【オートモーティブワールド15】ぶつからない車をワンチップで実現するために…ルネサス

自動車 ビジネス 企業動向
1月15日オートモーティブワールド2015専門セッション「ぶつからないクルマをワンチップで実現するルネサスのADASソリューション」
  • 1月15日オートモーティブワールド2015専門セッション「ぶつからないクルマをワンチップで実現するルネサスのADASソリューション」
  • 1月15日オートモーティブワールド2015専門セッション「ぶつからないクルマをワンチップで実現するルネサスのADASソリューション」
  • 1月15日オートモーティブワールド2015専門セッション「ぶつからないクルマをワンチップで実現するルネサスのADASソリューション」
  • 1月15日オートモーティブワールド2015専門セッション「ぶつからないクルマをワンチップで実現するルネサスのADASソリューション」
  • ルネサスエレクトロニクス車載情報システム事業部ADASソリューションエキスパート大塚聡氏
  • ルネサスエレクトロニクス車載情報システム事業部ADASソリューションエキスパート大塚聡氏
  • 1月15日オートモーティブワールド2015専門セッション「ぶつからないクルマをワンチップで実現するルネサスのADASソリューション」
  • ルネサスエレクトロニクス車載情報システム事業部ADASソリューションエキスパート大塚聡氏

ルネサスエレクトロニクスは現在、車載半導体に特に注力し展開している。1月15日に開催された「オートモーティブワールド2015」専門セミナーの中で、「ぶつからないクルマをワンチップで実現するルネサスのADASソリューション」と題し、同社車載情報システム事業部ADASソリューションエキスパート大塚聡氏が講演した。

大塚氏は1990年三菱電機入社後、2006年よりルネサステクノロジー、ルネサスエレクトロニクスにて一貫してADAS向けマーケティングを担当してきた人物。

安全運転支援を考える際にヨーロッパでとくに注目を浴びているユーロNCAPなどの基準を参照しつつ、その開発は消費電力とのバランスを取りながらより高度なアルゴリズムにも適用できるシステムが求められている。現在認識・判断処理に貢献するアプローチが様々ある中、専用アクセラレータとCPUを組み合わせた方法が消費電力の観点で比較してみても最も期待できるのでは、と大塚氏は指摘する。

◆技術を牽引する安全性テスト、ユーロNCAPに注目

大塚氏はまず“ぶつからない”モビリティ環境をつくるには三つの流れ(安全運転支援、自動運転技術、つながるクルマ)があると述べ、その一つ安全運転支援を考える上で重要な指標としてユーロNCAPを挙げた。

過去の安全運転支援は、シートベルトやエアバックなど“ぶつかったときにどうするか”のみを考えたパッシブセーフティでありどの条件でどうすればよいか定義付けしやすかったが、今後は一転して“ぶつからないためにはどうすればいいか”というアクティブセーフティに移行する(大塚氏)。

「ここでアクティブセーフティは我々に難題を突き付ける。自動緊急ブレーキ、ステアリング操作を伴う衝突回避、レーン逸脱技術などアクティブセーフティにはそれぞれのアプローチがありながら“何をもって大丈夫と言い切れるかどうか”が業界としても非常に悩ましい」(大塚氏)。このような中現在業界として目安となる基準として注目されているのがユーロNCAP(エヌキャップ)なのだという。

「ユーロNCAPは安全試験を実施し試験結果が点数化され星5つであらわされるもの。個人的な見解ではあるが、今まで日本では重視されていなかった一方でヨーロッパでは大変注目されていると言える。今後の安全性の証明ツールとして非常に有用なのでは」と指摘する。

ユーロNCAPではADASに対して何を達成したらよいか、基準がハッキリしているので、NCAPに技術が後を追って牽引されているという。具体的には2014年にはレーン逸脱、自動緊急ブレーキ(対先行車)が試験基準に課せられていた。16年には歩行者に対する自動緊急ブレーキ、とNCAPが今後クルマに課していく基準をみることで、これからのクルマがより広い対象を認識でき、かつ判断処理も可能になるべき、展望が見えてくるという。

加えて「NCAPの規程が重要な目安になることが確かである一方でNCAPを達成すれば事故がおこらないわけではなくむしろ足りない、という認識ももっている。」と述べる。

◆システム実現の課題は消費電力と認識・判断処理

ルネサスのみならず、すべての半導体メーカーにとり安全運転支援のための認識・判断処理精度を高めることと、それに要される消費電力のバランスをとることが課題なのだという。

今後の安全運転支援においては認識の対象が広がること、それに伴い判断処理が非常に大きくなってしまうことが技術的にチャレンジングなことだという。「Ego-Motionと呼ばれる自車位置算出・認識機能をもつオドメトリがあるが、このアルゴリズムを、ルネサスのLSIにチューニングすることを例にとっても非常に大変な作業である。今後このような高度なアルゴリズムが開発される中でその実現化を、すなわちLSIの観点からみてどう作り上げるかを考えたときに問題となるのが“消費電力”である」

すでに自動車一台あたり何百個ものアイコンをつかっていて非常に緻密に埋め尽くされていて新たに何かを入れるスペースもない状況。そういった中でどれだけ電力を抑えながらシステムとしてあらたな機能を搭載するかが毎回悩みだ、と述べた。

また、判断処理においても消費電力との戦いが課題であり、判断処理に要される演算量と消費電力(w)のグラフが示される。走行のレーン車両認識では1から50に収まるが歩行者認識になると1000を超え、さらに現在議論されている歩行者の“動きの予測”となると10000に及んでしまう。「歩行者の顔の動きや向きをの認識、そして歩行ルート予測に関する判断処理をするとなると、現在用いられている枠組みの10倍のスケールとなってしまう。これをどう処理するかが半導体としての一番のテーマになっている。」(大塚氏)

ますます高精度かつ広範囲な認識・判断処理が求められる中、具体的アプローチは3つに整理される、と大塚氏。CPU、GPGPU、そして専門アクセラレータとCPUの組み合わせがあるなか、消費電力の観点からは「専用アクセラレータ+CPU」が5w程度におさまり最も良い(他は130×4w、183w)と指摘する。また、今後は「専用アクセラレータ+CPU」のアプローチを使った場合の画像認識過程で、専用アクセラレータが得意な部分とCPUが得意な部分が共にバランスがとれるような“共通のメモリー上で走る構造”が必要となっていく」という。

また専用アクセラレータにも新しいアルゴリズムにより柔軟に対応できるようになるような工夫の余地がある、という。「ハードワイアードで作りこむことによっても、より低消費電力で高い性能を維持できる可能性がある。これらが将来的な到達目標となりうる。」と安全運転支援のための半導体関連機器における今後の展望が語られた。

《北原 梨津子》

【注目の記事】[PR]

編集部おすすめのニュース

特集