【三菱 ランエボ 最終モデル】こんなスーパーセダン、世界中のどこにあろうか?…桂伸一

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三菱 ランサーエボリューションX ファイナル・エディション
  • 三菱 ランサーエボリューションX ファイナル・エディション
  • 三菱 ランサーエボリューションX ファイナル・エディションと桂伸一氏
  • 桂伸一氏
  • 三菱 ランサーエボリューションX ファイナル・エディションとアウトランダー
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いまだに勝っている…。お家の事情だろうが、こんなスーパーな一台を何故辞める!?

ランボルギーニ『ウラカン』、アウディ「RSシリーズ」など、世界トップと思われるプレミアムスポーツに乗り、最新の「スーパースポーツ4WDは凄い」と実感しているジャーナリスト目線で見比べても、だ。

『ランサーエボリューション』の最終1000台の限定モデル、その名も「ファイナル・エディション」は、いまでもまったく見劣りしていない!! という事実のお話。

◆最終モデルでもまだ“進化”する

驚きは、この最後のモデルに対して三菱は、その名のとおりまだ“進化”する材料を持っていた。それがエンジン内部、ナトリウム封入排気バルブの採用だ。

これ、従来よりバルブの温度上昇が抑えられることで、エンジン内部の許容最高温度を高く設定できる。つまりさらにパワーアップしてもメーカーとして“保証できる”状況になり、空気と燃料の比率の最適化も含めてパワーを300psから313psにトルクは43.0kgmから43.7kgmへと引き上げる事が許された。

三菱エンジンといえば定評ある低回転からのトルク=力強さはそのままに、中~高回転域で主にパワーを増強し、トルクを太らせた。 

組み合わされるミッションは5MTのみ。この下からの力強さは、最新の2リットルターボエンジンと比較しても見劣りしない。トルクが太いためクラッチミートに造作なく、ラフにミートしてもエンジンストールなどすることはない。

◆集大成のハンドリング

外装色の違いや装備の違いがファイナルの特長だが、それよりも、やはり目の覚めるハンドリングこそランサーエボリューションの持ち味だ。

登録前なので試乗は富士スピードウェイのショートコースに限られた。短い直線を弾かれたような瞬発力でダッシュし、ブレーキングで路面にめり込むように急減速してから、ステアリング操作に忠実に姿勢を変える。

曲がる能力は三菱のお家芸、S-AWDの制御からACD(アクティブ・センター・デフ)とAYC(アクティブ・ヨー・コントロール)がキモ。ステアリング舵角、アクセル開度、その時の路面状況他をクルマが判断して曲がるために最適な前後左右の駆動力配分を行う。とくにAYCは例えばブルドーザーが曲がるときのように、左右のキャタピラに回転差をつけて方向を変える。クルマで言うと後輪の内輪~外輪の回転差を出して駆動する。

それを三菱はランエボVIIから採用し、路面からの負荷が大きいサーキットレースやWRCで鍛えに鍛えて完成度を高めて行き、エボXが集大成。

時を同じく、4WDと言えばアウディのお家芸。やはり今後、操縦安定性をコントロールするのは後輪がキモだ、と考えたアウディもリアタイヤの内輪と外輪の回転差=増減速することに気がつきスポーツデファレンシャルを開発。

「タッチの差で三菱AYCが先に世に出たんだ!!」。先代のアウディ『RS5』の国際試乗会で開発担当者はそう言って悔しがった。

◆自在に駆け抜ける

富士スピードウェイショートコースはアンダーステアもオーバーステアも出やすいコースレイアウト。ここをファイナル・エディションは、自在に駆け抜けた。自在に? つまり操作次第でどうにでもなる、という意味だ。

アンダーステアが出やすいコーナーは、出たらステアリングを切り足すか、アクセルを踏み込む。理にかなっていないが、「ドライバーが曲がりたい操作をしている」とクルマ側がAYCの威力をより強めて曲げるのだ。

オーバーステアには、旋回中にアクセルOFFすれば意図してタックインでき、カウンターステアで修正しつつアクセルを踏み込めば安定姿勢に立ち直る。

レカロにBBSにブレンボ。走りに拘るプレミアムブランドで武装して、価格は429万8000円。こんなスーパーセダン、世界中のどこにあろうか? 存続している直接のライバル、スバル『WRX STI』は国際舞台で大活躍。格上だが、やはりレースで一時期は“喰うか”と言うほど迫った『GT-R』もやはり世界で戦っている。

三菱は悔しくないのか? と思うが、時代の流れは甘んじて受け入れるしかないのかも。

とはいえ、三菱の財産であるACDとAYCを含むS-AWCは生き残っている。それを『アウトランダー』にはチト厳しいかも知れないが、次期車輌に展開される事を祈るとしよう。

桂 伸一|モータージャーナリスト/レーシングドライバー
1982年より自動車雑誌編集部にてレポーター活動を開始。幼少期から憧れだったレース活動を編集部時代に開始、「走れて」「書ける」はもちろんのこと、読者目線で見た誰にでも判りやすいレポートを心掛けている。レーサーとしての活動は自動車開発の聖地、ニュルブルクリンク24時間レースにアストンマーティン・ワークスから参戦。08年クラス優勝、09年クラス2位。11年クラス5位、13年は世界初の水素/ガソリンハイブリッドでクラス優勝。15年の今年は、限定100台のGT12で出場するも初のリタイア。と、年一レーサー業も続行中。

《桂伸一》

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