【WEC】日産 GT-R LM NISMO、ルマン公式テストに3台出走…トヨタ中嶋一貴が復帰

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#21 Nissan GT-R LM NISMO は、1990年のNissan R90CKを模したカラーリング(#22と#23は赤基調)。
  • #21 Nissan GT-R LM NISMO は、1990年のNissan R90CKを模したカラーリング(#22と#23は赤基調)。
  • ルマンのコースを実際に走った「Nissan GT-R LM NISMO」。
  • FFレイアウトという野心的なマシン、「Nissan GT-R LM NISMO」。
  • 日産陣営はルマン本戦に向けてのテストメニューを進めた。
  • ルマンを走る「Nissan GT-R LM NISMO」。
  • 日産勢では松田次生の戦いぶりも注目される。
  • 今回の公式テストで「多くのデータが得られた」という日産陣営。
  • トヨタは悲願のルマン初制覇を目指す(TOYOTA TS040 HYBRID)。

5月31日、フランスのルマン(サルトサーキット)にて、WEC第3戦のルマン24時間レースを前にした公式テストが実施された。WEC開幕2戦を欠場した「Nissan GT-R LM NISMO」も3台が姿を見せ、本戦への準備を進めている。

6月13~14日を決勝とするスケジュールでの開催となる今年のルマン24時間。WEC(世界耐久選手権)の第3戦という位置づけではあるが、この一戦のもつ価値がシリーズタイトル以上ということは言わずもがな。決勝2週間前のタイミングでの現地公式テストは、1923年に始まった伝統の一戦での勝利を目指す者たちにとって貴重な試走の場である。

ましてや総合優勝を争う最高峰LMP1クラスに今季から参入の日産にとっては、当初参戦を予定していたWECの開幕2戦を欠場して本拠アメリカでのテスト継続に充てるなどしてきた経緯もあるだけに、このルマン公式テストでの立ち居振る舞いが注目されたのも当然の流れではあった。

FFというLMP1クラスでは特異なマシンコンセプトで設計されたGT-R LM NISMO。レギュレーションがミッドシップ主眼で構成されているなか、FFとすることで空力面の優位性を見出し、既存勢力との違いを出してアドバンテージとすることが狙いとされるが、今回の公式テストのタイムシートを見る限り、現状ではアウディ、ポルシェ、トヨタといったライバルたちとの比較云々という次元にはまだ到達していないようだ。

4時間ずつ計2回行なわれた走行、セッション1での日産勢のベストタイムは#23の3分43秒383で、全クラスを通じて16位。トップは#18 ポルシェの3分21秒945で、#23のタイムは格下LMP2クラスのマシンにも4台先行されている(ちなみにLMP2クラスの大半は日産エンジン搭載車)。セッション2では#22の3分50秒713が日産勢のベストで全体27位。トップは#17 ポルシェの3分21秒061だった。

ただ、もちろん今回はあくまでテスト。コンディション的にも雨が絡んだようなので、その意味でもベストタイムだけで多くを計ることはできないだろう。日産のLMP1プロジェクトを率いるベン・ボウルビーは、以下のように語っている。

「今日はトップを狙っていたわけではありません。このマシンでのルマン初陣に向けての準備として、とにかく学ぶこととデータを集めることに専念していました。斬新なマシンを投入する我々には課題が山積みであるのも覚悟していることです。ここでの初走行を終え、3台のマシンが無事にガレージへと戻り、エンジニアの手元には山のようなデータが集まりました」

テストの成果に満足そうなボウルビーにはタイム的にも一定の手応えがあったようで、「ウエットコンディションでの私たちのタイムはコンペティティブなもので、午前の走行ではストレートでの総合ベストタイムのトップ2を私たちがマークしました」ともコメントしている。

日産のワークス体制でのルマン参戦は1999年以来。しかもFFという他にはない個性的なチャレンジという面でも話題を集めているだけに、次の日曜が公式車検という本戦レースウイークまでの短い期間での進化・充実に期待したい。今年は勝ち負けというレベルで走るのは難しいにしても、来年以降に悲願のルマン総合初優勝を狙うためのさらなる有用なデータを得られる状態(速さ)での出走、これを望みたいところだ。

なお、日産陣営にはWEC開幕2戦を休んでいる間にルマンに向けてのドライバー人事変更もあった。マルク・ジェネがアドバイザーというかたちになり、#23はO.プラ&J.マーデンボロー&M.チルトン、#22はH.ティンクネル&M.クルム&A.バンコム、そして1990年に日本初のポールポジション獲得車となった「Nissan R90CK」を模したカラーリングを公式テストで施された#21は松田次生&M.シュルツイスキー&L.オルドネスという編成になっている(松田、チルトン、バンコムは今回の公式テストで日産エンジン搭載LMP3クラス車に乗り、初参戦選手に義務づけられる10周の走行を完遂)。

一方、アウディ、ポルシェ、トヨタによる最前線の戦いは、これも今回のテストのタイムシートを見る限りにおいての話だが、ドイツ勢が優位か。2度のセッションともポルシェとアウディがトップ6を占め、2台体制のトヨタはいずれも7&8位。1周の速さが決勝での戦況に直結するものでもないが、見栄えの点で気になるところではある。

今回のテストで#1 TOYOTA TS040 HYBRIDのコクピットに復帰した中嶋一貴は「最高の気分です。ケガはもう完治し、問題は全くありません。アクシデント後初のドライブでしたが、以前と同じレベルで走れたことに満足しています」と自身に関する良好な手応えを語り、マシンについても「午後のドライな状況においては、昨年ポールポジションを獲得した時と同じ、確実な感覚をつかむことができました」とコメントしている。彼自身とトヨタにとってやはり悲願であるルマン総合初優勝に向け、本戦(予選~決勝)での巻き返しなるか、これも今年の大きな注目ポイントだ。

2015年ルマン24時間レースは6月13~14日に決勝レースが行なわれる。

《遠藤俊幸》

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