ため息、やる気、戸惑い…宇都宮市と芳賀町が描く「路面電車の走る風景」

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宇都宮駅東口
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次世代路面電車(LRT)の整備計画がすすむ宇都宮の街を歩くと、「巨額の税金を注ぎ込んでまでつくる必要ある?」「需要だけじゃない。行政のバックアップは不可欠」といった声が聞こえた。宇都宮市と芳賀町が描く路面電車の走る風景は、どう具現化されるか。

7月末、宇都宮駅東口からタクシーに乗り、この次世代路面電車計画ルートに沿うように行くと、運転手はため息まじりに「(計画ルート上に)工業団地はいろいろあるけど、そのあたりには工場以外に何もない。これといった観光地もない。それに工業団地にある企業へは、自前の企業バス便が頻繁に走ってるでしょ」ともらした。

宇都宮駅へ戻るときに乗ったタクシー運転手は、「税金の無駄としか思えない。見てよ、駅へ向かうバスのほとんどが数人しか乗ってないでしょ。それでもやるって言うんだから。誰がほしがってるんだろね、路面電車なんて」という。

宇都宮市と芳賀町が計画する路面電車ルート上には、キヤノン、カルビー、マルハニチロなどの工場が集結する清原工業団地や、ホンダエンジニアリング、本田技術研究所、ホンダアクセス栃木研究所などが隣り合う芳賀工業団地がある。ホンダ系企業に勤める30代のスタッフは、こう話していた。

「工業団地周辺の渋滞が、LRTの実現によって減ればいい。このあたりの朝夕の通勤時間帯の渋滞はひどい。宇都宮市街と工業団地の間に鬼怒川が流れていて、この川を渡る橋が少ない。LRTもいいけど、渋滞解消のためにも橋を増やしてほしい」。

いっぽう、「需要だけじゃない」という“推進派”の声もある。「日本の鉄道をほぼすべて乗った」という編集者・小関秀彦氏は「路面電車は“過去の乗り物”と思われがちだけど、欧州やアメリカなどではLRTが復権し、現在も建設が進められているエリアもある。LRTはバスと比べて輸送力が大きく、郊外と市街地中心部を結ぶ基軸交通として機能できる。また、地下鉄や新交通システムほど建設費もふくらまないので、短期的に公共交通ネットワークを形成できる」と話す。

「日本の地方都市は、1970年代以降一貫して自動車中心の街づくりだった。これからは、LRTなどを活用したコンパクトシティを目指すべき。そのためには行政のバックアップは不可欠」(小関氏)。

宇都宮東口には、「路面電車の停留所とかをつくるために確保した」(前出のタクシー運転手)という空き地が広がり、そこに餃子店が建ち並んでいる。改札口から東口へとつながるコンコースも、中途半端に途切れている。こうした東口の“不思議な景色”は、今後どう変わっていくか。

《レスポンス編集部》

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