2015年は日本の鉄道において、4年ぶりとなる出来事が予定されている。3月14日に北陸新幹線の長野~金沢間228.1kmが延伸開業する予定だが、この前の新線開業は2011年3月27日、名古屋市地下鉄桜通線の野並~徳重間4.2kmの延伸開業だった。日本で新線開業の間隔が4年も空くのは、実は非常に珍しい。
日本初の鉄道が開業したのは明治初期の1872年だが、それから2011年まで新線の開業がなかった年はほとんどなかった。「鉄道百年略史」(鉄道百年略史編さん委員会、鉄道図書刊行会、1972.10)や「私鉄史ハンドブック」(和久田康雄、電気車研究会、1993.12)、「鉄道総合年表1972~93」(池田光雅、中央書院、1993.8)などを参考に、1872年から2011年まで各線の開業年を拾い出してみたところ、新線の開業がなかった年は1873年と1878年、1881年の3回だけ。それ以外の年は、戦時中や国鉄再建の絡みで新線の建設が抑制されていた時代でも、必ずどこかで新しい鉄道路線が開業していた。
ところが2012年は新線の開業がなく、131年ぶりの「新線開業ゼロ」の年に。さらに翌2013年も新線の開業がなく、日本の鉄道史上初の2年連続「新線開業ゼロ」となった。そして2014年も3年連続の「新線開業ゼロ」。ここまで新線の開業が途切れたのは、日本の鉄道網が全国隅々まで構築され、新たに鉄道を建設しなければならないケースが大幅に減ったためだろう。国や自治体の財政が悪化したことで、鉄道を建設するだけの資金的な余裕がなくなったことも背景にある。
しかし、今年は北陸新幹線の延伸開業のほかにも、距離は短いが新線の開業がいくつか予定されている。まずは富山地方鉄道(地鉄)が運営する路面電車線の富山駅乗入れ区間。北陸新幹線富山駅の高架下に停留場を設置し、地鉄の路面電車線につなげる0.2kmの軌道を設ける。北陸新幹線の延伸開業と同日、もしくはその前後には開業することになるだろう。
続いて6月までに、宮城県内でJR東日本の東北本線支線(仙石線・東北本線接続線)0.3kmが開業する。東北本線の塩釜~松島間と仙石線の松島海岸~高城町間は線路が接近しており、ここに東北本線の仙台方と仙石線の石巻方をつなぐ接続線を整備する。東日本大震災で不通となっている仙石線高城町~陸前小野間も、接続線の開業と同時に運行を再開することになっており、東北本線・接続線・仙石線経由で仙台~石巻間を結ぶ「仙石東北ライン」が運行を開始する予定だ。
それから半年後の12月6日には、仙台市内の八木山動物公園~荒井間13.9kmを結ぶ仙台市地下鉄東西線が開業する予定。都営大江戸線などと同じ鉄輪式リニアモーターを採用した小型規格の地下鉄で、仙台市としては南北線に次ぐ2本目の地下鉄になる。さらに10月以降、遅くとも年内には札幌市電のすすきの~西4丁目間を短絡する0.4kmの軌道が整備され、市電のループ化が図られる予定。ただし入札不調が相次いだため工事が遅れており、状況次第では翌年以降の開業になる可能性もありそうだ。
このほか、厳密な意味での新線開業ではないが、3月14日に上野東京ラインが運行を開始する。上野~東京間を結ぶ線路を増設して宇都宮線・高崎線・常磐線と東海道線の直通化を図るもので、京浜東北線と山手線の混雑緩和が期待されている。
今年は新線開業だけでなく、経営移管の予定も多い。北陸新幹線の延伸開業にあわせ、並行在来線の信越本線長野~直江津間と北陸本線直江津~金沢間が、第三セクターのしなの鉄道・えちごトキめき鉄道・あいの風とやま鉄道・IRいしかわ鉄道4社に移管される。
また、4月1日には三重県の近畿日本鉄道(近鉄)内部・八王子線が、四日市あすなろう鉄道に移管。京都府・兵庫県の丹後半島に路線網を持つ北近畿タンゴ鉄道も、年内には高速バス会社のウィラーアライアンスが設立したウィラートレインズに移管される見込みだ。