじめました。いまのふるさと納税の基盤になっていますが、始めた時はまったくネットショップで売れませんでした。

HPやネットショップ「上士幌市場」のサイトの制作もそうですが、ICT活用を進めるためには上士幌町役場の職員では限界があったわけです。そこで “情報交流推進員”を地域おこし協力隊で募集したところ、非常にスキルの高い男性から応募があり、大きく改善しました。

先行者メリット

---;振り返ると上士幌町がふるさと納税や人口増などである程度の実績を残せた理由は何だったのでしょうか?

梶氏;いまでこそ普通になっていますが、「ふるさと納税をしてもらって返礼品を送ることは変だ」と言ってふるさと納税の返礼品に取組んでいない自治体がほとんどでした。上士幌町にはもともと入学祝いをもらうと半分返す“半返し”する文化があります。1万円包んでもらうと5000円相当のものを返すような。ふるさと納税に対しても1万円の納税があれば送料込で5000円の半返しをしていました。

そして半返しして町に残った半分のふるさと納税の用途は、上士幌町の未来を担う子どものたちのために使わせてもらうことにしました。さらにふるさと納税はみなさんから“プラスアルファで頂いている応援”ですので、既存の財源でできていることに充てるのではなく、新しいことに使って行こうと取り決めました。

---;上士幌町の取組みを聞いているとかなり戦略が明確なように感じました。一番の成功要因は、今でこそ当たり前になっているICTの活用、ふるさと納税などいろいろなことを先行的に取組まれたことが大きそうですね。町長はどちらの出身ですか?

梶氏;町長は民間出身ではないかとよく言われます。しかし、上士幌町役場出身です。

---;役場出身だからこそある職員にとっての安心感や信頼関係がベースにあり、新しいことに取組むチャレンジ精神と大きな自治体ではなく“町”だからこそ意思決定などのプロセスが短くスピード感をもって動ける体制が功を奏したのでしょうね。

広大な町の通学の問題

梶氏;上士幌町の行政面積としては700平方キロメートルあり、ほとんどが森林や農村地域ですが、東京都23区(620平方キロメートル)よりも広いです。住宅は点在しており、行政としては学生、高齢者や障がい者の足を確保する必要があります。約1憶円の予算を公共交通に投資していて、そのうち4500万円が小学校のスクールバスです。

学校の教育の質を高めるために町の学校を1つにまとめる予定です。10年前は7つありました。そのため広大な面積に点在して住む学生をスクールバスやスクールタクシーで送迎する必要があります。

学生の通学以外にも高齢者や障がい者対象の巡回バスを無料で運行したり、十勝バスの赤字路線へ補助したりしています。きめ細かな公共交通サービスを提供してきましたが、効率化などが求められています。行政は一度はじめたサービスを低下させるのはなかなか難しいのです。

観光や日常生活の移動の選択肢を増やしたい

---;MaaSでチャレンジしたいことは?

梶氏:日常生活の移動手段の効率化に加えて、外からの観光客の移動手段の選択肢を増やしたいと思っています。上士幌町にこのナイタイテラスのように観光スポットが点在しています。しかし多くの観光客は帯広空港からレンタカーを借りていらっしゃってくださいますが、ペーパードライバーも多く、北海道の冬は厳しく雪道は心配です。できれば公共交通に乗っていただきたいのですが、十勝バスなどは帯広への通学メインで走っていてビジネスや観光客向けではありません。市役所近くの交通ターミナルまで来ることができますが、そこからはタクシー、レンタサイクルなどくらいしかありません。

このナイタイテラスまではレンタサイクルでは体力のある人しか難しいでしょう。タクシーで来る人もいますが1万円かかります。たとえば観光客の方が交通ターミナルに13時に集合して、ナイタイテラスの席とタクシーを予約して、一緒に乗り合わせると、1万円かかる費用が4人で割れるので2500円で楽しめるのではないか。たとえば町民のクルマをカーシェアに活用できないか。自動運転バスを走らせることはできないか。選択肢をいろいろ増やしたいと思っています。

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《楠田悦子》

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