JR東日本は6月4日、水素をエネルギー源とした燃料電池と蓄電池を備えた、新しいハイブリッド車両「FV-E991系」を試作することを明らかにした。
JR東日本のハイブリッド車は、ディーゼルエンジンと蓄電池を併用してモーターを駆動させる方式のものが最初に開発され、2003年には鉄道総合技術研究所(鉄道総研)と共同でキヤE991形を試作。世界初のハイブリッド式鉄道車両となった同車は「NEトレイン」と名付けられ、2008年には水素を用いる燃料電池と蓄電池を搭載するクモヤE995形に改造された。
今回登場するFV-E991系は、基本的なシステムや最高速度、加速度といった走行性能はクモヤE995形を踏襲しているが、燃料電池に使用する水素に世界で初めて最高充填圧力が700気圧のものを用いることで、350気圧のクモヤE995形と比べて倍以上の140kmもの走行距離を稼ぐことができるという。
落成は2021年度内を予定しており、その後は鶴見線や南武線(尻手~浜川崎・武蔵中原)で実証実験を行ない、安全性や車両性能、環境性能などを確認する。
実証実験に際しては、鶴見線や南武線の沿線にあたる神奈川県や横浜市、川崎市と環境整備に向けて連携するほか、6月3日にはJR貨物や昭和電工との間で設備整備について基本合意している。
また、燃料電池自動車に関するノウハウを持つトヨタとは、2018年9月に水素を活用する包括的な業務提携が結ばれ、FV-E991系へその知見が取り入れられることになった。
燃料電池を用いるハイブリッド車は、将来的なエネルギー確保や二酸化炭素(CO2)排出の抑制などにもつながることから、JR東日本ではFV-E991系の実証実験を通して「燃料電池制御技術の最適化や、地上設備に関する技術開発項目の検討など、将来の燃料電池車両実用化に向けたデータを収集していきます」としている。