2013年の東京モーターショーに出品された『DECA DECA(デカデカ)』を市販化したモデルが、この『ウェイク』だ。
ウェイクの魅力はなんといってもそのパッケージングにある。テレビのCMでもさまざまなグッズをたくさん搭載できることをアピールしているので、そうしたイメージは容易に想像できるだろう。室内長は2215mm、室内高は1455mmでいずれもクラストップの数値を実現。リヤドアの開口高さ(1286mm)と前後乗員距離(1120mm)もクラストップだ。
『タント』に比べると85mmも全高がアップされているが、ルーフパネルの板厚を薄くしたり、ボディパネルの樹脂化など重心より上にある部品を軽量化、アンダートランクの設定やパンク修理キットの床下配置などによって重心高は約10mmアップに抑えられている。
重心高そのものは高くなっていないが、重いものが低い位置にあるため、コーナリングでロールしたあとに戻るときは、起き上がりこぼしのようにスッとロールが収まるタイプの乗り心地。このロール収束速度がちょっと早めで、ほかの軽自動車とは違う印象ももつ人もいるだろう。
自動車メディアで仕事をしていると、どうしてもハンドリングありきでクルマを評価しがちだが、この大量に荷物が積めるパッケージングを実現しながら、これだけのハンドリングを実現しているのはなかなかたいしたもの。さらに荷物を積んで重心位置が変わればハンドリングはさまざまな顔を見せるだろうから、空荷の一人乗りで簡単に判断してはいけないと感じる。
ウェイクはパッケージングありきのクルマなのだ。荷物が積めることを第一として、そのためにさまざまな工夫を凝らした。たくさんのものを積んでキャンプに出かけたいという人などにとっては待ちに待ったクルマといっていい。だったら、商用タイプの1ボックスにすればいい…なんて極端なことを言う人もいるが、乗用タイプとしてのクオリティを保ちつつ、確かな積載性を実現しているのがウェイクの素晴らしい部分だ。
ターボエンジンは軽やかでパワフル。空荷で走っているときは、十分に速い印象を与えてくれるし、そのトルク感を思えば複数人での乗車や荷物搭載時もけっこういけそうだ。もちろん、リッターカーなどにはかなわない部分もあるだろうが、それは軽自動車でありながら…という点を考慮してものを考えるべきだろう。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★★
諸星陽一|モータージャーナリスト
自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活躍中。趣味は料理。