【メルセデスベンツ Eクラス 試乗】 世界最高の先進技術満載は間違いないのだけど…中村孝仁

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メルセデスベンツ E200
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満を持して登場したメルセデス『Eクラス』。そこに搭載された先進技術の数々は、90分程度の試乗時間ではとてもじゃないが、すべてを試すのは不可能だった。

そんなわけで、今回の試乗記はいわゆる「さわり」である。言うまでもなく試乗会は、日の高いうちに開催される。しかし、84個ものLEDライトを制御して最高の視界を得ることが出来るマルチビームLEDヘッドライトなどは夜間でないとテストできないし、最新のインフォテイメントシステムは余りに奥が深く、理解するだけで数日はかかりそうである。また、やっちゃいけない、プリセーフのアイデアも今回は満載…等々、1台のクルマでこれほど多くを語らなくてはならないクルマには、正直出会ったことがない。

一方でEクラスに別な意味での期待を持っていた人は少々残念かもしれない。どんな期待かというと、Eセグメントの盟主としてのラグジュアリー性やパフォーマンス性能だ。誤解しないで欲しいのは、最新のW213 Eクラスがラグジュアリーではないとは決して言わない。しかし、パフォーマンスに関してはどうか。少なくとも発表されたエンジンラインナップでは、日本市場は4種のエンジンが用意されるのだが、このうち3種は直列4気筒2リットルである。最後の一つだけが3.5リットルV6ツインターボ。当然ながらV8の設定はなく、徹底したダウンサイジングと省燃費指向がそこからは見て取れる。これは世の中の趨勢だといえばそれまでだが、寂しさを感じるのは僕だけではないはずだ。

愚痴はこれくらいにして、今回の試乗車を紹介する。『E200アバンギャルドスポーツ』というグレード名を持つモデルで、前述したように2リットル直4、184ps、300Nmの性能を持つ。ガソリンの4気筒は他に『E250アバンギャルドスポーツ』が存在し、そちらは211ps、350Nmの性能を持つ。パワーが200psを下回っていたモデルは、先代ではベースモデルだけ。今では上級の2モデルだけが200psを超える。このため、実際に試乗しても、パフォーマンス的には必要十分とは思えるが、圧倒的パフォーマンスとか、ゆとりのパフォーマンスという文言は完全に姿を消した。スポーツの名が示すように多少スポーティーな出で立ちは持つものの、正直それはドレスアップされた外観にだけ込められた思いであって、運動性能にまつわるスポーティーさは持ち合わせていなかった。

ただ、新しいEクラスの真骨頂は、従来の自動車に求められた概念的な性能ではなく、全くの新時代に突入した新たな価値と性能にある。その点で、今のところこのクルマに勝るモデルはないと思える。

それは将来的にやってくるであろう、自動運転技術の取り込みと、そのために必要な徹底した安全対策が施されているという点だ。安全に関しては、ボルボと共にメルセデスが自動車産業をリードしてきたことは言うまでもない。ある意味で日本のメーカーが最も遅れているといっても過言ではないポイントである。今回凄いと思ったのが、プリセーフサウンド。衝突が避けられないと判断すると、衝撃音の耳への影響を緩和するためにスピーカーからノイズを発生させるというもの。ここまで来たか!と思った次第である。

そして話の中心は、ドライブパイロットである。従来から開発を続けてきたACC、ディストロニックの進化版といえば話は簡単だが、今回はついにレーンチェンジもウィンカーを出すだけで自動でやってくれる。ブラインドスポットアシストなども進化し、警告を無視して車線変更しようとすると、ステアリングにグイッと介入が入る。等々、試せる技術と試せない技術が混在するが、とにかく楽に運転しようと思うと、これほど神経を使わずに安全を担保できるクルマはない。

ただ、その一方で、かつては新型のメルセデスに乗ると驚かされたメカニカルな進歩は感じられなかった。とりわけ残念に思ったのは乗り心地である。以前はメルセデスに乗ればまるで鏡面のように真っ平らな路面を走っている印象を受けたものだが、今回のEクラスではそうした印象は皆無で、ちょっと攻め込んだコーナリングでは、いとも簡単にタイヤからのスキール音が聞こえるなど、クルマの開発ベクトルが、従来とはまるで違った方向に向いていることが鮮明になったクルマであった。ただし、現代流には素晴らしく進化したクルマであることは確かだ。

■5つ星評価
パッケージング ★★★★
インテリア居住性 ★★★★
パワーソース ★★★★
フットワーク ★★★★
おすすめ度 ★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来38年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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