【INTEL自動運転ラボ訪問】米インテル、自動運転デファクト目指す2つの戦略

半導体大手のインテルは、米カリフォルニア州サンノゼ市で5月3日(現地時間)、自動運転の研究開発拠点となる「アドバンスド・ヴィークル・ラボ・イン・シリコンバレー(Intel Advanced Vehicle Lab in Silicon Valley)」を正式にオープンした。桃田健史がレポートする。

自動車 テクノロジー ITS
デルファイが用意した、レベル4の自動運転車に公道で試乗した
  • デルファイが用意した、レベル4の自動運転車に公道で試乗した
  • デルファイが用意した、レベル4の自動運転車に公道で試乗した
  • 【INTEL自動運転ラボ訪問】米インテル、自動運転デファクト目指す2つの戦略
  • 【INTEL自動運転ラボ訪問】米インテル、自動運転デファクト目指す2つの戦略
  • 【INTEL自動運転ラボ訪問】米インテル、自動運転デファクト目指す2つの戦略
  • インテルキャンパスと呼ばれるソフトウエア開発拠点の一角に、シャッターを開けた”ガレージ”に到着
  • 【INTEL自動運転ラボ訪問】米インテル、自動運転デファクト目指す2つの戦略
  • 【INTEL自動運転ラボ訪問】米インテル、自動運転デファクト目指す2つの戦略

半導体大手のインテルは、米カリフォルニア州サンノゼ市で5月3日(現地時間)、自動運転の研究開発拠点となる「アドバンスド・ヴィークル・ラボ・イン・シリコンバレー(Intel Advanced Vehicle Lab in Silicon Valley)」を正式にオープンした。桃田健史がレポートする。

これに伴い、同ラボでメディア向けの「オートノーマスドライビング(自動運転)ワークショップ(Autonomous Driving Workshop)」を開催し、インテルが自動車メーカーなどとすでに行っている自動運転の研究開発の詳細について説明した。同社がこうしたイベントを行うのは初めだ。

インテルは、2016年6月に独BMWとイスラエルの画像認識に関するベンチャー企業のモービルアイ(Mobileye)との連携、また12月には自動車部品大手の米デルファイとの業務提携を発表している。
モービルアイの、単眼を横に3つ並べた、「トライ・フォーカル」システム。(写真中央)
2017年に入ると、1月には地図開発の世界最大手である独Hereの発行株式の15%を取得。

さらに3月には、モービルアイの153億ドル(同日の為替レート換算で1兆7500億円)という巨額の買収の交渉が始まるなど、インテルのアグレッシブな動きに対して自動車とITの両業界に激震が走った。

なぜならば、モービルアイは単眼カメラによる画像認識で、事実上の世界標準であり、米GM、独BMW、スウェーデンのボルボ、そして日系では日産の「プロパイロット」やマツダの「i-ACTIVSENSE」などはモービルアイが開発したアルゴリズム(解析理論)と半導体の設計要件(SoC:システム・オン・チップ)を採用しているからだ。

日系メーカーの開発幹部は「インテルが本気で自動車の走行性能やデータ解析の領域に参入してきたことで、業界図式が大きく変わる可能性があり、我々としても戦々恐々している」と語っている。

こうした状況の中で開催された今回のワークショップには、欧米や韓国、中国のメディアも注目しており世界各国からの参加があった。日本からはレスポンスの他、IT系の媒体から1社参加した。

自動運転実験車両ガレージに踏み込む

気温25度を超える快晴の下、インテルキャンパスと呼ばれるソフトウエア開発拠点の一角に、シャッターを開けた”ガレージ”に到着。

ここには通常、複数の種類の自動運転実験車両が配備されている。例えば、フォード『フュージョンハイブリッド(Fusion Hybrid)』には、車体ルーフの上にはグーグルやトヨタなどの自動運転の実験車両と同様に、レーザーレーダー(ライダー)が装着されている他、カメラ、ミリ波レーダーなどの車体の各所にセンサーを埋め込まれている。

また、リンカーン『MKS』では完全自動運転における、顧客へのサービスを実証。スマートフォンで完全自動運転車を呼び、MKSが到着すると、後席ドア上部のディスプレイに「ようこそ○○さん」とメッセージを表示。そこにスマートフォンをかざすとドアが開錠される。後席に座ると、大型のディスプレイに4桁の暗証番号を打ち込む。すると、事前に登録した行先が地図で表示され、OKボタンを押すと自動運転が始まる仕組みだ。

また、センタークラスター上部のディスプレイには、走行状態について説明が出る。
例えば、現地到着して縦列駐車している際には「パーキング中なのでしばらくお待ちください」とか、後部から追突された場合「事故発生のため、一時的に進路を外れ停車します」「サービスセンターに連絡中です」といった具合だ。インテルではこうした実証をカリフォルニア州内で定常的に行っている。

この他、BMW USAが持ち込んだ7シリーズでは、米国家道路交通安全局(NHTSA)が規定するレベル4 の実験車両で、アメリカではカリフォルニア州内で、その他欧州や中国など世界に40台が配備されて、2021年の「BMW iNext」としての量産を目指している。
BMW USAが持ち込んだ7シリーズでは、米国家道路交通安全局(NHTSA)が規定するレベル4 の実験車両で、アメリカではカリフォルニア州内で、その他欧州や中国など世界に40台が配備されて、2021年の「BMW iNext」としての量産を目指している
また、インテルは自動運転の開発者向けに、センサーから収集したデータを自動でラベリング(分類)し、走行時の動画とデータを同期させることができるSDK(ソフトウエア・デベロップメント・キット)を無償で公開している。

その他、デルファイが用意した、レベル4の自動運転車に公道で試乗した。位置精度が数センチとなるRTK(Real Time Kinematic)方式のGPSと、ライダーなど26個のセンサーを搭載する。走行中、運転席の運転管理者がウインカーを出さなくても、設定されたルートで大通りでの車線変更と交差点での右折をとてもスムーズな動きで実行した。

<インタビュー>目指すのは、自動運転のデファクトスタンダード


インテル自動運転部門の筆頭副社長ダグラス・デイビス氏
ワークショップ開催中に、自動運転部門の筆頭副社長である、ダグラス・デイビス氏を捕まえて協業の目指すところを聞き出した。

それによると、インテルが自動運転で目指すのは、事実上の世界標準であるデファクトスタンダード。その実現に向けて現状では2つの方策があるという。

ひとつは、インテルは、BMW、モービルアイと共同で、車載の各種センサーからクラウドを介してデータセンターでビックデータの解析を行う”技術的なプラットフォーム”の確立だ。

もうひとつが、デルファイへの技術提供により、デルファイが自動車メーカー各社に向けた技術プラットフォームの販売。

これら2つの方策は同時進行し、状況を見ながら融合させるという。

なお、モービルアイについては現在、買収に向けた事務手続き中であり、買収が完了するのは今年末頃。それまでは、画像認識技術はモービルアイが従来持っていた事業戦略を維持するが、来年以降については現在未定だという。

《桃田健史》

編集部おすすめのニュース

特集