気になるニュース・気になる内幕---今日の朝刊(朝日、読売、毎日、産経、東京、日経の各紙・東京本社発行最終版)から注目の自動車関連記事をピックアップし、その内幕を分析するマスコミパトロール。
2017年11月7日付
●トランプ氏貿易赤字改善求める、日米、北へ最大限圧力、首脳会談(読売・1面)
●日産、資格試験解答教える、研修で一部従業員に(読売・2面)
●神鋼製鉄粉・鋼管トヨタが安全確認(読売・8面)
●スバル、リコールに100億円、無資格検査対応費用積み増し(朝日・9面)
●東京モーターショー、来場者低迷止まらず、前回から5%減(朝日・9面)
●タカタ、負債1兆500億円、確定へ(朝日・9面)
●日産きょう生産再開、無資格検査、国内5工場で順次(毎日・2面)
●VW「ゴルフ」EV日本市場開拓へ「足がかり」(産経・10面)
●米国車の規制一部緩和、日米首脳会談(産経・11面)
●東南アジア車販売回復続く、タイやフィリピンけん引(日経・13面)
●佐川急便の持ち株会社、東証、来月上場を承認、今年最大規模(日経・15面)
●ニュース一言、三菱ふそう松永会長(日経・15面)
●いすゞ、純利益上振れ、今期16%増、タイで小型車販売(日経・19面)
ひとくちコメント
「信頼回復を最優先に考えて当初50億円と見込んでいた費用を上限100億円にしたのは、顧客にきちんとした対応を取りたいためです」
スバルの2018年3月期第2四半期の決算説明会でも、吉永泰之社長は冒頭、資格のない従業員による完成車両の検査問題に触れ、「ご心配、ご迷惑をおかけしたことを改めておわびします」と陳謝。さらに、その問題に対応する費用として、100億円を見込んでいることも明らかにした。
吉永社長が決算説明会の場で幾度も使っていたのが「きちんと」という言葉。安倍首相がよく使う「丁寧な」とも似ているが、誠実な語り口とわかりやすい説明では吉永社長の「きちんと」のほうがより信頼感を与える印象がある。
そんな「きちんと」とも「丁寧な」説明もほとんどなされないまま、さらに安全や法令順守に対する信頼が損なわれそうなのが、スバルよりも先に無資格検査問題が発覚した日産自動車だ。
日産は国内全6カ所の完成車工場のうち5工場について、無資格検査問題を受けて停止していた車両の生産・出荷を7日から順次再開すると発表。国土交通省の立ち入り検査で、再発防止策の確認が得られたとしている。きょうの各紙も「日産5工場、生産再開、完成検査態勢整う」(日経)などと報じている。
一方で、約2週間ぶりの再開に水を差すような記事も飛び出した。朝日は1面で「日産、監査時のみ適正装う」とのタイトルで「複数の工場では国が監査に入る際、その日だけ無資格者を検査業務から外すなど、組織的に適正を装う工作が行われていたことが新たにわかった」と伝えている。
しかも「一部の工場では、監査時に有資格者であることを示すバッジを無資格者に配り、問題がないと見せかけていた」という。さらに、朝日によると「監査では不正に関する資料のデータが、パソコン上の『ゴミ箱』から出てきたケースもあった」とも。
また、読売なども「日産、資格試験解答教える、研修で一部従業員に」との見出しで大きく取り上げているが、「資格を取得する社内試験を受けた際、事前に関係者から試験の解答を教えてもらったことが、弁護士など第三者を含む社内調査チームの調査でわかった」という。
正規の検査員の資格取得でも不正が明らかになったようで、「早期の正常化や、再発防止策の徹底などの課題はなお重く、再開後も問題の影響が続きそうだ」(毎日)とみられる。
無資格検査問題では、制度そのものが時代に即さないとの指摘もあり、検査制度の抜本的な見直しに真剣に取り組むことも必要であるが、日産もスバルも“ルール違反”にはかわりない。
日産ではあす11月8日午後には、今年度の中間決算とともに、先延ばしになっていた「次期中期計画」を西川広人社長が発表する予定である。だが、東京モーターショーでは、自工会会長という責務を放棄し、トヨタ自動車の豊田章男社長が会長を代行するなど対外的にも迷惑をかけている。
日産のトップとして改めて経営責任が問われることにもなるが、出処進退とともに、スバルの吉永社長のように謙虚な態度で「きちんと」した説明責任を果たせるのかも、注目したい。