スズキ『GSR250F』は、まず1クラス上のボリューム感ある車格が印象的だ。
ライバル勢がスーパースポーツ的な過激なルックスを追求するのに対し、グラマラスなフルカウルや外側に張り出すようにレイアウトされた左右2本出しのマフラー、荷掛フックが追加された大型グラブバーやセンタースタンドなどが装備され、こちらはまるで大排気量グランドツアラー。
落ち着きのあるフォルムで大柄なボディは、“見栄”が張れるといった付加価値も魅力だ。
その見た目のとおり、走りもジェントルなもの。フラットに吹け上がるエンジンは、パワー感もスロットルレスポンスもマイルドなものだが、いずれにも不満を感じさせず、トルクが著しく盛り上がる領域がなければ、パワーカーブの谷間もない、ある意味で理想型の1つ。
クラッチをつなぐ瞬間から扱いやすさが際立ち、神経質さとは無縁な操作感が乗り手を選ばない。エキサイティングという部分は追い求めず、とにかく扱いやすいのだ。それでも高回転まで引っ張り上がれば、粘り強くジワジワ速度を上げていくから、そう簡単には音を上げないことも忘れないでいただきたい。
高めのハンドルとクッション厚が充分にあるシートのおかげで、ライディングポジションはゆったりとし、ウインドプロテクション効果も高いことから高速道路も快適に走れる。
路面追従性に優れるサスペンションは乗り心地の良さをもたらし、振動の少ないエンジン、高い防風効果も相まって長距離走行も疲れにくい。これなら、400ccオーバーに混ざって、ツーリングも楽しめそうだ。
装備面も立派で、大径タコメーターを中央に配した多機能デジタルメーターには、大型の液晶ディスプレイがセットされギヤポジションを表示するほか、エンジン回転インジケーターライトやオイル交換の時期を知らせるメンテナンスインジケーターなども備え、豪華なもの。
コストパフォーマンスにも優れ、売れているというのも納得できた。
■5つ星評価
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★
快適度:★★★★★
タンデム:★★★★★
オススメ度:★★★★
青木タカオ|モーターサイクルジャーナリスト
バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。国内外のモーターサイクルカルチャーに精通しており、取材経験はアメリカやヨーロッパはもちろん、アフリカや東南アジアにまで及ぶ。自らのMXレース活動や豊富な海外ツーリングで得たノウハウをもとに、独自の視点でオートバイを解説している。現在、多くのバイク専門誌、一般誌、WEB媒体で活動中。