日本各地、土地柄や人柄がにじみ出ているような乗り物が数多く点在する。営業キロ200m、日本最短区間といわれる松浦鉄道 西九州線 中佐世保~佐世保中央間に乗り、さらにこの区間の脇を歩いてみると、この街独特の“珍景”が見えた(写真16枚)。
西九州線(有田~佐世保)は、国鉄・JR時代の松浦線を、第三セクター(長崎県・西肥自動車などが出資)が引き継いだ93.8kmの路線。1961年につくられた中佐世保駅から気動車に乗り、その30年後にできた佐世保中央駅へと向かう。
1両で走る気動車は、ピンポーンというドア開閉ブザーを鳴らし、動き出してすぐに次の駅の自動車アナウンスが始まる。「間もなく、佐世保中央、佐世保中央です。お降りの方は、お忘れ物のないよう…」と聞こえたあたりで加速を終え、惰性で走る間もなくブレーキが入る。中佐世保でドアが閉まり、佐世保中央駅でドアが開くまで、50秒ほど。
佐世保観光コンベンション協会の担当者は、「もともと、佐世保と北佐世保の間に、陳情によってできた駅が中佐世保駅。それからエムアール(松浦鉄道、MR)となって、四ヶ町商店街へ行き来する人が便利になるようにとつくったのが佐世保中央駅。島瀬町という同じ町内に「中」と「中央」の2駅あるっていう、変なところ」と笑う。
こんどは佐世保中央駅から中佐世保駅へと歩いて戻ってみる。佐世保中央駅の入口は、アーケード街の路地裏といった雰囲気で、商店街側に目立つ駅の案内標識はない。初めて佐世保を訪れた人にとって、中佐世保駅を見つけるのはさらに難しい。
駐車場とアパレル店の間にある小道の奥に、駅ホームへと続く階段がある。が、その階段へと案内する標識が、見当たらない。
「中佐世保駅の看板も変な向きに立っていて、おかしい」と笑う同担当者は、「もともといろいろな地方の人たちが集まってできた街だからか、軍港として栄えた街の“らしさ”なのか、外からきた人を意識しない風習があるかも。そうした性格は、街の案内によくあらわれていて、鉄道やバス、タクシーの乗り場へと案内する“気が利いた標識”がない」と話していた。
前述の中佐世保駅と佐世保中央駅の間では、「日本一の長さを誇る四ヶ町商店街アーケードを横切る“橋”も見もの」(同担当者)という。そのアーケード内にあるマクドナルドには、米海軍佐世保基地の街らしく「RATE $1=¥119」といった、米ドルが使える表記も掲出されていた。