モバHo!の轍は踏まない…放送と通信の融合、TOKYO SMARTCASTの勝算

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TOKYO SMARTCASTの代表取締役社長である武内英人氏
  • TOKYO SMARTCASTの代表取締役社長である武内英人氏
  • 「i-dio」を視聴できる4種類のデバイス
  • 「i-dio」の事業構成
  • 「i-dio」の構成
  • 「TS ONE」で提供される音質
  • TOKYO SMARTCASTの編成制作部長である砂井博文氏
  • 「TS ONE」の番組ラインアップ
  • 「TS ONE」の番組ラインアップ

TOKYO SMARTCASTは10月16日、V-Low マルチメディア放送「i-dio」での展開について紹介する説明会「TOKYO SMARTCAST Inc. MEDIA FORUM 2015」を開催した。同社はそもそも、V-Lowマルチメディア放送帯域(99~108MHz)における放送と通信のハイブリッドデジタルメディアサービスのスタートに向け、2016年1月に設立された会社だ。かつての「モバHO!」(2.6GHz帯)とは異なり、移動体にも有利な周波数帯とすることにより、より幅広い環境での聴取が可能となっている。

◆ワイドレンジカバーでユーザー獲得目指す

TOKYO SMARTCASTの代表取締役社長である武内英人氏は「i-dio」について、デジタル放送であるためデジタル化されたデータなら「なんでも送れる」こと、情報を見せるだけでなく「蓄積する」ことが可能なほか、放送と連動したレコメンドを行えるため「ワンデバイスでシームレスに購買へとコンバージョンさせることができる」ことを特長として挙げた。

また、モバイルや車載のV-Low端末、モバイル端末用のV-Low受信チューナー、Wi-FiチューナーやWi-Fiルーター、デジタルサイネージ等のM2M用のUSBチューナーなど、さまざまな方法で放送を受信できることも特長であるとした。FM放送よりも高い出力で電波を飛ばすため、基本的にFM電波が届く場所であれば利用でき、またWi-Fiルーターなどを活用することで広いエリアをカバーできるとした。

「i-dio」は、認定を受けたハード事業者とソフト事業者、そして事業者から割り当てられたセグメントで放送を行うコンテンツプロバイダーにより構成される。TOKYO SMARTCASTは2セグメントを割り当てられており、番組の提供スポンサーやデータ放送活用のクライアント、および広告代理店と連携した企画を展開していく。

◆誰でも無料で楽しめる地上波最高音質放送

武内氏は、ノルウェーが2017年にFMラジオをやめてデジタルラジオに移行すると発表したり、新たな動画サービス「VINE」の急成長、LINEが定額制音楽聞き放題サービスを開始するなど、2015年はさまざまな業界で大きな転換が起きているとした。一方で、デジタル広告のシェアが拡大するなど、デジタルメディアの時代になってきているとし、このタイミングで「放送と通信のいいとこ取り」ができる「i-dio」を開始できるのは大きなメリットであるという。

TOKYO SMARTCASTは「i-dio」において、放送と通信のデジタルハイブリッドメディアという特性を活かしたデジタル・コミュニケーション・プラットフォームを提供するとともに、音楽やニュースをはじめとするきめ細やかな情報発信を行う「Lifestyle Revolutionメディア」と捉え、無料で誰でも楽しめる地上波最高音質の放送サービスを提供するとした。

◆ソーシャルとの積極連携、クーポン機能も

「TS ONE」という名称について武内氏は、「音楽を愛するすべての人へ」「放送メディア最高の音質で」「聴く、見る、知る、手に入れるまでをひとつのデバイスで提供する」「ただひとつのステーション」であることを表しているとした。音質はサンプリング周波数48kHz、ビットレート256~320kbpsでスタートし、2017年には96kHzの音源に対応するほか、DTS Headphone:Xを導入する予定だという。

武内氏は「TS ONE」を利用するためのアプリのイメージも紹介した。メイン画面は番組情報と楽曲情報を切り替えることができ、また、サイネージおよびパブリッシング機能として特集記事やタイアップ、プレイリストとレコメンド、ニュース、天気情報、交通情報などを参照できる。さらにコミュニティ機能としてトークルームやレビュー、投稿、閲覧、人気投票、ランキングなども用意される。このほかコンバージョンとして、クーポンやスポンサー情報、CDやチケット、グッズの販売や楽曲の有料配信、会員登録によるポイント付与なども行える。

具体的な番組について、同社の編成制作部長である砂井博文氏が紹介した。レーベル各社とのタッグにより新人アーティストの発掘や応援をする番組「NEXT ONE」、国内外の一流レコメンダーによる独自の選曲、プレイリストを発信する音楽番組「PREMIUM ONE」、COTTON CLUBと連携した「COTTON CLUB MUSIC TREE」、Billboad JAPANと連携した「billboad JAPAN Special」、世界のカルチャーを発信する番組「Roclwell Sirkus」の提供が予定されている。

「Roclwell Sirkus」では、2016年6月1日に東京ドームシティホールで開催される「ROCKWELL SIRKUS SHOW 2016」を「TS ONE」で放送される予定だという。ここでもアプリを活用したさまざまな展開を予定しており、ライブ会場での撮影やその場で動画投稿できるコーナーが用意される。ここで、TOKYO SMARTCASTのクリエイティブ・プロデューサーであるサイモン・テイラー氏が紹介された。

◆複数のビジネスモデルと万全期すセキュリティ対策

続いて武内氏は、3つのセールスモデルについて説明した。TOKYO SMARTCASTでは、フラッグシップチャンネルとなる「TS ONE」のプログラムスポンサー、企業やブランドのオリジナルチャンネルに向けたオリジナルチャンネルパートナー、IoTセキュリティやサイネージ、ゲームアプリ配信などに向けたデータビジネスパートナーの3つが用意される。そして、2016年度上期(東京・大阪・福岡・名古屋・静岡エリア)のオリジナルチャンネル提供料金を、1/4セグメントで月額2000万円と発表した。このほか、レベニューシェアモデルも用意される。

データビジネスパートナーについて、武内氏は2つの活用例を紹介した。「i-dio」ではデータを“放送”することができるため、ルーターなど通信機器のファームウェアのアップデートに利用できる。機器側を強制更新が可能にしておくことで、たとえウイルス感染してしまった場合でもウイルスを駆除できる。もうひとつは、放送波をアクセス管理・認証に活用するケース。インターネットを使用した認証やアクセス管理は盗聴などによる情報漏えいのリスクが存在するが、放送波で送られた認証情報を端末内で突合することで認証が可能になるという。

《吉澤 亨史》

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