【WEC 18/19第4戦 富士】トヨタがホームコースで1-2フィニッシュ…小林可夢偉組 7号車はシーズン初優勝

母国戦1-2を喜ぶトヨタ勢の面々。
  • 母国戦1-2を喜ぶトヨタ勢の面々。
  • 優勝した#7 トヨタTS050。
  • 優勝した#7 トヨタTS050。
  • 2位の#8 トヨタTS050。
  • 2位の#8 トヨタTS050。
  • 決勝スタートの模様。
  • LMP1クラスの表彰式
  • LMP1クラス3位の#1 レベリオン。

世界耐久選手権(WEC)2018/2019シーズン第4戦「富士6時間」は14日、決勝日を迎え、LMP1クラスのトヨタが1-2フィニッシュを達成した。優勝は小林可夢偉、M. コンウェイ、J-M. ロペスが駆った7号車で、このトリオはシーズン初優勝。中嶋一貴組 8号車が2位に続いた。

曇り空の支配が続いた今週末の富士スピードウェイ。決勝日の朝9時台、サポートレースの全日本F3選手権・最終戦が実施された頃はわずかながら雨が降っており、路面は主に夜間の降水によるウエット状態だった。WECの決勝(6時間レース)がスタートする11時少し前の段階でも路面はウエット、温度条件は気温約14度、路温約17度と低めである。その後も1時間ほどは軽い雨が断続的に見舞うなどしたが、路面はドライ化していく。正午頃には陽が顔を出す時間帯もあった。

最初の1時間は微妙な天候の影響や、ストレートで石川資章のドライブする#70 フェラーリ(LMGTE-Amクラス)のタイヤがバーストしてデブリが散乱するアクシデントもあってセーフティカー(SC)が導入されるなど、レースはやや混乱した幕開けとなる(石川は無事)。しかし1時間経過以降は、概ね落ち着いた展開へと移行していくことに。

最前線LMP1クラスの優勝争いはやはりというべきか、トヨタ勢による同門対決となった。予選でのタイム抹消によりクラス最下位の8番手からスタートした#7 トヨタTS050ハイブリッド(M. コンウェイ&小林可夢偉&J-M. ロペス)も、それが他陣営に対しての大きなハンデにはならず、開戦後すぐに2番手へ。

#7のスタートを担当した可夢偉は、攻めたタイヤ選択をしていた。ポール発進の僚機 #8 トヨタTS050ハイブリッド(S. ブエミ&中嶋一貴&F. アロンソ)に対して挽回するためには、同じことをしていても難しい。そこで「ひとつの賭けですね」と、レインタイヤのブロックをさらにカットして増やしたというタイヤを自身の選択で履いたのである(冷えたウエット路面での発熱性向上が主な狙いだろうと思われる)。

ただ、この選択は結果的には「失敗でした」。#7 可夢偉は早めのタイヤ交換を強いられることになる。しかしその後、今度は路面がドライ化していくなかで「インター(ミディエイト)をジャンプして、スリック(ドライ用)を履く」という再度の攻めの選択をコクピットで行ない、これが奏功して、最初の1時間の混乱期にタイミング的な要素の運・不運も含めてうまく立ち回る格好になったのは#7の方であった。トップ争いは#7 可夢偉組が先行、#8 一貴組が追う形勢で展開されていく。

レース中盤頃には#7が前、#8が後ろというかたちでテール・トゥ・ノーズに近い状況も創出されつつ、同門対決が続いた。そして後半は次第に#7がリードを広げていく。残り1時間、お互いにあと1回ずつのピットストップを残す状況で#7と#8の差は約20秒。最終ピットストップを経ても差はほとんど変わらず、2台のトヨタTS050ハイブリッドは1-2フィニッシュを完遂する。最後は#7を可夢偉が、#8を一貴がドライブして、チェッカーを受けた(最終タイム差は約11秒、ともに230周を走破)。

#7 可夢偉組は18/19シーズン初優勝。これでトヨタは18/19シーズンここまでの4戦すべてを1-2でゴールしたことになる(ただし第3戦は再車検で両車失格)。WEC富士戦は3連覇で、2年連続の1-2フィニッシュ、7年で6勝となった。可夢偉にとっては2年前の富士戦以来となるWECでの勝利だ。

