バイクにもついにEV時代到来か!? 最新の電動バイクを比較試乗…普及への道のりは

モーターサイクル 新型車
ADIVAの電動スクーター「AD1-E」プロトタイプ
  • ADIVAの電動スクーター「AD1-E」プロトタイプ
  • ADIVAの電動スクーター「AD1-E」プロトタイプに試乗する佐川健太郎氏
  • BMWが市販する電動スクーター「C evolution」
  • ADIVAの電動スクーター「AD1-E」プロトタイプ
  • ADIVAの電動スクーター「AD1-E」プロトタイプ
  • ADIVAの電動スクーター「AD1-E」プロトタイプ
  • ADIVAの電動スクーター「AD1-E」プロトタイプ
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2輪にも本格的なEV時代がやってくる


最近、電動バイクにも新たな動きが出てきている。国内外の2輪メーカーがいよいよEVにも本腰を入れ始めたようなのだ。

数年前にも電動スクーターが盛り上がったことがあった。主に海外の新興ブランドや国内のスタートアップ企業の製品が市場にも多く出回ったが、残念なことに一時的なブームに終わってしまった感がある。理由としては、製品のクオリティやアフターサービスの面で不十分だったことが挙げられる。結局はユーザーの信頼を得られず、そのほとんどが日本市場からは撤退していった。

ほぼ同じ時期に国内2輪メーカーからも実験的なモデルが登場したが、一般ユーザーが日常的に便利に使えて価格的にもこなれるまでには至らず。その後は足踏み状態が続いていたが、ここにきて様相が変わってきた。高性能でコンパクトなリチウムイオンバッテリーの普及により、これまでEVのネックだった充電時間の長さや航続距離の短さなどの問題が解消されようとしている。加えて、ユーザー側の環境意識の変化にも押されて、2輪も一気にEV化が進んでいく可能性も出てきた。
ヤマハ e-Vino(イービーノ)
この流れに先鞭をつけたヤマハの『E-Vino』やBMW初の電動マキシスクーター『C evolution』、そして最近もホンダが『PCXハイブリッド』を発売。あのハーレーダビッドソンまでもが、2019年から電動バイクを市場投入することを正式発表している。

そんな状況の中、他とは一線を画すユニークな切り口でEVに挑もうとしているのがADIVAである。以前からルーフ付きスクーターや3輪スクーターなど、独自のアプローチによる製品作りが注目を集めていたが、次期モデルとしていよいよ本格的な3輪タイプのEVを投入する計画があることを発表。さっそく、試作車に乗る機会を得たのでレポートしたい。

2輪と4輪のいいとこ取りなEV


『AD1-E』はルーフ付き3輪スクーター『AD1 200』を電動化したモデルだ。今回試乗したのはプロトタイプだが、2019年には市販車としてデビューする予定である。注目すべきは、フロント2輪&リヤ1輪の3輪という車体構成。4輪のダブルウィッシュボーンに着想を得た「インディペンデント・クアトロ・ウィッシュボーン・サスペンション」を採用し、2輪車の楽しさと手軽さ、4輪車の安全性と快適性を兼ね備えているのが特徴だ。また、ガソリン車のAD1同様、ワイパー付きのフロントスクリーンや簡単に脱着できるルーフを装備するなど、2輪の常識を覆す全天候対応という設計思想がADIVAのユニークさを物語る。フルフェイスヘルメットが2個余裕で収まる40リットルのリアトランクも健在だ。これらの独自性は「バイクの楽しさと手軽さ、クルマの安全性と快適性を併せ持った、天候に左右されることがないモビリティの開発」という同社のコンセプトを具現化したものなのだ。

電動ならではの滑らかな加速


「ヒュイーン」という電動モーター独特の低い唸りとともに路面を滑るように動き出す感覚がなんとなく電車っぽい。アクセルを開けた途端に鋭く加速していく様は、瞬間的にトルクが立ち上がる電動モーターならでは。しかも後輪に組み込まれたインホイールモーターで駆動するためタイムラグがほとんどない。最高出力はガソリン車のAD1 200から1kW増しとなる15kW(20ps)だが、ゼロ発進からの加速はより力強く感じる。電動化により静寂性が向上しているのはもちろん、エンジンレスにより車重が22kgも軽量化されていることもメリット。その分、ハンドリングも軽快さが増した感じで、基本的にはガソリン車と同じくフロントのどっしりとした安心感はそのまま、コーナーの切り返しなどでは車体が機敏に反応する。前後輪の分布荷重などは煮詰めていく必要があると思うが、現時点でも完成度は高いと思う。
ADIVAの電動スクーター「AD1-E」プロトタイプに試乗する佐川健太郎氏

ワンペダルのような操作感


興味深いのは回生ブレーキシステム。アクセルを開ければ加速するのはガソリン車と同じだが、閉じると空走状態になり、さらに逆方向に回すと回生ブレーキが作動する仕組みになっている。回生ブレーキとは減速時の運動エネルギーでモーターを回して発電・チャージするシステムで、4輪のハイブリッドやEVではすでに一般的だが2輪では未だ珍しい。4輪の「ワンペダルドライブ」と同じでアクセルを戻すだけでかなり減速するので、慣れてくると完全停止以外ではほとんどブレーキも使わないで済むほどだ。そして停止中にアクセルを逆回しすると何とバックもできる。これはEVならではの新鮮な感覚だ。車重も182kgと軽くはないため、下り坂や駐車場での取り回しなどはとても助かった。

BMWの最新EVと比較すると…


一方、比較のために持ち込んだBMWのC evolutionだが、AD1-Eと比べると乗り味はだいぶ一般的なメガスクーターに近い感覚だ。最高出力35kw(48ps)の圧倒的なパフォーマンスはもちろんのこと、回生ブレーキの抵抗も控えめで、車体を倒し込むとバンク角に応じた舵角がついて自然に曲がっていく感じも勝手知ったる2輪そのもの。そして、スキの無いデザインと上質感はさすがBMWだ。

ただし、4輪EVの『i3』と共通のリチウムイオンバッテリーモジュールや水冷式モーター、ベルトドライブを採用するなど、その複雑さ故に車重は275kgと重量級で、取り回しは正直かなり辛い。

コンセプトも車体構成も異なる2台なので単純比較はできないが、同じ都市型コミューターながら狙いが異なるのは確かなようだ。
BMWが市販する電動スクーター「C evolution」

20分フル充電で130km走る

なお、充電方式は4輪EVでも普及しているCHAdeMO(チャデモ)を採用し、量産化の際には全国の充電スタンドで10分~20分程度で急速充電が可能になる見込み。ちなみにフル充電での航続距離は現状の130km程度からさらに伸ばす予定だという。もちろん家庭用電源からも充電可能だ。今回はプロトタイプということで車体もほとんどAD1 200を流用しているし、メーターも仮のデジタルパネルが代用されるなど試作車らしさが漂うが、量産車では外観デザインや装備も含めて大きくアップグレードされるはずだ。

さらにADIVAでは間もなく発売予定のフロント1輪&リヤ2輪のデリバリー専用EVモデルの「AD-Cargo」や、全く新しい2輪のEVモデルも開発中とのことなので期待したい。

静かでクリーンで快適な新世代の都市型モビリティが走り出す日も近い。

《佐川健太郎》

佐川健太郎

早稲田大学教育学部卒業後、出版・販促コンサルタント会社を経て独立。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。メーカーやディーラーのアドバイザーも務める。(株)モト・マニアックス代表。「Yahoo!ニュース個人」オーサー。日本交通心理学会員。MFJ公認インストラクター。

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