日産が考えるコネクテッドカーの価値とは…日産自動車 村松寿郎主管[インタビュー]

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日産が考えるコネクテッドカーの価値とは…日産自動車 村松寿郎主管[インタビュー]
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コネクテッドカーは、通信することによりWeb上に存在するひとつのモビリティとなる。そして、様々なオンラインサービスに組み込まれることにより、その付加価値は拡大する。そのような近未来にむけて、いまどのような手を打つべきか。日産自動車 コネクティドカー&サービス開発部主管の村松寿郎氏に聞いた。

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自動運転の現在地


---:日産の自動運転技術として、現時点では「プロパイロット」を普及させているところですね。

村松寿郎氏(以下敬称略):そうですね。高速道路同一車線自動運転技術。実際に使って見ていただいているお客さまからも好評をいただいています。

---:どのようなフィードバックがありますか。

村松:やはり、まず運転が楽だということです。あと私自身が使っている感想で言うと、車間距離をずっと自動で調整してくれるという安心感はあります。煩わしさがなくなりますし、疲労感が軽減します。

---:車間距離を維持するのは結構気を使いますよね。特に高速道路は。

村松:そうですね。さらにプロパイロットは、前のクルマと同じスピードで走ってくれることに加え、カメラで車線を認識して真ん中を走ってくれるので、非常に利便性が上がっていると思います。

今のところ、日本の『セレナ』『エクストレイル』『リーフ』、北米の『ローグ』『ローグスポーツ』『リーフ』、欧州の『キャシュカイ』『リーフ』に装備しており、プロパイロットを順次拡大していくつもりです。

通信方式は柔軟に


---:今後自動運転がより進化していくにあたり、通信も進化していきます。以前のお話では、セルラーかDSRCかではなく、地域に応じて使いわけるということでした。

村松:はい、それは変わりません。

セルラーV2Xの技術開発が進んできているので、弊社もやはりそういう新しい技術というのはきちんと見極めなければいけないということで、日本国内ではコンチネンタル、エリクソン、NTTドコモ、OKI、クアルコムと一緒に実証実験を始めようとしています。

我々としては、DSRCはもうずっと20年間携わってきた技術なので、大体素性が分かっています。それに対して、セルラーV2Xのほうがいいんだよと言う人も増えてきているので、本当にいいものなのか実験的に調べたいのです。

実験もしないで、新しい技術だからこっちのほうがいいと判断することはできない。使えないものを商品化しても仕方ないですし、きちんと使えるものを商品化します。

---:なるほど。日産はセルラーで行く、という話ではないんですね。

村松:V2VやV2Iをやろうとするときに、うちが単独でやっても何も意味がないです。僕らがセルラーが絶対いいと言っても、インフラはDSRCだよ、となればDSRCを積まざるを得ないわけです。

アメリカの場合はV2Xの法制化をDSRCで進めていたところが、パブリックコメントを募集した後 法制化がペンディングになっています。技術の良し悪しだけではないんです。

一方で中国に行くとセルラーV2Xでインフラ整備するという国の方針が決まっています。だとしたら中国ではセルラーを積まないと、インフラから得られるはずの便益が得られないですよね。

---:つい先日まで北京にいたのですが、実際に行くと特に渋滞がひどかったです。

村松:V2Xのアプリケーションは国ごとに違うものになるかもしれませんね。

---:それぞれニーズが違うから、ということですか。

村松:そうです。安全アプリなのかそれとも利便アプリなのか、それは国ごとにニーズが違うでしょう。

コネクテッドカーの難しさ


---:コネクテッド技術で何をしようとしているのか、それに対してどういうハードルがあるのか、どのようにお考えですか。

村松:ハードルという意味では、我々としてはすべてのクルマをつなぎたいという意思を持っているのですが、世界中のクルマをつなぎたいとなると、やはりそれなりの適用課題というのが非常にあります。

---:技術的なことですか。

村松:そのほかにも、国ごとに違う法律や通信キャリア、それから、つなぐ先のサーバーです。グローバルに一つのサーバーで統括できればいいのですが、いろいろな事情があり、ある程度地域的にサーバーを立てなければいけない。そういった課題があります。そして、どうしてもそこには費用がかかるので、それをどう回収していくのかというところ。課題だらけですね。

