【新聞ウォッチ】不適切検査”やっちゃった日産”、「謝罪会見」軽視の経営陣

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気になるニュース・気になる内幕---今日の朝刊(朝日、読売、毎日、産経、東京、日経の各紙・東京本社発行最終版)から注目の自動車関連記事をピックアップし、その内幕を分析するマスコミパトロール。

2017年10月2日付

●免許返納者介護保険で送迎、新指針買い物弱者も(読売・29面)

●LEDの目、JR東海次期新幹線(毎日・26面)

●内閣不支持46%と逆転、比例自民24%,希望14%(東京・1面)

●マツダ、設備投資最大に、1500億円、来年度3割増、簡易型HVを投入(日経・5面)

ひとくちコメント

おなじみのCM「やっちゃえ日産」が「やっちゃった日産」ではシャレにもならないが、日産自動車の国内車両組み立て工場で発覚したずさんな検査体制の問題が、波紋を呼んでいる。

自動車メーカー各社では、道路運送車両法に基づき、出荷前の最終段階で「完成検査」を実施するが、本来は国が行う検査を、それぞれの工場で代行。それを社内で「完成検査員」と認められた従業員が検査する必要があるが、日産では、国内の全工場で無資格の補助検査員も行っていたという。

9月18日以降に国土交通省が日産車体湘南工場に抜き打ちで立ち入り検査して発覚したそうだが、日産では先週末(9月29日午後7時)に緊急会見を行って発表した。

翌30日の各紙には、1面や経済面、そして社会面に「日産、無資格者が検査、在庫全車種を登録停止」(朝日)や「検査不備、日常的か」(東京)などと、大きく報じていた。

ただ、緊急会見では、原因となった検査不備の背景や再検査体制の進め方などについては「調査中」のこともあり、2日後の10月1日の朝刊は、毎日が「日産、販売店懸念広がる」、日経が「日産、大規模リコールも、管理体制の落とし穴」などと、取り上げていたが、他紙には関連記事はなく、きょうの各紙も続報は見当たらない。

無資格者が検査を行っていた問題で、日産が問われているのはずさんな検査体制ばかりでなく、ブランドイメージや業績への悪影響も避けられないほどの危機管理体制についても疑問が残る。日産が記者会見で謝罪したのは、企画・管理と広報担当の部長クラスの幹部社員だった。

昨年4月に、燃費不正が発覚した三菱自動車では、当時の社長や技術担当役員が会見し、深く頭を下げたのとは大きな違いである。仮に会長や社長が出席しないまでも、経営責任のある役員クラスが謝罪し、説明するのは当然のことで、販売店や顧客を軽視していると思われても仕方ないだろう。

現在、日産の西川広人社長は日本自動車工業会の会長に就任しているが、三菱自動車の燃費不正問題に対しては「あってはならないこと」と強調していた。今月末には東京モーターショーも開幕するが、今度は法令順守を軽視したようなお家の一大事にどんな答弁をするのかも興味深い。

それにしても、「日常的となっていた可能性もある」とみられる検査不備の問題をなぜ、国交省は衆院解散のタイミングとほぼ同時に、抜き打ち検査を実施したのか。石井啓一国交相といえば、三菱自動車の問題でも「厳正に対処した」ことでも手柄を上げた公明党出身の大臣である。

今回も「安全性の確保と再発防止の徹底について厳正に厳正対処していく」とのコメントを出したそうだが、この際、民間に丸投げ状態の「完成車検査」の現行システムについても不備はないのか検証するべきではないだろうか。

《福田俊之》

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