【イクリプス AVN-ZX03i インプレ前編】コンシェルジュに話しかける感覚で目的地設定、音声検索の先入観を覆す…藤島知子

自動車 テクノロジー カーナビ/カーオーディオ新製品
モータージャーナリストの藤島知子氏
  • モータージャーナリストの藤島知子氏
  • あたかもコンシェルジュのように、自然会話での音声検索が可能
  • 候補は1件1件読み出してくれる。1件読み上げたら「次」と言えば次のスポットを説明。スマホやナビの画面に目を向けることなく、検索候補から選べるので、安全性の面でも画期的な機能だ。
  • CarafL側には、発話がどのように認識されたが表示される
  • 検索結果のリスト
  • オプションのBluetoothハンズフリー用マイク&スイッチ「MAS113」。税抜価格は2000円と安価なので、CarafL対応ナビ購入時には是非ともセットで購入したい
  • マイクは指向性があるため、ドライバー正面のステアリングコラム上に設置するのがベスト。音声認識の精度も高まる。
  • ナビやスマホに目を向けずに発話ボタンをブラインドタッチ、音声で目的地を検索できる

「スマートフォン(スマホ)で利用できるカーナビの音声検索を試していただきたいのですが」。編集部の担当者から連絡を受けたとき、考えてみれば、これまで音声による検索機能を使いこなしていなかったことに気がついた。理由は正直なところ、音声検索するよりも、手元で目的地を入力した方が速いと感じていたから。

もちろん、進化したナビに出会った時は音声入力を試し、根気強く話しかけたこともあった。でも、言葉を正確に認識してくれなかったり、ナビのシステムが期待していない注文をすると、目的地の設定にかえって手間取ってしまう。そんな私も女子の端くれ。自分の思いを汲み取ってくれないと、お出掛けの一歩が気持ちよく踏み出せないだけでなく、車内で独り言を言い続けるのは、周囲の冷ややかな視線が気になる。気がつけば音声検索に期待せず、手元の操作で設定するようになっていたというワケだ。

◆自然会話でもOK、音声検索の実力はいかに

半信半疑で迎えた取材当日。イクリプスのフラッグシップ9型大画面モデル『AVN-ZX03i』を使ってドライブに出掛けることになった。この“Zシリーズ”の目玉のひとつがスマホのアプリを駆使して情報を収集し、Wi-Fiの通信機能を利用して目的地を設定できるという、いわば“つながる”システム。

この機能は、事前に『CarafL(カラフル)』と呼ばれるAndroid/iOS両対応の無料アプリを自分のスマホにダウンロードしておき、カーナビの画面上でスマホのテザリング機能をONにすると、ナビとスマホがWi-Fiで接続され、スマホ経由で得た情報がカーナビと連携する仕組みになっている。

目的地設定をする上で必要な条件をアプリ画面に現れる女性コンシェルジュ(「ハルカ」ちゃん)に伝えると、必要な情報を収集して、そのリストを読み上げたり、目的地の設定を手助けしてくれる。あとはナビ画面の案内開始をタッチするだけで目的地までの道のりを案内してくれるというものだ。果たして、通信を利用した機能はこれまでのクルマ側の検索システムとはどう違うのか? まずはその会話検索のしやすさに注目してみることにした。

◆音声認識の精度に目をみはる

一般的なカーナビの場合、目的地を設定する時は、安全面を考慮して、停車時のみナビの設定画面が表示されるようになっている。その点、CarafLを使ったシステムは、走行中でもスマホの画面を見ずに、スイッチの簡単な操作と会話のみで目的地が選べるメリットがある。

今回試乗したデモカーは、ハンドルの脇に専用のプッシュスイッチが、ステアリングコラム上に小型マイクが設けられていた(オプションのハンズフリー用マイク&スイッチ)。そのスイッチを押して話かけると言葉を認識してくれる。走りながら目的地を検索するとロードノイズやエンジン音で話し手の言葉がかき消されないか気になったが、高速道路で窓を開けて会話検索してみても、余計なノイズを拾いにくい工夫がされているとあって、想像していたよりも言葉は認識されているという印象を受けた。

また、街乗りレベルの速度域のドライブ中や停車中の検索ではさらに精度が上がり、言葉を意図通りに汲み取ってくれる。出来映えで言えば、ひと昔前の音声認識されていた時代のカーナビと比べれば、格段に精度は上がっていると感じられるものだった。

◆あいまいなリクエストや絞り込みにも対応

先ほどから、当たり前のように『会話検索』という言葉を使ってきたが、じつはこのシステム、特筆すべきは“会話”を拾うことなのである。というのも、
これまでの音声検索は、「ショッピングセンター」「○×動物園」など、目的地名称など決められたコマンドだけの認識にとどまっていたが、CarafLの場合、「神奈川県の遊園地に行きたい」とか、「レストランに行きたい!」など、会話形式で話しかけることでリストアップが行われるようになっている。

漠然とした条件を伝えた後は、具体的な条件で絞り込みを行うために「イタリアンが食べたい」とか、「JCBカードが使える店は?」「予算3000円で」「景色がいいレストランがいいな」「駐車場付きの店」といった、わがままな要求にも一生懸命応えて候補を絞って提案してくれる。

またこのCarafLは、伝えたい意図を汲み取ってリストを作成してくれる。このあたりは、話し手の気持ちを捉えた見事な配慮といえる。ちなみに、ちょっと意地悪な課題を与えてみると「今はお答えできない状況です。ごめんなさい」という答えが丁寧に返ってきて、「そっか、私の問いかけが悪かったわね」と一言添えたい気持ちになるから不思議なものだ。

◆小難しくなくて効果的な先進機能

次に気になったのは、目的地の決定と設定について。会話検索をして候補地が表示されるまではいいものの、走りながらスマホ画面を見ずにどうやって目的地を定めるのか謎だった。

しかし、そのあたりは「ご希望に添うところを検索した結果、10件見つかりました。」とリストアップされた後に候補地の読み上げも行ってくれる。とあるレストランの紹介をする時には、名物料理や店の雰囲気などを伝えたあと、「プロポーズに最適」なんていうちょっと照れてしまうフレーズまで出てきたりして、「カップルに似合う素敵な雰囲気の店なんだろうなぁ」なんて、想像が膨らんでしまった。さらに、別のお店の情報を知りたい時は「次」と伝え、気に入った店があれば「そこに行く」と言えば、ナビに目的地を転送。あとは案内開始をタッチさえすれば、誘導がスタートする。

このように、ドライブ中の交通環境に気を配りながらも、スマートに目的地の検索と設定が行えるように配慮されたCarafL。コンシェルジュとの自然な対話で設定できるシステムは小難しい印象を与えない。言葉を認識する正確性やわがままな要求に応える反応については、さらなる精度向上に期待したいが、使いこなすにつれて認識されやすい問いかけのパターンも分かってくる。こうした機能と向き合うことを得意としないユーザーが使いこなす上でも効果的な結果が得られるシステムだと実感することができた。

《藤島知子》

【注目の記事】[PR]

編集部おすすめのニュース

特集