【ホンダ グレイス 試乗】稀少性の高さで勝負できるか…中村孝仁

試乗記 国産車
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このクルマ、日本よりいち早く東南アジアの国々で発表されて好評を得ているモデルである。ただし、海外で販売されているモデルはいずれもガソリンもしくはディーゼルエンジンを搭載。名前も『シティ』となる。

それがハイブリッドで、名前も『グレイス』と変わり、日本に登場したというわけだ。

何故稀少性で勝負かというと、今日本にはただでさえ少なくなったジャンルであるセダンで、しかも5ナンバー。加えてハイブリッドとなると、選択肢はこのクルマしか存在しない。つまりは唯一無二だ。故に勝負できると思うわけである。もう少しマーケティングの話を聞いておけばよかったと思うが、果たしてこの5ナンバーサイズのセダンを購入する層というのは、今どのあたりなのかという点。

子育て層だったら、ミニバンもしくはトール系の軽に目が行くだろうし、若年層のカップルもしくは独身者は、今更爺臭いセダンに興味を示さないと思える。となると、自動車はセダンが基本…と考える僕らみたいないわゆるシニア層を取り込むというのが定石なのだと思うが、その恰好からして如何にも若々しい。

爺臭いと思われるから若々しいデザインにしたのだというメーカーの声も聞こえてきそうだが、もしそのシニア層を狙ったクルマだとしたら、ユーザーとメーカーの間に嗜好の乖離が見えてしまう。恐らくこのあたりに、想定した市場が実は日本ではなく、東南アジアだというところが見え隠れしてしまう部分だと思うのだ。

それはともかくとして、クルマの出来としては個人的には悪くないと思った。抽象的だが、全体的なバランスの良さ、日本市場においては先代モデルが『フィット アリア』だということを考えれば、隔世の感があるデザインの進化。そしていろいろ問題はあったが今ではその問題がどうやら克服できたらしい、7速DCTとハイブリッドの組み合わせという点が、うまくまとまっていると思う。因みに7速DCTはパドルシフトでコントロールできるが、停車から、DレンジあるいはRをセレクトする場合の反応はかなり遅い。

試乗したのはFWDだが、実は4WDの設定もあって、こちらは当然ながら現在日本車で手に入る唯一の5ナンバーハイブリッド4WDセダンである。

相変わらず、ホンダのステアリングフィールは僕の好みではない。とにかく軽く操舵させる、この一点に絞り込んだ設定にように感じられ、どっしりとした落ち着き感がないのだ。おまけに転舵すると結構シャープに切れ込むから始末が悪い。というわけでコーナリング時はついつい切り過ぎてしまうケースが多々あった。

1.5リットルユニットに高出力モーターを組み合わせ、ホンダ独自のセンターマウント燃料タンクをドライバーズシートの真下に設置し、リアにはリチウムイオンバッテリーを搭載するというレイアウトは実に無駄がない。バッテリーを搭載してかさ上げされているはずのトランクスペースも、430リットルの容量を持ち、ゴルフバック3つ(サイズによる)を飲み込むだけの空間を確保したのだから大したものだ。セダンの良さは実はそのトランクスペースに有ったりして、最近のスポーツワゴンなどと呼ばれるスタイリッシュなワゴンの荷室スペースは、セダンよりはるかに劣るケースが多い。このクルマもリアシートは分割可倒式だから利便性も高い。

そのハイブリッドユニットと7速DCTが織りなすパフォーマンスも、とりあえず必要十分を確保している。そもそも、狼ではない。だから別に羊の皮をかぶっているわけでもなくて、スポーツ性など求めていないのだから、動力性能的にはこれで十分だ。というわけで、折り合いがつかなかったのはその動力性能とステアリングから感じられる運動性能が上手くかみ合っていないところだった。

■5つ星評価
パッケージング ★★★★
インテリア居住性 ★★★★
パワーソース ★★★★
フットワーク ★★★★
おすすめ度 ★★★★

中村孝仁|AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来37年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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