【レクサス LC】ドリフトできるハイブリッドにしたかった…HVシステム制御開発者

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レクサス LC500h
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レクサスのラグジュアリークーペ『LC500h』に搭載されるマルチステージハイブリッドシステムには、電気式無段変速機ながら、LC500に搭載される10速ATと同様に、10段の変速制御を設け、リニアな感覚を実現しているという。

Dレンジでもリニアな感覚を重視

「LC500hの変速機の開発にあたっては、まずマニュアルモードがあるハイブリッドを作ろう。そして、ドリフトが出来るようにしたい。この二つから始めた」とは、レクサスインターナショナルHVシステム制御開発主任の加藤春哉さんの弁。

まず、マニュアルモードではギア比をどうするかが課題となったが、「クロスレシオにし、また、変速する速さは早い方が気持ちいいので、それを可能にした。更に、ブリッピングをして音の演出を加えるなど、やりたいことをピックアップしながら、実現していった」と話す。

そうした中で加藤さんがこだわったのはリニアな感覚だった。当初、Dレンジは他のハイブリッドと同様、変速感がなく、エンジンの回転が上がってから速度が付いてくるという感覚だったという。しかし、「エンジン回転数と車速がリンクしてリニアに上がっていく感覚が絶対に必要だ」とし、Dレンジでも変速点を設けることになった。

一方で10速の変速点を設けるとV6エンジンではパワー不足となり、アクセルを踏むとシフトダウン、離すとアップしてしまうことが頻繁に起こってしまった。そこでAIシフト制御の導入が図られた。「マニュアルでシフトするとしたら、ここではシフトしないだろうなど、違和感をなくすことを目的に、AIの作り込みを2週間ぐらい北海道のテストコースで、欧州を模したワインディングやサーキットを走りながら行った」と加藤さん。

通常、コーナーに侵入する際、ドライバーはブレーキを踏みながらパドルシフトでシフトダウン操作を行う。それをAIシフト制御により、ドライバーはアクセルやブレーキ、ステアリング操作に集中し、変速はGを感知しながら自動で行うことが可能になったのだ。

ドリフト可能なハイブリッド

何故ハイブリッドはドリフトが出来なかったのか。加藤さんは「モーターや電池などの電気部品を保護しなければならないからだ」と説明する。電池のパワー状況に関しては、モーターがしっかりと管理することが重要だ。その管理のひとつに速度があり、それはセンサーで行っている。しかし、ドリフトするということはタイヤが滑るので、そのセンシングに遅れが発生し、パワーの管理にずれが生じてしまうのだ。

そこで、「センシングは今まで通りだが、センシングの遅れを補てんする制御を導入。遅れはどこにあるかをひとつひとつ洗い出し、地道にひとつずつ潰した結果、滑らせても大丈夫になった」とコメント。因みに、このセンシングの遅れを補てんしなかった場合、「すぐには壊れないが、メーカーとして保証しなければいけない耐久性が若干落ちてしまうことがある」と述べた。

CVTでも官能的な走りを実現

「実はDレンジで加速していくと、少しショックを演出した部分がある」と加藤さん。今回タコメーターを装備しているので、それを観察しているとシフトタイミングでの上下動時に僅かにショックを感じることが出来る。加藤さんは、「エンジン回転が上下動しているのに、加速Gがショックなく滑らかなのは人間の感覚として不自然に感じてしまうのではないか」という。そこで、「変速時の余分なパワーを少し下げることで、あえて変速感を模している。これは完全に官能の世界だ」とし、あくまでもドライバーに違和感を覚えさせないよう、こだわりを持って開発していったことを語った。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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