【ダイハツ ムーヴ 試乗】これが今の軽自動車のスタンダード…中村孝仁

試乗記 国産車
ダイハツ ムーヴ X
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1995年に登場した『ムーヴ』、今回のモデルが6代目だという。20年で6度目のモデルチェンジということは、1世代あたり4年未満。これは相当にモデルチェンジサイクルが早い。

それだけ今の軽自動車市場の新陳代謝が激しいことを物語っているようにも思えるが、それにしても最近の軽自動車、急速にその出来具合が良くなっている。一つにはコンパクトカーの作りが向上してきて、ランニングコストの安さだけで我慢を強いられる存在では売りにくくなってきたという背景もあるように思う。

特に力を入れているのがどのメーカーも高い剛性を標榜するようになったこと。姿かたちが似ているところにもってきて、全社で同じような開発アプローチをするものだから、ますますその差別化が難しくなってきているのも否定できない事実のような気がする。

今回のムーヴはボディサイドの高張力鋼板の採用やフレームへの補強などで、とりわけ効果があると感じられたのはフロントサスペンション背後の補強と、リアサス前部の補強。結果としてサスペンションの取り付け剛性が向上し、走安性に寄与している。一方で、サイドにハイテン材を使った反面、リアドア外板は樹脂製にするなどの軽量化も行い、重心の低減、全体の軽量化にも繋げている。

室内の広さに関してはまあはっきり言って呆れるばかりだ。とにかく広い。それも天地方向のみならず、前後方向にも広い。だから、これで狭いと感じるユーザーはまずいないはず。市場全体の半分近くを占める軽自動車の主流がこれだから、ミニバンを含め、いわゆる室内が広いを実感させる日本の自動車が、果たして販売全体のどれだけを占めるか…。セダン人気が衰えるのも無理はない。しかし、個人的にはそれが自動車のすべてだと思ってもらっては困るのだが…。

グレード、「X SA」は、ノンターボモデルの最上級グレード。オートエアコンからオートライト、衝突回避支援システムまですべて標準装備である。また、「Dアシスト」切り替えスイッチというのがステアリングについていて、こいつが結構使えるスイッチであったことをこれからお話ししようと思う。

ノンターボの軽自動車の場合、ターボ仕様の軽に比較してアンダーパワーの印象は避けられない。トルクではターボの4割ダウン、パワーでもおよそ2割ダウンとなり、加速に関していえば、正直なところ期待してはいけない。ところが、今回のDアシストをパワーの側に持って行くと、ちょっと無理をすればターボ車の加速についていくことが出来た。勿論先方が全開にしているわけではないと思うから、割り引いて考える必要があるが、少なくとも遅いという印象はなかった。だから、燃費を狙わないのなら走行中のストレスを考慮しても、日ごろ自分が比較的速く走る方だと思ったら、常にパワーに入れておくことをお勧めする。

乗り心地とハンドリングに関してだが、剛性アップの効果は顕著に表れていて、まずはステアリングに正確性が増した。スムーズに切ったなりに曲がってくれる。それと直進付近が曖昧でなく、いつの間にやら軌道が変わっているなんてことがない。乗り心地に関してもサスペンションの余計な動きがなく、どしっと構えた印象の乗り心地になっている。ノイズレベルも下げられているということで、全体的に落ち着きのある快適な室内空間とされたのが大きな特徴だろう。

同じダイハツの『タント』が日本の自動車におけるベストセラー。しかしまだタントにはこの新しいシャシーが使われていない。だから、クルマとしてはこのムーヴが新たな軽自動車のスタンダードと考えるわけである。

■5つ星評価
パッケージング ★★★★★
インテリア居住性 ★★★★★
パワーソース ★★★
フットワーク ★★★
おすすめ度 ★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来37年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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