#7 小林可夢偉のコメント
「(勝ちが来ない流れのなかでも)いつか勝てるとは思っていましたけどね。ただ前戦、#7も#8も失格になったレースではありましたが、内容的には接戦だったなか、ちょっとしたことが原因ですけど普通に#8に負けてしまった面があったので、今回、速さで巻き返して勝てたことは僕ら7号車にとって良かったと思います」

2位に敗れた#8の一貴は、ゴール直後、「今日はドライでのペースは7号車の方が実力的に上でしたね」と語り、僚機のクルー、スタッフたちを讃えている。アロンソも「我々8号車もいいレースをしたと思うけど、今日のカーバランスはグレートとまではいえなかった。高速コーナーでのアンダーステアに悩まされたりしていたからね。SCのタイミングも不運だったと思うが、それはレースだから仕方ない」と語っていた。

ワークス参戦しているメーカーはトヨタだけだが、彼らの談話から分かるように、可夢偉組 7号車と一貴組 8号車は常に戦っている。一貴は「チームとしては1-2を続けていくことが大事ですし、#7と#8でお互いに勝負していくことになるわけですが、今季最初からそのつもりでいますので」と語り、同門のドライバーズチャンピオン争いへの決意を新たにしているようであった。熱いバトルはこれから先も続く。

LMP1クラスの3位、表彰台の残る一角を巡るノンハイブリッド勢プライベーターの争いは、レベリオン・レーシングの#1 レベリオンR13-ギブソン(N. ジャニ&A. ロッテラー&B. セナ)とSMPレーシングの#11 BRエンジニアリングBR1-AER(M. アレシン&V. ペトロフ&J. バトン)によって展開された。残り2時間を切った頃に#11がイレギュラーなロングピットインをする状況となって、勝負あり。#1 レベリオンのロッテラー組が3位を獲得した(トヨタ勢とは4周差)。#11 バトン組も再走を果たし、最終的に4位まで順位を戻して完走。

LMP2クラスはジャッキー・チェンDCレーシングが1-2で制した。優勝は#37 オレカ07-ギブソン(J. ジャファー&W. タン&N. ジェフリー)。井原慶子が乗ったラルブル・コンペティションの#50 リジェJSP217-ギブソン(E. クリード&R. リッチ&井原)はクラス5位だった。

LMGTE-Proクラスは1~4位にポルシェ、BMW、フォード、フェラーリと、異なるメイクスのマシンが1分以内の差で連なる結果になっている。クラス優勝は#92 ポルシェ911RSR(M. クリステンセン&K. エストル)。

LMGTE-Amクラスでは、前日にポール獲得に大貢献する働きを見せた57歳のWEC新人、デンプシー-プロトン・レーシングの星野敏がこの日も見せた。#88 ポルシェ911RSR(星野&G. ローダ&M. カイローリ)のスタートドライバーを務め、首位を堅持する見事な走り。優勝は成らなかったもののクラス2位、デビュー戦で表彰台に上がっている(*追記参照)。

LMGTE-Amクラスの優勝は#56 ポルシェ911RSR(J. ベルクマイスター&P. リンジー&E. ペルフェッティ)。日本人選手が乗るマシンでは、クリアウォーター・レーシングの#61 フェラーリ488GTE(W-S. モク&澤圭太&M. グリフィン)が7位、MRレーシングの#70 フェラーリ488GTE(石川資章&O. ベレッタ&Edw. チーバー)は前述のアクシデントにより序盤リタイア。

次戦、WEC18/19第5戦は中国・上海にて11月18日決勝の日程で開催される。年内のレースはこれが最後で、18/19シーズン第6~8戦は19年前半の開催となる。そして来年(19年)もWEC富士戦は開催が予定されており、10月6日を決勝日とする日程で、2019/2020シーズン第2戦として組み込まれている(当初は13日決勝の日程だったが、他シリーズとの兼ね合いで変更された)。

*上記の内容はゴール時点の暫定結果と状況、ゴール後の談話に基づくもの。

<追記>決勝日である14日の深夜、日付かわって15日になってからLMGTE-Amクラスに関するタイムペナルティの発表があった。#88 ポルシェ(星野敏ら)は給油時間に関連する問題で1分16秒を加算されており、「決勝暫定結果改訂版」では5位に降格されている。

《遠藤俊幸》

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