初代『クーガ』を「愛車にしよう」と思ったことがあった。カミさんに乗せると、背の高さがいやだというので結局ボツになったが、当然それは本人の慣れの問題である。
現行クーガも背が高いことに変わりはないが、高いことによるネガティブな部分など何もない。視界の広がりは高いほうが良く、曲がる際の内側の死角は、そこが見える策を講じているので問題なし。高さによる不安定感は、シャーシとサスペンションで安定させればそれも問題なし。という事でクーガは合格。
引き締まった足回りとボディ/シャーシの高い硬質感はドイツ車っぽく。与えたステアリング舵角にスムーズに柔らかく応答するハンドリングはイギリス車の感覚でもある。
本当のところは判らないが、欧州フォードにはドイツとイギリス両国の特長が過去の時代から継続してあるようで、そこが多くのドイツ車の味とは一線を画す存在だと感じている。インテリアの一部にアメリカンな樹脂の感触があるが、グローバルなブランドのフォードらしさを感じさせる部分でもある。
新しいクーガはエンジンが1.6リットルから、1.5リットルと2.0リットルの二本立てに変った“エコブースト”ユニット。
「トレンド」に搭載される1.5リットルは182psと240Nmで、アクセル踏むと同時に軽快なエンジン音とともに転がって行く。車重1640kgの4WDを1.5リットルで大丈夫なのか? と思ったが、乗れば解氷、これで十分。街乗りでは交差点出停止する度にエンスト!? いやアイドリングストップ。その効果も手伝い燃費は12.7km/リットルとふたケタ行くので嬉しい。
「タイタニアム」は2.0リットルから242ps/345Nmで、クーガとしては過去最強エンジン搭載。乗ると!?…やはり違う。アクセルひと踏みで格の違いが起きる。さほど踏まなくてもカンタンに街の流れをリードする動力性能が気持ちいい。2リットルガソリンエンジンで比較するとトルク値はクラストップ。それが車重1720kgを豪快に引っ張る要因に。余裕と言えばそうで、アクセルを深く踏み込む事なくスルスルと加速。燃費は10.0km/リットルになるが、エンジンの個性と動力性能からいえば納得。
ギアはDか、エンジン回転を高く維持するSレンジを選べば通常それいいのだが、シフトレバー横のスイッチ操作でシフトアップ~ダウンが容易に行えるスポーツ走行も可能に。
初代クーガは欧州車の印象があった。新型はアメリカンの様相がスタイリングやインテリアに少し感じられ、ボディやシャーシの硬質感はドイツ風味、ハンドリングのイギリス流と、各国の個性の集合体のような、日本車では味わえない世界観、薫りなどなどが楽しめる。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おススメ度:★★★★★
桂 伸一|モータージャーナリスト/レーシングドライバー
1982年より自動車雑誌編集部にてレポーター活動を開始。幼少期から憧れだったレース活動を編集部時代に開始、「走れて」「書ける」はもちろんのこと、読者目線で見た誰にでも判りやすいレポートを心掛けている。レーサーとしての活動は自動車開発の聖地、ニュルブルクリンク24時間レースにアストンマーティン・ワークスから参戦。08年クラス優勝、09年クラス2位。11年クラス5位、13年は世界初の水素/ガソリンハイブリッドでクラス優勝。15年の今年は、限定100台のGT12で出場するも初のリタイア。と、年一レーサー業も続行中。