あと、すべてのクルマと言っているのですが、エントリーカーやライトコマーシャルビークルのような、コストが重視されるクルマにどうやってコネクテッドのソリューションを付けるか。そういったところも課題として出てきます。


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コネクテッドカーのベネフィットとは


---:コネクテッドカーによって、顧客に対してはどのようなベネフィットを提供するのでしょうか。

村松:コネクテッドカーがサービスのプラットフォームに組み込まれたとき、今までになかったものが生まれてくるかも知れないし、既に生まれているものもあります。いわゆるモビリティサービスがそうです。

いっぽうで、コネクテッドカーがサービスのプラットフォームに組み込まれるようになると、新たな課題として出てくるのがセキュリティの話です。

---:それは外部からの侵入や攻撃ということですか。

村松:侵入や攻撃もそうですし、なりすまし等もあります。例えばカーシェアリングにおいて、なりすましによってお金を払わずにクルマを使われる、という可能性もでてくるかもしれません。そういったものも含めた新たな課題が出てくるだろうと思います。

---:なるほど。顧客を守るためには解決しなければならない課題ですね。

村松:いっぽう別の意味の課題として、今までのクルマの商品企画を少し考えなおす必要があると思っています。これまではパーソナルユースのためのクルマとして商品企画をすればよかったのですが、サービスという意味での商品企画をしなければいけない。

---:モノの企画から広げて、クルマを利用したサービス、という視点で企画をするということですね。

村松:そうです。自動車産業の上流工程が変わってくるということです。ルノー・日産アライアンスで、アライアンス コネクティドカー&モビリティサービス事業部という部署を立ち上げており、そこでサービス企画もきちんとやっていこうとしています。

---:クルマを利用したサービスについて、メルセデスベンツの新型『Aクラス』にはスマートフォンによるバーチャルキーシステムが搭載されましたし、また同様に、トヨタから「スマートキーボックス」も発表されています。これらは個人間カーシェアリングも想定しているようですが、御社ではどのように捉えていますか。

村松:それが商品として魅力があるかどうかですよね。いわゆるスマートキーの機能が付いていて、個人間カーシェアリングしやすいですと。じゃあそれを理由にこのクルマを買いますか、ということだと思うんです。

そこはマーケットを見極めながら対応することだと思うのですが、そういう意味では企画というのがすごく難しくなってきていると思います。いろいろなことができるようになるから。

---:コネクテッドカーがどのようなベネフィットをもたらすか、今あること、これから発生してくることも想定して企画しなければいけないということでしょうか。

村松:そうです。クルマの開発は短くなったとはいえ、それでも2~3年かかるわけです。2~3年後にこういうサービスが主流になるということを想定した上で、機能を織り込んでいくという作業をしています。でもそのサービスのサイクルが非常に早いので、それにどうやって対応するかという点が非常に難しいところです。

---:クルマが、オンラインサービスに組み込まれたひとつのデバイスとして存在しているとして、サービスプロバイダーの立場で言うと、オンラインサービスに組み込みやすいコネクテッドカーがあれば優先的に使いたくなりますよね。

村松:組み込みやすいクルマを作らなければいけないと考えています。後からサービスを追加できるようなクルマプラットフォームにしておくというのが、これからの課題だと思っています。

---:すでにアライアンスのなかで議論が始まっているのでしょうか。

村松:まずはルノー・日産で、その後 三菱も含めたアライアンスで、クルマ側のインビークルインフォテイメント(IVI)と、インビークルコネクティビティ。この2点についてアライアンス内で統一化して、クラウド側もアライアンス内で統合して、ひとつのサービスをいろいろなところに適用しやすくする、という取り組みからスタートしています。

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《佐藤耕一》

日本自動車ジャーナリスト協会会員 佐藤耕一

自動車メディアの副編集長として活動したのち、IT企業にて自動車メーカー・サプライヤー向けのビジネス開発を経験し、のち独立。EV・電動車やCASE領域を中心に活動中。日本自動車ジャーナリスト協会会員

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