【ボルボ XC40 試乗】過去最高!秀逸のボルボ…中村孝仁

試乗記 輸入車
ボルボ XC40
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このところ、国産メーカーが頑張って良いクルマを次々と出してくる。性能的にも品質的にも。だから、敢えて輸入車に乗る真っ当な理由は一体何だ?という疑問が、頭の隅で飛び交っていたのだが、真っ当な理由があった。

それは日本車じゃまずやらないデザインである。じゃ、デザインだけで選ぶわけ?と突っ込まれるかもしれないが、今の自動車、やたらと安全について叫び、日本メーカーも遅ればせながら、安全装備を充実させてきてはいるものの、やはり抜きんでたボルボやメルセデスには敵わない。ここでも選ぶ理由があるし、もう一つ走りの特徴という点でも十分に選ぶ価値がある。

今回のボルボ『XC40』にしても、アルファロメオ『ジュリア』にしてもあるいはシトロエン『C3』にしても、日本車が真似できないレベルの乗り味を、ちゃんと演出している。やはり輸入車には輸入車の良さがある、ということだ。

さて、XC40である。従来はなかったコンパクトセグメントのSUVを投入してきた。それもCMAという名の、全く新しいプラットフォームを用いて。ボルボはこれよりサイズの大きなモデルにはSPAと名付けたプラットフォームを用いているが、今回はコンパクトモデル専用の新たなプラットフォームを開発し、今後『V40』などにもこれを使って行くことになっている。

SPAを用いる『XC90』にしても『XC60』にしても、その走りの印象は、ライバルと目される例えばXC90ではBMW『X5』と比べると少々フラット感に乏しく、XC60の場合もアウディ『Q5』に比較して、走りの面では少し落ちるのかな?という印象だった。ところがこのCMAは違う。どうやらSPAで言われたネガをすべて潰してきた感があり、乗り出した瞬間から、あれ?こいつ、妙にフラットだし、ノーズの入りが良く、スパッと向きが変わるなぁ…。箱根のワインディングを少し攻めてみると、実にシャープな走りが楽しめる。試乗車はRデザインで、オプションの20インチタイヤを装着する。しかし、そのサイズを考えれば十分に優秀な乗り心地。特にそのフラット感は、過去どのボルボでも得ることの出来なかった最高のものだ。

いわゆる「ファースト・エディション」で、まだ他のグレードやエンジンのモデルは用意がないが、今回のモデルは「T5」の名を持つ、2リットル252ps、350Nmのスペックを持つもの。後々190ps版のユニットや、PHEVの設定もあるということだが、何故かディーゼルを導入する予定はないという。これは甚だ残念なこと。まあ、電動化に舵を切ったボルボらしい決断といえなくもないが、もう少しディーゼルを味合わせて欲しかったというのが本音である。

冒頭、輸入車を選ぶ理由の一つとして挙げたデザイン。エクステリアで目を引くのはシャープに切れ上がったリアウィンドゥ。この種のデザインを採用すると、リアシートからの視界が阻害されて、結果としてリアの住人には圧迫感のある空間を作り出してしまうのだが、ボルボの場合全くそれがなく、このデザインを採用しながらリアの解放感も実現しているのには驚かされた。ただ、リアシートのバックレストは若干立ち気味で、リクライニング機構もつかないから、長距離はゆっくり休める感覚がなさそうだ。

もう一つ大胆だと思ったのは、鮮やかなオレンジ色のフェルト調のテキスタイルを、ドア内貼りやフロアに採用していること。これはオプション設定だそうだが、この鮮やかさは国産では真似できまい。それに驚いたことにフロントドアからオーディオスピーカーを撤去し、ラップトップPCが入る大きなドアポケットを作ったところも、このクルマの大きな特徴。因みに撤去されたスピーカーはダッシュ内に収められている。そしてオプションのハーマンカードンのオーディオは実に良い音。これでオプション価格約10万なら全然OKだ。

ユニークなデザインはさらに続き、上級XC90やXC60と基本全く同じインフォテイメント、ボルボ・センサスを搭載し、センターには縦長のディスプレイとその両脇に同じく縦長のベンチレーターが装備されるのだが、こいつを反復したように、左右のベンチレーターも同じく縦長に。かなりユニークなデザインで、そいつが昔の『エドセル・フォード』(この名前でググってみてください)のセンターグリルそっくりだから少し笑えた。遊び心もある。フェンダー上には何とスウェーデンの国旗が。それも洋服のタグよろしく付けられているのだから、何とも微笑ましい。

輸入車を買う真っ当な理由の話をしたが、一方でこのクルマ、日本車のような細やかな配慮もある。センターコンソールにはティッシュボックスを収納できる大きなスペースがあり、その前方には使ったティッシュを捨てるゴミ箱まで装備された。花粉症の身としてこれほど有難いと感じた装備はない。それだけではなく、カーゴスペースは床面を立てるとその背後に物を乗せて固定出来たり、床面の下には取り外したトノカバーをきっちりと仕舞えるスペースが用意される等々、軽自動車に見られるような細やかでアイデアものの装備もあるのだ。

少なくともデザイン、走り、そして使い勝手と3拍子揃ったボルボである。間違いなく史上最高の出来を持ったボルボだ。

■5つ星評価
パッケージング ★★★★★
インテリア居住性 ★★★★★
パワーソース ★★★★★
フットワーク ★★★★★
おすすめ度 ★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来40年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。 また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
 

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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