日本気象協会は、2014年度から京都大学防災研究所と共同で実施してきた、ドローン(無人航空機)による高層気象観測技術の研究開発内容と実験結果を発表した。
日本気象協会では、高層(上空1000m程度まで)の気温や風向風速を観測する手段として主にGPSゾンデを用いた方法を採用している。高層気象観測で「風向風速」に関しては、ドップラーライダーやドップラーソーダなどのリモートセンシング技術による観測方法が採用される事例がある。「気温」に関しては、国内ではゾンデ観測以外に実用化されている方法がない。
ゾンデ観測はバルーンの落下リスクや、ヘリウム供給の問題、環境への負荷、観測コストなど運用上のさまざまな課題がある。一方で、ドローンが災害地域における上空からの写真撮影や、人が立ち入れないような橋などの保守点検に活用される事例が増えている。再利用可能で環境負荷も少なく、自律飛行できるドローンは、ゾンデ観測の課題を解決する手段として有用性が認められる。
このため、日本気象協会では2014年度から、上空の気象を観測する手段として、ドローン活用の可能性を調査し、ドローンによる気象観測事業拡大を検討している。
今回の研究開発と実証実験結果から、ドローンを高層気象観測で活用する際の有効性や課題が明らかとなった。また、気象観測だけでなく、火山灰や火山ガス、大気汚染物質の観測など、環境分野の幅広い調査でドローンの活用可能性が明らかとなったとしている。
日本気象協会では今後も、フィールド調査による実証実験を主体とした研究開発を通じ、これまでの調査方法の代替手段として、ドローンを活用して気象、環境調査技術の向上を図る。