JAXA、宇宙での精神心理健康状態の評価手法確立にむけ試験

宇宙 科学

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、宇宙飛行士の精神心理健康状態評価手法の高度化を目指すため、有人閉鎖環境滞在試験を実施すると発表した。

2015年12月11日、142日の長期滞在ミッションを完了し、油井亀美也宇宙飛行士が国際宇宙ステーション(ISS)から無事帰還した。日本人宇宙飛行士としては通算5人目のISS長期滞在となった。

ISSでの4~6か月となる長期滞在期間中、宇宙飛行士は、宇宙実験に加え、ISSのシステムや機器の運用作業などを行う。これまで長期滞在やこれに類似する閉鎖環境での滞在模擬実験によって、ISSのような閉鎖環境での長期間滞在が人間の精神心理的な側面にさまざまな影響を与える可能性が知られている。

ISSに長期滞在する宇宙飛行士に対する健康管理は日常的に行われ、JAXAも日本人宇宙飛行士を心身共に健康に保つさまざまな取り組みを行っている。

このうち、宇宙飛行士の精神心理的健康状態を評価する手法としては、宇宙飛行士の軌道上スケジュールや軌道上で対応できる分析手法に制約があるため、2週間に一度程度の精神医学・心理学の専門家とのビデオ問診が唯一の手段となっており、より効果的な手法の構築が重要となっている。

今回の研究は、現状での専門家の問診評価に加え、客観的な指標に基づく精神心理的ストレス状態評価手法を用いることにより、ISS宇宙飛行士の精神心理的健康状態評価手法を向上させることを目標とする。研究では「非侵襲的(採血などを伴わない)かつ宇宙飛行士自身が軌道上でほぼリアルタイムに評価可能」な手法の開発も目指す。

これにより、JAXAは将来の超長期有人宇宙滞在にも適用できる精神心理的健康管理手法確立を目指す。

2015年度には1回、2016年度には最大3回の2週間閉鎖試験を実施する。閉鎖環境滞在時に被験者が感じるストレスをよく反映する客観的指標(ストレスマーカ)を抽出するのが目的。

今回の試験では「ストレスマーカ候補の絞り込み」の初回検討を行う。被験者8人(成人男性)が宇宙飛行士養成棟閉鎖環境適応訓練設備に2週間滞在する。閉鎖設備滞在前には基礎データの取得のため、閉鎖設備退室後には回復過程の確認のために、それぞれ2回のデータを取得する。被験者は滞在中、ISS滞在を模したストレス負荷を受けつつ、さまざまな課題を実施し、ストレスマーカ候補を測定する。

《レスポンス編集部》

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