ディーゼルエンジンはVWの長期戦略で重要なパワートレイン…VW パサートTDI

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フォルクスワーゲングループジャパン(以下VGJ)はディーゼルエンジンを搭載した『パサートTDI』と『パサートヴァリアントTDI』の販売を開始。日本のポスト新長期排ガス規制をクリアしたTDIエンジンを採用している。

◇内燃機関は2025年でも重要なパワートレイン

ディーゼルエンジン発売を踏まえドイツVW本社より、先進ディーゼルエンジン開発部長のポット氏が来日し、基調講演が行われた。そこで、「ディーゼル開発はVWの長期戦略で重要であり、ディーゼルを含む内燃機関の技術革新を続けていく」というコメントが発表された。

VWは2025年に EV 比率を25%まで高めるという戦略目標を掲げており、ハイブリッド車両はおよそ30%と想定。これは、現在バッテリーEVとプラグインハイブリッドのシェアが約3%なのでとても高い目標直である。一方、内燃機関系のパワートレインは75%程度(含むハイブリッド)で、内燃機関のさらなる開発が不可欠であることを明示しているのだ。

そうした内燃機関のひとつであるディーゼルエンジンだが、現在VWが販売し、そして日本に導入したディーゼルエンジンは EGRやSCR などの排ガス浄化システムを備えた「EA 288型」TDIエンジンで、欧州のEuro6はもちろん、日本のポスト新長期排ガス規制にも適合している。

ポット氏によると、この2年間多くの独立機関がフォルクスワーゲンやその他の競合ディーゼル車の台上及び実際の路上での排ガステストを行なっており、その中で、2017年夏、ドイツ自動車連盟が発表した結果によれば、「フォルクスワーゲンのEuro6適合車44台を含む計200車種を対象にしたテストの結果、VWグループ車両は上位に入っている」という。

また、ポット氏は基調講演の中で、排ガス処理の課題と将来的な技術的解決策を示した。現在の「SCRでは、約220度から650度を超えるまでの幅広い作動範囲で、90%を上回るとても高い効率を得られているが、排気温度が低い冷間始動時や市街地走行では、SCRの機能を最大限発揮することが出来ない」と説明。今後さらに厳しくなる排ガス基準に有効な手段として、「SCRと上流のNOx吸蔵触媒を組み合わせ、これによりNOxの処理範囲、すなわち作動領域を150度未満まで拡大させて冷間始動時と市街地走行時の処理性能を大きく改善させる」とした。

◇日本の輸入車の伸びにクリーンディーゼルも貢献

今年1月末の日本自動車輸入組合(JAIA)理事長会見において、純輸入車の販売が2年連続で前年実績を越え、20年ぶりに30万台を超えたと発表された。その主な要因は、各社が積極的なクリーンディーゼル乗用車の導入が挙げられ、クリーンディーゼル車は前年比で31.4%伸び、純輸入車販売台数の2割に達している。

このような市場の背景を受け、「VGJでもディーゼル車の魅力である、力強くスポーティで快適な乗り味。そして優れたランニングコストとともに、幅広いパワートレインへの要望に応えるべく、積極的に訴求していく」とはVGJ広報部の山神浩平氏の弁。そして、「二酸化炭素の排出削減に貢献できるクルマとして、ディーゼルに関心の高いお客様を中心に、幅広いニーズに応えていきたい」と述べる。

◇高圧と低圧の2つのEGRを装備

日本仕様のディーゼルエンジンについて山神氏は、「基本構造は欧州や多くの海外市場向けと同じで、このエンジンシリーズは昨年200万機生産された」とし、「日本仕様では2本のバランサーシャフト付きベースエンジンを使用し、バルブ駆動型モジュールを組み込んだシリンダーヘッド、インタークーラー付き吸気システム、高効率の排ガス後処理システムという4つのモジュールで構成されている」と説明。

特に排ガスについては、「エンジンからの排出物と燃費、この双方を同時に削減するために高圧と低圧の2系統のEGRを装備している」という。高圧EGRではターボの手前で排ガスを捉え、インタークーラーとシリンダーヘッドの間にある吸気マニホールドに最短距離で送り込む。低圧EGRではDPFから出た浄化済みの排ガスを捉え、ターボの手前に送り込むシステムだ。

実際の作動では、冷間始動のほぼ直後に高圧EGRが作動し、比較的温かな排ガスで吸気を加熱。これによりエンジンからの未処理排出物、特にHCとCOが大幅に減少し、排ガス後処理システムの起動をサポートする。また、「結露はほぼ完全に防止できスムーズな燃焼によってエンジンの騒音も低減する」と山神氏。そして、エンジンが温まってくると高圧と低圧双方のEGR経路を用い、燃料の消費を減らし排ガス後処理の温度管理をさらにサポートする。エンジンが通常燃焼温度にある時は、高圧EGRからのサポートは不要となり、低圧EGRのみでエミッションとCO2を削減する。

◇ツインジェットのSCRシステムを採用

山神氏は、「VWは現行のエンジンで現在の排ガス基準に適合できるよう、排ガスの後処理方法を従来のものから完全に一新している。温度損失を最小限に抑え、排ガス後処理装置の機能を最大限にするために全てのコンポーネントを可能な限りエンジンの近くに配置している」と話す。

まず酸化触媒をターボの真下に置いたことで、素早く作動温度に達しHCとCOの高い変換率を実現。そしてSCRコーティングしたDPFを酸化触媒の下流に配置したことで、微粒子とNOxの双方を効率的に低減している。さらに、NOxを90%低減するためにSCRシステムにはAdBlueを使用。AdBlueの消費量目安は1000 km 走行ごとに最大1.5リットルから2リットルを消費するという。つまり、「9,000kmから1万5000km走行ごとにAdBlueの補充が必要ということだ」と山神氏はいう。

また排ガス後処理システムで、NOxの低減効率を最大にするためには、SCRシステムの上流での緻密なAdBlueの均一性が求められる。そのためVWでは新たに、ツインジェット噴射システムを開発し、均一性を高めた。山神氏は、「これにより完璧な均一性を達したことに加え 、基本システムと比較して燃費とエンジン性能にとって重要なシステム背圧を大幅に削減している」と述べた。

最後にTDIのユーザー層についてVGJ営業本部商品企画課プロダクトマネージャーの沢村武史氏は、「まずは基盤のパサートユーザーを中心に訴求・展開し、そこから広げていきたい」とコメントした。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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