BMWのEVである『i3』にはブリヂストンが開発した「ologic」という特殊なタイヤが装着されている。大径・高内圧・狭幅という特徴を持つが、BMWではタイヤ幅が狭いことによる空気抵抗、転がり抵抗の低減に着目し、環境性能を重視するEVに採用したという。
しかし、ologicの開発者であるブリヂストン タイヤ研究部 フェロー桑山勲氏は、特徴は環境性能だけでなくウェット性能やハンドリングなど既存のタイヤに負けない特性と可能性を持つという。
一般にタイヤの径を大きくし、空気圧を高くするところがり抵抗(RRC)は下がることが知られているが、それだと通常のタイヤはグリップ力が落ちたり運動性能に悪影響がでる。そのため、これまでの低燃費タイヤと呼ばれるものでタイヤ径や空気圧をチューニングしたものはほとんどなかった。桑山氏は、パターンやコンパウンドを工夫することで、175/65-15という標準的なBセグメント車のタイヤと155/60-19というologicの比較で、RRCで約20%、コーナリング時のグリップを20%、ウェット時の接地性能を8%向上させることに成功した。
これにより、一般的な車のタイヤをologicに置き換えることができるとして、開発、改良を進めている。ただし、現状で15インチ前後を装着している車に、幅は狭いとはいえ19インチものタイヤを装着するのは困難だ。操舵時にタイヤやホイールがボディなどと干渉するし、スピードメータも1割くらい遅く表示される。また、車高なども変わるため車検が通らない。
ologicは、画期的なコンセプトなのだが、実用化するには自動車メーカーといっしょに開発・製品化する必要がある。BMWは、自社のEVを開発するにあたって、なにか特徴となる提案を探していたといい、ologicが目に留まり採用に至った。
桑山氏は、「ologicはまずBMWのEVに採用されましたが、EV専用というわけではありません。さまざまな特性からEV、ハイブリッドなどエコカーとの相性がいいのは確かですが、ガソリン車でも問題ありません。ライフも長くなるので、軽トラック、商用バン、小型・中型トラックのタイヤなどへも採用が広がればと思っています。」とその可能性について語った。そして、BMW以外のメーカーとも採用に向けて動き出しているともいう。
EV、PHV、FCVなどこれから増えると思われる新設計の車においては、大径・高内圧・狭幅タイヤが設計の主流になっていくか注目したい。