中国トヨタ 小林総代表 「外資規制撤廃は慎重に検討」…北京モーターショー2018

自動車 ビジネス 企業動向
中国トヨタ総代表の小林一弘 専務役員
  • 中国トヨタ総代表の小林一弘 専務役員
  • トヨタ研究開発センター(中国)社長の中尾清哉(なかおせいや)常務役員
  • 渉外・広報本部本部長の山岡正博 常務役員
  • 中国参入以来、成長を続けている
  • トヨタの製販体制。一汽トヨタ、広汽トヨタ、レクサス(輸入)の3チャネル体制。
  • 中国市場のグローバルでの位置づけ
  • 昨年度は需給体制の構築に注力したとのこと

トヨタは4月25日、北京モーターショー会場内の会議室において説明会を実施、昨年度の販売状況とともに、中国市場の動向と今年度の目標を発表した。また外資規制の撤廃に伴う独自資本による現地生産については「慎重に検討したい」との姿勢を明らかにした。

昨対比109% 140万台目標


中国トヨタ総代表の小林一弘専務役員は冒頭のプレゼンテーションにおいて、中国市場について「世界最大の市場であるとともに、これからも拡大する余地がある」と説明した。

また市場動向について、「SUVの伸びが顕著であり、かつ中国国内ブランドの品質が改善するなか、トヨタは中国に進出して以来、成長を続けている。昨年度は129万台の販売となった」と、競争が激化するなかでも成長を続けていることをアピールした。

また2018年度の目標については、「昨対比109%となる140万台を目標とする」と明かした。

外資規制撤廃「深い検討必要」


つづいて、メディアからの質疑に応えた。

Q. 中国政府が2022年をめどに自動車メーカーの外資規制撤廃を発表したが、どう考えるか。

A. 大変歓迎すべき内容だが、我々としては慎重に考えたい。中国で事業を行うためには、部品の供給や各種規制、地方政府との協議などの問題を総合的に考えければならない。独自資本で簡単にクルマが作れるわけではない。深い検討が必要だ。(小林氏)

Q. 輸入車の関税引き下げについてどう考えるか。

A. レクサス車についてはすべて輸入しているが、恩恵を受けるのはどのメーカーも同じだ。また(中国)国内生産車との競争もある。国内生産車を強化することは喫緊の課題であり、合弁相手とよく話していかなければならない。(小林氏)

Q. FCVの進捗、特に商用車についてどのような状況か。

A. エネルギー多様化の観点から、HV/PHEV/EV/FCVを用意して普及させていかなければならないというスタンスだ。10月から江蘇省常熟で『ミライ』の実証実験を開始する予定。FCVの受容性があるのか、3年かけて検証する。路面の状況、空気の状況、水素そのもののチェックをする。商用車の実証は米国でも進めている。(中国)政府筋が商用車を重視していることは認識している。CO2削減効果も大きい。中国でもテストができるよう準備を進めている。また水素社会の実現のためには、水素ステーションや配送などのインフラがとても重要だ。政府や学術機関との対話も進めている。(トヨタ研究開発センター(中国)社長の中尾清哉(なかおせいや)常務役員)

Q. 電動化、とくにHV(ハイブリッド)車についてどう考えているか。

A. 他地域と比較してNEV規制は厳しい。先駆けてやっていかなければならない。加えてCAFE(企業平均燃費)規制もとても厳しい。それにミートするためには、HV車の技術は非常に重要だ。『カムリ』や『カローラ/レビン』のHVを導入して以来、販売台数も上がっている。いろいろな電動化技術が必要だ。今回の北京モーターショーで発表したカローラ/レビンのPHEVもミックスしながら、規制だけでなく、中国の大気をキレイにすることにも貢献していく。(小林氏)

Q. 中国市場ではTNGAを訴求している。その理由は。

A. 商品に対する要求が高くなってきている。中国の人が求めるものは世界でも最新のもの。TNGAを通してトヨタの最新のものづくりを中国の人にお届けしたいという気持ちの現れだ。(小林氏)

Q. 滴々によるカーシェアリング企業プロジェクトへの参加について、滴々向け専用車の製造の可能性はあるか。

A. 滴々とは、今年1月にCESで発表した物流物販などのモビリティサービス専用車『eパレット』に関して協業した。今後についてはまだ決まったことは無い。(渉外・広報本部本部長の山岡正博 常務役員)

Q. テスラの事故による自動運転開発への影響について。

A. 中国は交通環境が大きく違う。独自の(自動運転車の)開発が絶対に必要だ。アメリカの事故とは関係なく、中国でのテストを始める準備をしている。(小林氏)

Q. 今期140万台という目標値は、生産能力がひっ迫しているから(控え目)なのではないか。

A. 今年初めに広汽トヨタの第三ライン、今年夏に天津(一汽トヨタ)の新第一ラインが稼働開始する。(生産よりも)一番の問題は、中国のお客様の好みが変化していることだ。ある車種が予想より売れなかったり、あるいは売れすぎたりすることが起きている。また、同じセグメントに大量の車種がひしめき合っている状況だ。トヨタらしい(生産販売の)オペレーションを徹底しなければ140万台という目標は達成できない。中国のマーケットは甘くないということはお伝えしておきたい。(小林氏)

《佐藤耕一》

日本自動車ジャーナリスト協会会員 佐藤耕一

自動車メディアの副編集長として活動したのち、IT企業にて自動車メーカー・サプライヤー向けのビジネス開発を経験し、のち独立。EV・電動車やCASE領域を中心に活動中。日本自動車ジャーナリスト協会会員

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