【レッドブル・エアレース 最終戦インディアナポリス】室屋がダブル優勝!…決勝の1日

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表彰台でシャンパンを掛け合って喜ぶ3位のソンカ(左)、優勝した室屋(中央)、2位のベラルデ(右)
  • 表彰台でシャンパンを掛け合って喜ぶ3位のソンカ(左)、優勝した室屋(中央)、2位のベラルデ(右)
  • 室屋選手が年間チャンピオンのトロフィーを受け取ると、会場には紙吹雪が舞った。
  • 3位のソンカ(左)、優勝した室屋(中央)、2位のベラルデ(右)。
  • Final 4で初の1分03秒台をマークした室屋選手のフライト。
  • 予選でのフライトとは打って変わり、決勝で室屋選手は切れのある速さで果敢に攻める。
  • 室屋がFinal 4を終えると、モニターには1分03秒026秒を記録が映し出された。
  • Final 4で1分05秒546を獲得し最終戦2位となったドルダラー。
  • Final 4で1分05秒829で最終戦第3位となったベラルデ。

日本人パイロットの室屋義秀選手が10月15日(現地時間)"空のF1"とも呼ばれる「レッドブル・エアレース」の最終戦で優勝。同時にアジア人として初となる2017年シリーズ総合優勝も獲得した。その歴史的瞬間を生み出した決勝当日の一日を振り返った。

決勝当日、インディアナポリスは朝から激しい雨と風に見舞われていた。そんな状況で果たして決勝は開催できるのか。会場に着いてそんな不安を抱きながらレースの開催を待っていると、先に届いたのはチャレンジャークラス決勝中止の知らせ。マスタークラスも同じ対応となれば予選での結果が反映されてしまう。室屋にとって、それは最悪のケースだ。

室屋は、今シーズンサンディエゴ(アメリカ)、千葉(日本)、ラウジッツ(ドイツ)で優勝を果たし、年間総合ポイントはトップのマルティン・ソンカ(チェコ)に4ポイント差にまで迫っていた。しかし、シーズン中盤で奮わなかったことで、室屋がシーズン優勝を獲得するには、最終戦で優勝した上でソンカが3位以下にならければならない。

そんな中、前日に行われた予選で室屋は、エンジンの吸気系トラブルによりシリンダー一つが思うように機能しない状態で、全体で11位と思いがけない下位に沈んだ。一方で、ソンカは全体で4位と比較的好調で、もし決勝中止となればこの予選の結果が反映されてしまう。

昼を過ぎると天候が徐々に回復してきた。ただ風はなかなか収まらない。12時半を過ぎた頃、事務局からは20分ディレイで開催の知らせがまず届く。「大丈夫なのか……」と不安を抱きつつ待っていると、13時前に、決勝スタートは45分ディレイで最終決定との連絡が届く。パイロンが若干揺れているものの、何とかなりそうな雰囲気だ。そうして、最終戦の決勝「Round of 14」はスタートした。

Round of 14での見所は、第2ヒートで直接対決する室屋とソンカ。年間ポイントの上位2名が早くもこの時点で“頂上決戦”で向かい合うこととなったのだ。Round of 14での対決では室屋選手が勝ち、その後の敗者復活でソンカも「Round of 8」へコマを進めた。

Round of 8での室屋は第1ヒートでミカエル・ブラジョー(アメリカ)と対決。この日、調子を徐々に上げていた室屋はここで1分04秒557秒と好タイムをマークし、難なくミカエル選手を制した。

一方のソンカは予選で最速を記録したマット・ホール(オーストラリア)と対戦。ここでマットはパイロンカットを含むペナルティ加算を繰り返す“らしくない”ミスを犯し、5ポイントもの減点。これによって、ソンカも「Final 4」への進出が決定した。室屋とソンカとの“因縁の対決”が最初から仕組まれていたような展開だ。

いよいよ最終のFinal 4がスタート。室屋はタイムをどこまで伸ばせるか。また、他の選手がソンカを押さえるだけのタイムを引き出してくれるか。

室屋はFinal 4のトップとしてアタックし、かつてないスピードと切れでコースを攻める。明らかに速い! 室屋はノーミスで1分03秒026秒という驚きのタイムをマーク。室屋自身も経験がない1分03秒台だ。観客席はこの日最高の絶叫に包まれた。

実はFinal 4での室屋の飛行はハラハラドキドキの連続だった。勢い余って機体が反転してしまいそうになり、「パイロンヒットか!?」と誰もが思った時があった。しかし室屋は機体の姿勢を強引に修正し、なんとかかわす。レース後のインタビューで室屋は「自分でも本当によくかわせたなと今でも思っている。(これがなかったら)1分3秒台なんてあり得ないでしょ」と自分で出した大技に信じられない様子だった。

その後に続いたマティアス・ドルダラー(ドイツ)も、フアン・ベラルデ(カナダ)も果敢に攻めて、ともに1分5秒台を記録するが、室屋には及ばない。ただ、このタイムはソンカにとっては嫌な展開だったはずだ。無難に攻めればタイムは稼げないし、思い切って攻めればミスを誘発しかねないからだ。

ソンカが飛び立つと、動きにイマイチ切れがない。モニター上に映し出されたセクター毎のタイムは室屋選手から遅れていることを示す赤が並び始めた。「これはもしかしたら……」。我々の期待値が上がる。そして最後のセクターも赤となってタイムは思いがけない1分07秒280秒。

この瞬間、室屋選手の最終戦での優勝が確定した。さらに、ソンカのタイムが3位の選手を上回らなかったことで、室屋選手はアジア人初の「レッドブル・エアレース・ワールド チャンピオンシップ2017」の総合チャンピオンとなった。

最終戦は番狂わせが最後の最後まで続き、予想がつかない状態が続いた。これまでのエアレースで、最後の最後まで展開がもつれ込んだ例は記憶にない。日本から駆けつけた室屋ファンや報道陣にとっては心臓に悪い展開だったが、レースとしては最高の盛り上がりを見せることとなった。

なお「チャレンジャークラス」では、女性初のエアレース選手であるメラニー・アストル選手(フランス)が大会優勝を果たした。
室屋が優勝、年間タイトルも獲得[リザルト]…

《会田肇》

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