ほぼほぼスポーツカー。『ルーテシア(クリオ)』は本国フランスでもトップセールスを誇るBセグメントの実用車。けれど走りの爽快さ、気分のよさにかけてタダ者ではないところが、最近のルノーらしい。
搭載エンジンは0.9リットルの直列3気筒ターボで、これに5速MTの組み合わせ。今どきのダウンサイジングを実行したパワートレーンで、90ps/13.8kgmの性能を発揮する。1650rpmという低回転で最大トルクの90%を発生するという、扱いやすい特性もポイントだ。実際に試乗してみると、その実力は数値以上の実感。特性を切り替えられるスイッチ付きだが、ECOモードであっても街中を軽やかに駆け回り、そのモードを外すと、さらに伸びのよさを見せつけ、コンパクトなスポーツカーを走らせているような快感がある。
シフトやクラッチのフィールがススッとなめらかなのも、ここ最近のルノー車と同様だ。たとえ初めてでも、乗り込んだ瞬間、ずっと乗り慣れた自分のクルマのように扱える。
タイヤは1.2リットルモデル(ゼン)と同じ195/55 R16サイズ。このこともあり、乗り心地が非常にいい。とくに走り出しからフラットで視線が上下に揺さぶられないのはルノーならではで、ひとクラス上のセダンにでも乗っているかのよう。音・振動、ステアリングフィールなども、気持ちを逆撫でするような不手際がなく気持ちいい。
艶あり黒のボディサイドのパネルやクロームのアクセントなどは上級グレードと同等。コンパクトで低く身構えたルックスは、やはり饒舌で眺めていて退屈しない。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★
島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。 便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。